2019年2月8日金曜日

【粳米】空育163号~ななつぼし~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『空育163号』
品種名
 『ななつぼし』
育成年
 『平成13年(2001年) 北海道立中央農業試験場』
交配組合せ
 『F1【ひとめぼれ×空系90242A】×空育150号』
主要生産地
 『北海道』
分類
 『粳米』
きらきらーっと、空に輝く『ななつぼし』!



どんな娘?

ゆめぴりかのようにこだわりが強くないため、比較的融通が利く。

必要な場面では相手にあわせて妥協するのも容易で、仲間に広く目をかける性格も相まって、近年引退にむけて活動縮小中のきらら397に代わって北海道米のまとめ役ポジションに就きつつある。

ゆめぴりかが北海道のエースであるならば、北海道の大黒柱は彼女でしょう。


概要

先代主力『きらら397』よりも耐冷性が強く、先代準主力『ほしのゆめ』と同等以上の食味で、北海道米の食味レベルアップにおおいに貢献した大黒柱『ななつぼし』の擬人化です。
マツコ・デラックスさんのCMのおかげで、『ゆめぴりか』とともに北海道の二大看板娘にまでなりました。
平成30年の北海道米銘柄米認知度調査によると、三大都市圏での認知度は約75%という高い数値を記録したそうです。(『ゆめぴりか』約90%)

名前の由来は、「星がきれいに見えるほど空気がきれいな北海道で生まれたお米だからこそ、北斗七星のように輝いてほしい」との願いを込めて、一般公募から選ばれました。

ほどよい粘りと甘みで、冷めても美味しさが長持ちするとされています。

熟期は「中生の早」で『きらら397』と同等で、『ほしのゆめ』よりやや遅いデス。
耐倒伏性「やや弱」、耐病性「やや弱」と『きらら397』に劣りますが、耐冷性は「やや強~強」と上回っています。(穂ばらみ期耐冷性「強」・開花期耐冷性「やや強~強」・遅延型耐冷性「やや強~強」)
収量は『きらら397』並みかやや高く、食味も優るとされています。
いもち病真性抵抗性遺伝子は【Pia】【Pii】と推定。

育種経過

平成5年(1993年)、北海道立中央農業試験場でF1(『ひとめぼれ』×『空系90242A』)を母、『あきほ(空育150号)』を父として交配し、その雑種第1代を葯培養で育成したものです。

育種目標は「良質良食味耐冷性品種」。

『ななつぼし』の育成には葯培養が用いられています。
通常の育種では雑種世代を数世代重ねることで純粋なホモ接合体を作成し、選抜を行いますが、葯培養を行った場合、遺伝子が同型の純系ホモ接合体がたった1代で作り出せます(無論培養した中に失敗したものも含まれますが)。
つまり選抜の開始を早めることが出来ることから、育種期間の短縮に役立つ技術とされています。
ヘテロ接合体・ホモ接合体についてはコチラ※参考記事「コシヒカリとの親子関係」

話し戻って、『ななつぼし』は3系交配。

◇東北地域の極良食味品種『ひとめぼれ』
 「極強」の耐冷性、玄米品質の良さに加え、『ササニシキ』を上回るとされた良食味。
◇北海道内の良食味系統『空系90242A』
 米国品種『国宝ローズ』の良食味性を導入した育成系統。
◇中生の良質耐冷性系統『あきほ』
 『きらら397』並みの良食味と、『きらら397』に優る強い耐冷性。

これらの組み合わせで人工交配が行われ、406粒の交配種を得ます。

葯培養については葯置床、カルス増殖に上段をカルス形成液体培地、下段をカルス増殖固体培地とした二層培地を用いた浮遊培地法(二層培地法)を使用。
葯置床数は23,433葯。
約1ヶ月後、形成されたカルスを再度増殖培地に移植。
さらに1週間後、39,600個のカルスをさらに細分化培地に移植。
最終的に細分化した個体は、緑色個体が1,533、アルビノ個体が1,911でした。

平成6年(1994年)5月、緑色個体の内、1,226個体をF1A1選抜試験材料として温室内水田に移植。
同年秋に稔実した個体数は275、半数体など不稔個体数が906でした。
稔実個体から240個体を選抜し、同年11月から翌平成7年(1995年)3月にかけ冬季温室でF1A2世代の系統選抜を行います。
出穂期、不稔発生程度、玄米品質等で240系統(各4個体)の中から13系統・39個体が選抜されます。

同じく平成7年(1995年)夏期、『空系95263』として生産力検定予備試験ならびに特性検定試験に供試され、食味、耐冷性、玄米収量において『きらら397』を上回る結果が出ました。
平成8年(1996年)から平成9年(1997年)には生産力検定本試験が行われ、同様の結果を得ます。

平成10年(1998年)より『空育163号』の地方系統名が付され、奨励品種決定基本調査に供試されるとともに、北海道内の関係機関に配布されます。
翌平成11年(1999年)から奨励品種決定現地調査に供試され、生産力及び地域適応性が検討されます。

結果、良好な成績を収めた『空育163号』は、平成13年(2001年)2月に北海道の奨励品種に決定します。
同年7月、農林水産省に新品種『ななつぼし』として品種登録が申請されました。


このような経過で育成された『ななつぼし』は、食味は良好ながら不良形質を多く抱えていた母本系統の『国宝ローズ』を初めて実際の農家栽培に耐えうる基準まで改良した初めての品種、とされています。
巷では「『ひとめぼれ』の良食味を引き継いで~」と言っている方もいますが、育種論文に依れば上記の通りです。



系譜図

繰り返しになりますが、『ななつぼし』の良食味は米国品種の『国宝ローズ』から。
意外に思われるかも知れませんが、実は日本の結構な数の稲品種には外国産米の血が流れてたりするんですよ?
空育163号『ななつぼし』系譜図



参考文献

〇水稲新品種「ななつぼし」の育成:北海道立農試集報



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