2019年11月11日月曜日

幻の酒米 渡船とは?【短稈渡船とは~3~】

※今回の内容は基本、森脇勉氏著「イネ在来種”渡船”を再考する」その1~その2に準拠しております。
ぷらす
墨猫大和個人の素人意見を多分に含んでおりますので、かならずしも「正しい情報」ではありません
この内容以外に情報があるのでしたらばぜひぜひ教えて頂きたいです。
ただし、当時(明治~大正期)の資料を基にした「情報」以外はあまり意味がありません。
現代の慣習や書籍を元にされても、この問題は「そもそもその根拠が間違っている」という話ですので意味がありません。








第一回短稈渡船とは?【関係諸機関聞き取り】、第二回短稈渡船とは?~2~【各蔵元聞き取り】と『山田錦』の交配親となった『短稈渡船』を追いかけてきたわけですが…
その『短稈渡船』の正体は不透明ながら、名前からも在来品種『渡船』から選抜されたものであることはほぼ間違いないでしょう。
そしてその名のように海を渡りアメリカへ、かの地で優秀な成績を収め、アメリカ稲作の始祖となったともされています。

あれ?でも…

そもそも『渡船』っていう品種はなんなのでしょう?


目次

  1.  そもそも『渡船』とはなにか?
  2. 【まずは大前提】これ以後語る『渡船』の定義について~①『渡船』と②『渡船』~
  3. 【序章】明確な記録がなく、様々な説の存在する『渡船』
  4. 【前章】『渡船』に関して残っている記録はどうなの?
  5. 【中章】加藤発祥の「滋賀県が『雄町』を改良した」論の矛盾
  6. 【中章-2】その後の「『渡船』=『雄町』」論は加藤の記述の鵜呑みでは?
  7. 【終章】結局『渡船』とはなんなのか
  8. 【ぷらす情報】現代の『茨城県産”渡船”』とは(結局出所不明の謎品種)
  9. 【蛇足1】稲品種データベース上の『滋賀渡船6号』はなんでしょう?~②『渡船』について~
  10. 【蛇足2】『渡船』命名由来について(管理人の勝手な(酷い)妄想)
  11. 関連コンテンツ

そもそも『渡船』とはなにか?


『渡船』(幻の酒米?)についてかるーくネットで調べると、大方このような説が記載されています。

明治28年に滋賀県農事試験場で福岡県産の『雄町』から選抜・命名したもの。

命名の由来については
琵琶湖の船上での作業中に、品種を判別する札を無くしてしまったモノがあり、仮に『渡船』と命名し、後からそれが『雄町』であると判明した。
というものもチラホラ見かけます。

米品種大全では「福岡県の『雄町』より滋賀県が選抜」
稲品種データベース(https://ineweb.narcc.affrc.go.jp/search/ine.cgi?action=kouhai&ineCode=Z0001963)では『滋賀渡船6号』について「雄町より選抜」

なるほど、これだけ見ると『渡船』は滋賀県が『雄町』から選抜して命名した品種なのか・・・」となるでしょう。
もしくは『渡船』は『雄町』の異名同種である(二つは同じ品種)」という記述もよく見かけますね
しかし実際これらの内容の正否はどうなのでしょうか?


【まずは大前提】これ以後語る『渡船』の定義について~①『渡船』と②『渡船』~


後述、及び『滋賀渡船2号』の説明にも書いていますが、「①最初の『渡船』となった品種」と「②大正期に滋賀県内で『渡船』と呼ばれた品種」は定義されるものがまったく違います。

今回は【①の『渡船』】についてその出生、つまり品種として最初に『渡船』が確定したのはどこか?ということについての考察に関わる話です。

『山田錦』の父本として有名な『短稈渡船』を始め、『滋賀渡船2号』や『滋賀渡船6号』を純系淘汰する元となったのは【②で定義される『渡船』】です。
なので『短稈渡船』『滋賀渡船2号』『滋賀渡船6号』は、これ以後推察していく【①の『渡船』】とは関係ありません(かもしれません)。

「福岡県の『雄町』を改良した『渡船』から『短稈渡船』が生まれた」
「滋賀県が育成した『渡船』から『滋賀渡船2号』が生まれた」
「福岡県の『渡船』という品種から『滋賀渡船6号』が生まれた」

これらは基本的に間違い(根拠がない)ですのでご注意を(根拠文献があれば教えてください)

繰り返しになりますが
【①の『渡船』】について、以下述べていきます。

【序章】明確な記録がなく、様々な説の存在する『渡船』

日本の在来品種をほぼ網羅しているとされる「日本農業発達史」(1978年)という書籍があるのですが、実は、ここに『渡船』についての記載は一切ありません。
と言うより
公的な書類において『渡船』の出自について明確に記載されている資料がほとんどと言っていいほど存在しないのです。

純系淘汰元になった在来品種として『渡船』が存在したことは確かです。
そこから(とも限らないのですが)『滋賀渡船2号』始め数種の品種が選抜されたことも確かでしょう。
しかしながら『渡船』と言う品種の成り立ちがどのようなものなのかは、かなり不明瞭になっていることをご存じでしょうか?

ネット上ではさも確定された事実であるかのようにであるかのように
「『渡船』は『雄町』から選抜された」
こう書かれていますが、実は非常に曖昧な情報の内の一つでしかないのです。
「『滋賀渡船2号』が『短稈渡船』である」と同じ程度の情報であると言えます。

ただこれは『短稈渡船』以上に問題があり、それは一部の公式記録上は確かに雄町からの選抜種という扱いになっていることです。
ですので何かしら調べればその通りの記述になっているのですから、「何が間違いなの?」としかならないでしょう。

まず松島正博氏「オーストラリアの米産業」(1994年)によれば、『渡船』の出生については3つの説があり
【1】雄町の異名同種で岡山県産(日本穀物検定協会「図説・米の品種」1989年)
【2】滋賀県産酒米(菊川貞己氏「オーストラリア研究紀要18」1992年)
【3】九州産(八木宏典氏「カリフォルニアの米産業」1992年)
おそらく世間一般に広まっている説に近いのは【2】かと思われますが
どれが正しいのでしょうか?


【前章】『渡船』に関して残っている記録はどうなの?


渡船に関する事象を一枚にまとめました。

見て頂ければわかるように『雄町』=『渡船』、二つが異名同種であるという論の始まりが現存文書で確認出来るのは1906年(明治39年)のことです。
農商務省農事試験場(国立)の加藤茂苞氏(以下敬称略)の記述が最初です。

1906年(明治39年)の加藤の論文「優良なる稲の品種に就て」で、「雄町(渡り船)も滋賀以西に多きを占め~」との記述。
翌1907年(明治40年)同じく加藤の「農事試験場特別報告25号『米ノ品種及其分布調査』」で、『雄町』『渡船』の特徴について記述されており、ここで2品種は異名同種であると結論付けられています。

そしてこれが最も広まっている『渡船』の出自と同じであることがわかるかと思います。


【中章】加藤発祥の「滋賀県が『雄町』を改良した」論の矛盾

さて
肝心要、始まりであるはずのこの「農事試験場特別報告25号『米ノ品種及其分布調査』」の記述ですが、なんとも疑問符が付くような内容になっています。
記述内容としては

①『渡船』は福岡県の『雄町』を滋賀県で改良した品種
②『雄町』と『渡船』には明確な違いは無い
③よって『雄町』と『渡船』は異名同種である

滋賀県が『雄町』を改良した、ということは『渡船』は何かしら『雄町』と違う見た目の性質を持っていなければならないはずです。
品種と認められるには「見た目で判別できる性質」が必要だからです。
元が『雄町』だったとして、「草丈が短くなった」、「花が咲くのが早くなった」、「病気にかかりにくくなった」のように、何かしらが変わったからこそ”改良”と呼べるはずなのです。

これを踏まえると
加藤の記述が矛盾していることがわかるかと思います。
「滋賀県は『雄町』を変えて『渡船』にした」と言っているのに
「『雄町』と『渡船』は変わらない」と言っているのです。
加藤の論はつまり「滋賀県は『雄町』を変えたけども変えていないと言うに等しいことになります。
滋賀県農事試験場は品種を改良したといいながら何もしていない、品種改良など事実無根だ、ととも捉えられる内容です。
しかし、一試験場が改良したという品種において、そんなことがあるでしょうか?

また、ここには実際『雄町』と『渡船』がどのような点で同一で、異種と認めるには及ばないのか、という具体的な記載が一切ありません。

このような根拠が不明瞭、記述にも矛盾のある加藤(国立試験場)側の論と時を同じくして

1906年から1910年にかけて、滋賀県農事試験場(県立)では『雄町』と『渡船』の特性試験を行っており、この中で両者を完全に独立した別品種としての扱いを行っています。


つまり国と県で『渡船』の扱いが異なっていることになります。




【中章-2】その後の「『渡船』=『雄町』」論は加藤の記述の鵜呑みでは?

『渡船』関連の動きとして
大正2年(1913年)に『雄町』、『大町』、『關川』、『新鬚』と言った品種が『渡船』の異名同種として指定。
大正4年(1915年)に『滋賀渡船2,4,6号』の純系淘汰が完了し、公布されます。

そして時代は進み、『渡船』に関して記述する書籍が出てきます。
◯大正13年(1924年)南部増治郎氏の「実験稲作及米穀」
 「雄町(一名小町・渡船)」
 「福岡県の『雄町』を滋賀県で改良したのが『渡船』」

◯昭和10年(1935年)農林省農務局「道府縣に於ける主要食糧農作物品種改良事業の成績並びに計画概要(農事改良資料第97号)」
 「滋賀県農事試験場が福岡県産雄町について淘汰を行ったものに対し明治28年に命名」

◯昭和53年(1978年)山根國男氏、西田清数氏の「農及園54」
 「雄町=渡船」


このように『雄町』と『渡船』が異名同種、滋賀県が改良した品種であると記述していますが、果たしてこれは何を根拠にしたものか?

森脇氏は単に加藤(国立農事試験場)の言をそのまま取り上げただけではないかと推測しています。

このように国と県の取り扱いが食い違い、来歴が不明瞭であるにもかかわらず、一番最初の加藤の言が取り入れられ、数多くの記述にはこの異名同種説が記載されてきたようです。
しかしながら詳細を見れば加藤の言には矛盾が有り、内容が不明瞭
その為、盛永氏著「日本農業発達史」において在来種一覧に記載されないという扱いになったのではないかとみられています。

と、専門的な観点から、残っている資料から推察されることとしては「加藤論(『雄町』選抜説)は怪しい」という言葉に尽きるのですが、前述したように加藤論を鵜呑み・踏襲した書籍・記述が大正以降散見されており、それをさらにそのまま踏襲した現代の書籍も多く存在します。
大勢として『雄町』選抜種が『渡船』論が確定されているのは間違いないのですが…残念ながらその足元はだいぶ怪しいようです。


【終章】結局『渡船』とはなんなのか


「イネ在来種”渡船”を再考する」の著者、森脇氏の調査結果には続きがあります。
と言うのも、1906年の加藤の記述より前、上に掲載している年表より前に記録があるのです。
「明治28年度滋賀県立農事試験成績第1~5報第一綴」「明治29年度滋賀県立農事試験成績報告第三(綴)」には、「品種『渡船』を福岡県から取り寄せた」旨の内容が掲載されています。(正確には第1報では「"福岡郡"から取り寄せ」になっていますが、さすがに誤字でしょう)

また滋賀県立農事試験場が開設されたのは明治28年4月。
”『渡船』が命名された”説のある明治28年はまさにその年で、その初年に水稲種類試験が行われており、そこで供試された57種類の品種の中には『福岡県産渡船』『京都府産雄町』の記述があることからも、『渡船』の出自は福岡県にあるとの見方が最も有力です。


「滋賀県で福岡県産『雄町』を改良・命名した」などと言うも何も
『渡船』と言う品種は福岡県から取り寄せられたもの(滋賀県で改良などしていない)であり
同年取り寄せられた『雄町』は京都府産である(福岡県産『雄町』ではない)
ということです
そもそも開設したばかりの試験場の、しかもその最初の試験で「選抜改良した品種」などというものが存在できるわけがありません。

しかしながら、『渡船』の出自を追う上で重要となる福岡県では古い資料が全て廃棄処分されたとのことであり、それ以上『渡船』の出生を追うことは出来なくなっています…無念


【ぷらす情報】現代の『茨城県産”渡船”』とは(結局出所不明の謎品種)

『短稈渡船』の誤情報は兎も角、令和元年現在、日本で古参品種の復刻も行われており、渡船系統も三県で銘柄設定されています。

兵庫県では純系淘汰品種の『(滋賀)渡船2号』(これは『短稈渡船』じゃないよ!)

滋賀県では同じく純系淘汰の『滋賀渡船6号』(これも当然『短稈渡船』じゃないよ!)

そして現在謎なのが、茨城県で指定銘柄になっている『渡船』です。

茨城県の酒蔵府中誉が農研機構から取り寄せた種籾は『渡船2号』なのですが、府中誉曰く「茨城県には二種類の『渡船』がある」とのこと。

どういうことでしょう?
農水省のHPで銘柄を確認しても品種群設定されている様子はありません。

じゃあ『渡船』ってなんですか?
前述したように正体不明の在来品種『渡船』は当然現存していません。

◯茨城県農林水産部に問い合わせ
ついでに県では『短稈渡船』とすることを認めてるんですか?とも質問

【回答①】茨城県では産地品種銘柄『渡船』に『短稈渡船』を含めることを容認したことはない。
【回答②】産地品種銘柄は地方農政局の管轄なので、『渡船』の銘柄設定に当たってどのような経緯があったかは県では把握していない。

◯関東農政局に問い合わせ
【質問】茨城県産『渡船』とは品種は何なのか?在来種『渡船』は現存していないはずだが(この時はそう思ってましたが実際は現存しています)?

【回答】
◯品種は『渡船』で設定してある。ただし当時の資料が残っていないのでどういう経緯で品種を『渡船』と認めたかはわからない(品種が『渡船』である根拠はない)。
◯品種銘柄申請の際のサンプルも現存していない。
◯品種銘柄の認定は農産物検査員が生産者の申出書を受けて検査し、認定するもので、品種が何であるかは関係がない。


ということで
茨城県農林水産部では把握していないということで空振り。
関東農政局では品種を『渡船』として設定しているが、理由は分からない…というかだれが申請したもので品種は何で根拠は何かわからないけどすでに設定されているからOK、という凄まじく曖昧なモノでした。


産地品種銘柄ってそんな雑でいいの!?(いいらしい)


客観的に見れば『茨城県産渡船』とやらも、『滋賀渡船2号』と思われますが、『兵庫県産渡船2号』や『滋賀県産滋賀渡船6号』とは比較にならないほど酷いモノだと言えます。

・品種がなんなのかわかっていない
・『渡船』を管理していている人も不明、その出元も分らない
・農家が『渡船』だと言えば『渡船』になる
・以上、なんだかわからないものだけど誰も確かめないから言ったもん勝ち

訂正する人間がだれもいないので野放しになっているだけの状況です。
(地方農政局は法に基づいて検査するだけなので「品種の正誤」について判断をしたり誤りを正したりはしない、のです)
酒蔵側は「茨城県には2種類の『渡船』がある」と言っていますが、「『渡船』は稈の長さによって2号や6号、21号などがある」旨の間違った発言もしているようなので、どうにも信頼性は低いです…
「酒米ハンドブック」に掲載されていないのも、このように非常に雑で正体不明なせいなのではないかと思われます。

ちなみに
茨城県の『渡船』が銘柄設定された平成11年頃、兵庫県でも同じく『渡船』が銘柄設定されていましたが、平成16年には消えています。
これも関東農政局から近畿農政局に確認したところ、やはりこの年に検査実績が無い事から銘柄解除されたとのことですが、やはり当初の記録は無いので詳細は不明。
その兵庫県は平成20年から『渡船2号』を銘柄設定しています(しつこいようですが『短稈渡船』ではないです)。

稲の品種について無知な方々が勝手気ままに広めているのが現状…と言うことになってしまうのでしょうか?


【蛇足1】稲品種データベース上の『滋賀渡船6号』はなんでしょう?~②『渡船』について~

最初にも紹介しましたが稲品種データベース上では

『滋賀渡船6号』は『雄町』からの分離系統選である

とされています。
この根拠が何に基づくものかはわかりませんが、私の持つ虎の子資料「大正十五年一月 道府縣ニ於ケル米麥品種改良事業成績概要」(農林省農務局)によれば、『滋賀渡船6号』は

「純系分離により『渡船い第71号』を『滋賀渡船6号』と命名し公布」

と記述されており、ここで『渡船』からの純系分離と言う記述があります。

それでこれが非常にややこしいのですが
前述したように「『渡船』は『雄町』からの選抜種」と言う情報の信ぴょう性は残念ながら低い可能性もある…のですが
選抜を開始した大正2年時点ではすでに『渡船』と『雄町』は異名同種扱いにすることが決定されています。
これが最初に述べた【②『渡船』】です。

滋賀県は大正4年までに『渡船』の異名同種として
『雄町』『大町』『關川』『新鬚』『五反穂』『長者穂』
の6品種を認定しており、これらはすべて試験場では『渡船』と呼ばれていたことになります。

さらに滋賀県は純系淘汰開始に当たり『神力』『渡船』の両品種を兵庫、奈良、愛媛、山口、熊本、広島、岡山の複数県から収集しています。
つまりここまで述べてきた【①『渡船』】についての正体論、「『渡船』は『雄町』なのか?」「『渡船』は福岡県の品種なのか?」といったもの正しいか否か…?ということとは全く関係ないのです。
他県の『雄町』は滋賀県に入った時点で『渡船』として扱われるのですから、岡山県の『雄町(系品種群)』が『渡船』として純系淘汰元にされた可能性があります。

つまり「『滋賀渡船6号』は『雄町』からの分離系統選である」は、文章上は必ずしも間違いとは限りませんが
実態として純系淘汰の元は
『渡船』かもしれないし
『雄町』(か『大町』か『關川』か『新鬚』か『五反穂』か『長者穂』)かもしれない、ということです(つまりは不明と言うことです)


【蛇足2】『渡船』命名由来について(管理人の勝手な(酷い)妄想)

(※ここから先は本当に管理人の妄想に近い論なので話半分の半分の半分の半分程度でお読みください)

■最初に戻って

まず命名の由来としてそこそこ見かける

「琵琶湖の船上での作業中に、品種を判別する札を無くしてしまったモノがあり、仮に『渡船』と命名し、後からそれが『雄町』であると判明した。」

というものですが

コレの根拠になっているのは滋賀県農会が昭和11年(1936年)に発行した「滋賀農報第268号」に掲載されている「農事試験場設立の動機③(畊月生著)」です。

要約すると

”試験場設立当時は人手も時間も足りない状態で
夜の九時に琵琶湖に小舟を浮かべて塩水選後の水洗いを行っていたところ
1品種だけ名前を判別する札を湖に流してしまい
暗いこともあって札は見つけられず、その品種は福岡県産と言う事だけは分かったので
便宜上仮に『渡船』と命名した”


ということで、兵庫県立農林水産技術総合センターの池上研究員が山田錦の出自をめぐる論文「酒米品種『山田錦』の育成経過と母本品種「山田穂」「短稈渡船」の来歴」で取り上げたこともあってか、そこそこ広まっているようです。

だが待てよ

何の因果か『滋賀渡船2号』=『短稈渡船』の誤解が広まったのもこの論文です。

上記の森脇氏から池上研究員へ、ということでしっかり論文内にも「この情報は慎重に取り扱うべき」とちゃんと書いてあります。
こういった内容に配慮せず、情報が拡散された結果が『短稈渡船』でしたが、これも同じ匂いがする…


ここからはいよいよ完全に墨猫大和個人の妄想になりますが

このエピソードの著者は”畊月生”と言う方だそうですが・・・

まずこの人誰?

「滋賀縣立農事試験場一覧(滋賀県立農事試験場)明治45年3月」には試験場設立の明治28年からの職員一覧が載っていますが、当然(?)こんな名前の人は職員にいません
ペンネームか何かのようにも思えますが・・・
と、それはどうでもいいのです。
大事なのは「書いたこの人がどのような立場の方で、どの程度の見識をお持ちの方なのか」ということ。

そして書かれた時代。
昭和11年と言うと、この出来事が起きた明治28年からは41年も経過しています。
皆さんどうでしょう?
5年前のこと、10年前のこと、はっきり思い出せますか?
よしんば覚えていたとして、間違いなく思い出せている自信がありますか?
ましてや40年です。
40年前のことを思い出すなんて行為、(物理的に)想像できない方も多いでしょう。
そもそもこのペンネーム()の人が、どのような立場の人なのか、と言うのにも関わりますが、はたしてどの程度正しい知識をこんなに長期間記憶できているの?
(思い違いや記憶違いが出てもおかしくないですよね?)

そして滋賀県農事試験場ではなく、農事会と言う組織が発行している書籍だというところ。
このブログでもたびたび取り上げていますが、マスメディアやJAのようなところが発信する情報には事実誤認の間違った表現で掲載されていることが多々あります。

そして実際どうでしょう?
どの試験場(専門家)に訊いてもこの世に現存していない『短稈渡船』は、ネットで探せばいくらでも現代においても存在するかのような記述が出てきます。
ただしどれも”現存していないことを理解していない人間が妄信(誤解)した情報を拡散している”というだけのことです。

そしてそしてですが
この文章内では
滋賀農試は「奈良、京都、広島、兵庫、岡山、山口、福岡」から品種を取り寄せた
と書いてありますが
実際、業務功程記載の取り寄せ先は「石川、三重、京都、福岡」京都府と福岡県しか合ってないという…




いろいろ言いましたが
ぶっちゃけ、これって信ぴょう性かなり低いんじゃないの?という。
肝心の『渡船』命名の由来に関しても
加藤論の「『雄町』を改良した」にも整合性がないですし
滋賀県農試の「福岡県産『渡船』を取り寄せた」という記録とも矛盾しています。




新しい資料の発見を待つ…と言いながらもこれから新しい文章が出てくることは非常に考えにくいので
どこどこまで行っても謎の品種、と言う形に終始するのでしょうね…


そしてそんな謎の品種を「山田錦の父親!」「短稈渡船!」って謳って販売するのは景品表示法的にセーフなの?アウトなの?という素朴な疑問。
優良誤認は誘導していると思うんですけども…
消費者庁への問い合わせ=告発みたいになりますから、そこまでしたいわけではない…
へたすると不当競争防止法の「誤認惹起行為」になるんじゃないでしょうか?
【参考】:日経BizGate記事
↑を読んでみて似てるなぁと思いました(あくまでも私見。)





参考文献(敬称略)

〇業務功程 大正3年度:滋賀県立農事試験場
〇業務功程 :兵庫県立農事試験場
〇「イネ在来種”渡船”を再考する」その1~その2:森脇勉
〇酒米品種「山田錦」の育成経過と母本品種「山田穂」、「短稈渡船」の来歴:兵庫農技総セ研報










【番外関連】滋賀渡船「2号」「4号」「6号」と”飛び番”である理由は?









2019年11月10日日曜日

1等米比率ランキング 平成28~30年平均で


さて(H30現在で)

青森県の『青天の霹靂』が第一位
北海道の『ほしのゆめ』が第二位
山形県の『どまんなか』が第三位、と言えば!?


…と言うことで(質問形式なのにタイトルでバレバレという矛盾はさておき)
本日のお題は「1等米比率ランキング」となっております。
(R1現在確定しているのはH30時点での検査数量なので一年遅れのようになっております)

令和初年度の検査状況は?


令和最初の本年ですが、新潟県産コシヒカリ(『コシヒカリ新潟BL』)が一等米比率20.8%(9月末時点)と言われているのを筆頭に、高温障害による検査等級の低下が話題になっていますね。
新潟県で2等以下に格付けされた理由の実に70.2%が、米の色が白く濁るなどの「形質」によるものだそうで、明らかな高温による生育障害です。
他にも高温耐性があると言われる(でも多分耐性無いです)『こしいぶき』でも52.6%と、新潟県にとってなかなか厳しい年になりました。

ただこれは全国的な傾向のようで、全国の1等米比率も昨年度比で約10%低下。
特に東高西低の傾向は強く、西日本の一等米比率はかなり低い状況になっています。
【全国平均67.6%】
上位都道府県は長野県(96.5%)、栃木県(92.4%)、岩手県(91.0%)
下位都道府県は香川県(6.6%)、福岡県(13.8%)、和歌山県(19.2%)となっていますね。

令和元年度1等米比率 都道府県別(%)

都道府県1等米比率都道府県1等米比率
北海道89.8滋賀57.3
青森89.5京都59.3
岩手91.0大阪22.3
宮城59.0兵庫50.1
秋田89.7奈良80.5
山形90.5和歌山19.2
福島84.4鳥取42.8
茨城81.4島根57.7
栃木92.4岡山79.3
群馬55.1広島82.9
埼玉48.1山口73.5
千葉83.6徳島39.9
東京-香川6.6
神奈川38.8愛媛31.6
山梨87.9高知20.2
長野96.5福岡13.8
静岡76.3佐賀54.6
新潟33.1長崎47.5
富山84.6熊本22.6
石川84.6大分47.5
福井86.4宮崎68.1
岐阜53.5鹿児島37.1
愛知20.7沖縄57.5
三重33.3全国平均67.6

東北六県は宮城県以外は80%以上を確保しているものの、軒並み前年度より比率は低下。
因みに宮城県の1等米比率が大幅に低下した(34.5ポイント減)理由は高夜温によるものらしいです。



そもそも”1等米”とはなんぞや~米穀検査における等級検査・品位~

では、そもそもこの「1等米」とはなんなのか?
なんとなく高級な、美味しいお米のことを言っているのでは?と思っている人も少なくないと思います。

だからそれが下がるってことはお米がまずくなっているのかな…と考えてしまう人もいるかもしれませんが
実はこの1等米、2等米と言った区分において、「味」は評価基準に全く含まれていません
では1等米とは何?と言えば…

”見た目の綺麗なお米”という一言に尽きます。

検査員の人が目視で確認して
①粒がそろっていて
②見た目がきれいで
③白く濁ったり、変な色の着いていない、ゴミの入っていない
そんなお米の最上位が1等米と呼ばれます。

玄米の検査規格として詳細な項目は以下のようになっています。


品位整粒歩合形質水分被害粒、死米、着色粒、異種穀粒及び異物
1等70%以上1等標準品15%以下15%以下
2等60%以上2等標準品15%以下20%以下
3等45%以上3等標準品15%以下30%以下
※被害粒や死米、着色粒の項目には「死米」「着色粒」についてさらに最高限度の数値が設定されていますがここでは割愛します。


このように「整粒 70%以上」「1等標準品」「被害粒等 15%以下」の条件を満たすと、1等米と呼ばれます。
細かい内容は以下の通り。

◯整粒…被害粒、死米、未熟粒、異種穀粒及び異物を除いた粒のこと。
◯被害粒…病気、虫害、成長障害等で損傷を受けた粒(発芽粒、病害粒、芽くされ粒、虫害粒、胴割粒、奇形粒、茶米、砕粒等)のこと
◯死米…充実していない粉状質の粒(青死米及び白死米)のこと。
◯未熟粒…死米を除いた成熟していない粒のこと。
◯異種穀粒及び異物…他の植物の穀粒、及び土砂、ガラス片、金属片、プラスチック片のこと。

難しそうな被害粒の名前がいっぱいできますが、要は見た目が綺麗なお米の比率が大きいと1等米、見た目の悪いお米が増えると等級が下がります。

あれ?じゃあ高温障害で玄米が白濁すると何が悪いの?
と、確かに被害粒やその他の定義の中に”白濁”という言葉は出てきません。
と言うことで最後に問題になるのが「1等米標準品」や「2等米標準品」と言う言葉が出てくる「形質」と言う項目。

◯形質…皮部の厚薄、充実度、質の硬軟、粒ぞろい、粒形、光沢並びに肌ずれ、心白及び腹白の程度のこと。

はい、この「心白及び腹白の程度」
ここに近年問題になっている高温障害が非常に大きな影響を及ぼします。
日中の高温、もしくは高夜温によって稲体の体力が損耗、籾に上手くデンプンを転流出来なくなると米粒が十分に充実せず、隙間が生じて、見た目には白濁した状態になります。
障害の程度によって全体的に発生したり一部に発生したりと、程度の違いこそあれ、玄米に白濁りの部分が出来てしまうと、この検査項目に引っかかり、1等米を逃すことになってしまいます。

では1等米でないと美味しくないのか?と言えば…
等級が低ければ必ずしもマズイということではありませんが、まったく関係がないとも言えない…というのが私見です(中途半端)。
まぁ…そんな明確に味に大きな影響を与えるようなものではないのは確かです(与え得る項目もあるけど)。
玄米の白濁なんて、炊いてしまえばわかりませんしね。

ということで
令和元年度産新潟県産コシヒカリについては、2等米となったものが多いものの食味には影響がないことが確認されています。

だがしかし

買取価格は当然2等米より1等米の方が高いデス。(他の野菜とかも見た目の揃っている方が高いですよね。)
お米の味には大きな影響がないとしても、農家の皆さんの収入には大きな影響がある

それが検査等級というヤツです。


【本題一個前】平成30年単年度で見る一等米比率ランキングは?

ということで今日の本題…の前にさらにもう一つ。
1等米比率の高いお米ランキングですが、まずは平成30年度単年度の上位品種と、過年度の順位表をご覧ください。


H30順位品種名H29順位H28順位
1どまんなか96
2銀河のしずく4-
3金色の風--
3青天の霹靂113
5富富富--
6きたくりん38
7いわてっこ3015
7雪若丸--
9いちほまれ--
9そらゆき815
9まっしぐら2829
12とちぎの星69
13ほしのゆめ23
14てんこもり77
15だて正夢--

平成最後の新品種ラッシュ、そして彼女らは高品質を売りにしているものが多いため、『金色の風』『銀河のしずく』『雪若丸』、『富富富』、『いちほまれ』と上位に食い込みながらも、デビューが最近の為、過年度の順位がない品種が多いのですが…
基本的に、単純な作付面積に左右される収量ランキングとは違い、年度毎の変動が非常に大きいのがおわかり頂けるでしょうか?

ちなみにこれらは検査数量1,000t以上の品種に限って集計しています。

純粋に1等米比率のみで集計すると1位に比率100%の品種が10品種前後並ぶのです・・・
それらは生産量一桁(トン)のものがほとんで、一番多くても100tにも届いていない状態。
統計的にも母数が余りにも小さいと信頼性に乏しいかな・・・と

日本の販売農家の平均耕作面積は1.74ha。販売農家数(30a以上)122.1万戸(2018年時)。
※平均耕作面積であって水田のみの耕作面積ではないのですが、H30の耕地面積【田】が240.5万haなので、そこそこ合ってる?ということで解釈してます。
母集団が約100万人で、許容誤差を・・・まぁゆるーく10%としませう。
この場合許容できる精度を持った結果を導くために必要なサンプリング数は100人程度になるはずなので・・・あ、反収は全国平均からキリのいいところで550kg/10aとします。

有効な精度を求めるための”100人の農家が生産するお米の量”は…

100人×1.74ha/人×5.5t/1ha=957t

一戸の経営体が単一品種作っているわけでもないのでしょうが、一つの目安として、こんな計算をしてみて、キリのいいところで1,000t以上の検査数量の品種を対象にしました
まぁ正直言えば、マイナーな品種が10品種以上100%で1位を占めているランキングなんてあまりにも面白みがなさ過ぎて…
ということで、1,000t以上生産されている品種に限って一等米比率のランキングを作成しております。

かつ年度毎の変動が余りにも大きい為に3年平均の1等米比率でランキングを作成しました。然るに、3年分のデータが無い新参品種は今回のランキングからは外れています。
と言うかこれも単年度単年度で見ると順位の変動が激しすぎておもしろくないという私情も・・・

【やっと本題】1等米比率ランキング【H28~H30 3ヶ年平均】

…と言うことで
平成28年~30年の三年間、検査数量1,000t以上の品種の1等米比率ランキングは以下の通りです!


3年総合順位品種名1等米比率栽培地数
1青天の霹靂98.4%1
2ほしのゆめ98.3%1
3どまんなか98.2%1
4きたくりん97.9%1
5大地の風97.7%1
6とちぎの星97.6%1
7てんこもり97.3%1
8きらら39797.1%1
9どんぴしゃり96.9%1
10そらゆき96.8%1
11山形95号96.3%1
12ふさおとめ95.8%1
13ななつぼし95.5%1
14いわてっこ95.3%1
15つがるロマン95.2%1
16はえぬき95%9
17ふっくりんこ94.9%1
18まっしぐら94.6%1
19なすひかり94.3%1
20あさひの夢93.9%10
21ゆめぴりか93.7%1
22つや姫93.3%9
23ふさこがね93.1%1
24てんたかく92.9%3
25めんこいな92.8%1
26風さやか91.5%1
27あきたこまち91.2%32
28ひとめぼれ91.2%35
29ゆめみづほ90.9%1
30ゆうだい2190.9%10
31萌えみのり90.7%7
32みずかがみ90.6%1
33ふくまる90.3%1
34彩のきずな90.2%1
35ハナエチゼン90%10
36おぼろづき89.4%1
37まなむすめ89.4%1
38天のつぶ89%1
39ゆめおばこ88.8%1
40ゆきん子舞88.6%1
41晴るる87.8%1
42あきげしき87.6%4
43元気つくし87.1%1
44みずほの輝き87.1%1
45あきさかり86.7%7
46彩のかがやき86.6%1
47チヨニシキ86.1%4
48つぶぞろい85.8%1
49あきろまん85.7%1
50こしいぶき85.4%1
51能登ひかり84.8%1
52ほしまる83.4%1
53夢ごこち82.4%18
54ほほほの穂82.3%1
55コシヒカリ82.2%45
56ササニシキ81.6%8
57朝日81.3%1
58きぬむすめ80.1%12
59あいちのかおり79.8%3
60京の輝き79.3%1
61ミルキークイーン79.1%36
62さがびより79.1%1
63おてんとそだち78.9%3
64つくばSD1号78.7%10
65大地の星77.5%1
66ゆめひたち77%3
67ゆめまつり75.7%3
68ゆきの精74.4%1
69中生新千本73.9%5
70おいでまい72.6%1
71日本晴71.5%17
72秋の詩70.5%1
73みえのゆめ67.8%1
74ハツシモ67%3
75くまさんの力65.3%1
76にこまる63.6%26
77アケボノ62.7%1
78夢しずく61.9%1
79ミネアサヒ61.8%4
80どんとこい61.7%8
81あきだわら58.8%20
82あきほなみ58.3%1
83さとじまん45.7%3
84ヒノヒカリ44.9%27
85みつひかり44.1%20
86キヌヒカリ43.5%27
87たんぼの夢39.5%1
88あきまさり37.3%3
89イクヒカリ27.4%7
90夏の笑み25.5%1
91金のいぶき13.6%6
92夢つくし12.3%1
93森のくまさん10.5%1




平成28~30年度平均
第1位は青天の霹靂』
青森県のみで栽培。本州最北端、厳寒の地初の特A獲得品種は、平成30年産の収量の少なさで農家離れが見られると言っても県のフラッグシップ米の名に恥じない品質の高さを見せつけています。


第2位は『ほしのゆめ』
北海道のみで栽培。北海道米と言えば『ゆめぴりか』『ななつぼし』、『きらら397』などが有名どころですが、一等米比率では堂々の道1位。
『きらら397』に続き、同産米の定番として役目を果たしてきた彼女ですが、平成26年度産から検査数量はいよいよ1万トンの大台を割って縮小気味…
それでもかつての主力品種として、品質の安定性はピカイチであることの証明かな?

第3位は『どまんなか』!!!

山形県のみでの栽培品種。
登場当初相棒であった『はえぬき』に、現在では作付面積で大きく差を広げられたものの、県のフラッグシップ米候補品種として、その実力をまざまざと見せつけています!!
ソフトで『ササニシキ』に近い味と言われる『どまんなか』
山形県と言えば米沢牛!米沢牛と言えば牛肉どまんなか弁当!牛肉どまんなか弁当と言えば米品種『どまんなか』!
どうかよろしく!

…という茶番はこれくらいにしておいて
上位10品種はすべて単県(道)での栽培品種になっていますね。
ようやく16位になって『はえぬき』(9県で栽培)、20位で『あさひの夢』(10県で栽培)が出てくるのみで、適地栽培というもの大事さが垣間見えるでしょうか。
山形県で開発しているから山形県の風土に適している、だから開発県で栽培した米が一番美味い!…とまでは言いませんが、やはり多少なりともそういった一定の適正地域のような傾向があるのは間違いないでしょう・

しかしそんな中上位に食い込む山形県の『はえぬき』はすごいぞ!すごくないですか!?やはり山形県産米の優秀さの証左ともいえるこの結果を私は嬉しく思うのでありますよ!!!

ちなみに最高級品種として名高い()山形県のつや姫は22位になっていますが、山形県単独としてみた場合の一等米比率は97.7%になっており、この数値ですと単純に見て6位まで食い込みます。
高温登熟耐性に定評のある『つや姫』は、出身地の山形県以外にも九州から甲信まで10の県で栽培されており、残念ながら山形・宮城・島根以外の栽培地での1等米比率は比較して低いものになっています。
単純にこのランキングで下位にいるからと言って主生産地、代表生産地の有名銘柄の質が低い、というわけではありません、あしからず。(そして1等米比率が低いからと言って不味いわけではない)

ちなみに『コシヒカリ』は82.2%で55位ですが、有名な新潟県のコシヒカリ、つまり『コシヒカリ(新潟)BL』さんは…

…うるさいですわ…
あらあら~
あまりイジメないであげて頂戴ね~
わたしも~暑さは苦手なのよ~?



ということでお察しください。(でも味には影響ないんですよ?とりあえず)


有名だけど意外に1等米比率が低い(玄米の見た目の悪い)品種達


品種1位が青森県で、2位の『ほしのゆめ』を筆頭に北海道の品種が軒並み1等米比率が高いのはやはり冷涼な気候のおかげでしょうか。
逆に暑さの影響もあるのか目立って1等米比率が低いのはやはり西日本。そして西日本を中心としている品種は有名どころの品種でも1等米比率は低くなっています。
特にコシヒカリ御三家の一角、『ヒノヒカリ』。

彼女については単純な生産量では4位にまでなっているのに1等米比率ではワースト10入りと言う状態。
華麗なるキヌヒカリ一族、『キヌヒカリ』、『夢つくし』、『はるみ』(未掲載ですが40%台中盤)、『夢しずく』等…

彼女らも50%以下と軒並み低い値です。
個別の2等米の原因がなんなのかわからないと何とも言いにくいですが…
『キヌヒカリ』は炊飯米の白さと輝きは『コシヒカリ』にも勝ると言われる品種です。
しかし心白米が出やすい、との評価があるので、玄米の状態ではやはり1等米評価が受けにくいのでしょうか。

でも『きぬむすめ』ちゃん
は大健闘で80%台に乗せています。


そして最下位…
かつては日本穀物検定協会で日本一位と謳われた『森のくまさん』が
堂々のワースト一位で1等米比率も10%台…
やはり『コシヒカリ』と『ヒノヒカリ』、暑さに弱い者同士の間に生まれたサラブレットは当然暑さに弱いのか…


最後に念押し

どうでしょうか。
今回は1等米比率という観点で、変動が大きい要素であるためなるべく平等な目で見るために少し特殊な(1,000t以上・3年間平均)集計をしてランキングにしてみました。
ただしこれは食味と直接関係のあるものではありません。(ランキング下位がまずい米と言うわけではないです。)

今回のランキングには参加資格なし(検査数量1,000t以下)だったのですが、『龍の瞳』『銀の朏』の高級ブランド・極良食味で有名な『いのちの壱』
彼女も1等米比率は60%程度で、本生産地の岐阜県でも同程度です。
今回のランキングでいくと大分下位の方に分類される割合です。
このように直接的に食味と関連があるものではないのです。

ただ、見た目が綺麗で、形が整い、粒が揃ったお米を高い比率で作る、それは栽培地の技術の高さ、そして稲品種の質の高さを図る上で一種の指標になることは確かです。
そんな”一面”としてこちらのランキングはご覧ください。


岩手県の『銀河のしずく』『金色の風』、宮城県の『だて正夢』、富山県の『富富富』、福井県の『いちほまれ』等、年数が足りないためにランキングに乗ってこない品種達が多かったですが、年を重ねるたびにこのような品種達がおそらく上位を占めるようになる…かもしれません。
福井県内限定栽培を謳っている『いちほまれ』のような品種がむしろ強いかもしれませんね。



※1等米比率が高い県は紹介されるのに1等米比率が高い品種は紹介されないので自分で調べてみた結果でした。


にゃっはー!
山形県いずナンバーワン!
いえーい!
なんばーわん!
ええっ!?
ナンバーワンはおらじゃなかったのか!?
…もう、別に誰が一位でもいいですわよ。
うむ
負け犬のなんちゃらかな?
あの…てんこもり、それはあまりに失礼では…
うむ
…構いませんわよ。
飛びぬけて私が低いのは事実ですわ。
だからね~
暑さに強い娘達には頑張ってもらわないとね~
は…はい!
おまか…
任されたぜ!
…私の言葉を遮らないでくださるかしら…?
あん?
コシヒカリBLのことなんだから関係あるのは俺だろ?
もしくはせめて富富富だな
富富富?
(えー…?)
えーっと…ですね…
これより私たち新興ブランド米より精進いたします。
どうかよろしくお願いします!
雪若丸?
何を勝手にまとめて…
収拾がつきませんでしょう?
おやめなさい。
















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