2021年5月30日日曜日

イラスト「祝!かっぱ寿司が『山形県産はえぬき』全面採用へ!」

題材
 『山形県産はえぬき かっぱ寿司全面採用』

登場品種  
 『はえぬき』




ウッッッッッッソだろ?おい?
と思いましたが本当のようで・・・

〇食品産業新聞社 かっぱ寿司がシャリ全面改革、山形県産「はえぬき」単一使用へ、“回転寿司から脱却した品質”目指す

〇東京バーゲンマニア かっぱ寿司で「ブランド米」もらえる!数量限定だって!

令和3年5月28日より、回転寿司チェーン大手のかっぱ寿司がシャリをすべて『山形県産はえぬき』に切り替えるそうです。
(正直いつまで続くかは不透明ですが)これからはかっぱ寿司で食べるお米は全面的にあの!連続特A22年連続の記録を持つ!極良食味米として有名な!あの山形県の!『はえぬき』だけになると言うことです!ね!(まぁ多少盛ってるんですが)

一般的に回転寿司チェーンでは複数産地のブレンド米を使う中、かっぱ寿司は「回転寿司から脱却した品質を目指す」をコンセプトに単一銘柄に切り替え!
品質で言うなら『山形県産はえぬき』はあの『魚沼産コシヒカリ』に勝るとも劣らない!
まさにぴったりですね!(多少の誇張表現にご注意ください)


『はえぬき』が「ブランド米」と呼ばれているのはなんだか違和感すごくうれしいですね
(^o^)
安価な業務用米として「セブンイレブンのおにぎりとして大半は『はえぬき』が使われている」・・・と言われていた平成初期~中期。
ただ『つや姫』の価格上昇に伴い、共に値段上昇が見られ、当のセブンイレブンも令和年代に入ってから『みつひかり』が使用されている(と言っている人は基本「遺伝子組み替え!危険!」とか言っているの正直かなり怪しい気もするのですが)とも言われており、より安価な業務用米にシフトしている可能性も否めません・・・
そして何より肝心、セブンイレブンは原材料表記で『山形県産はえぬき』とは頑なに表記してくれませんでした・・・(有名になって原材料費が上がるのを恐れた?とか?)


彼女に足りないのは今や”名声”のみ
令和になってようやく彼女に日が当たる時が来ました!


やっばいですね
山形県民ならこれからは回転寿司「かっぱ」一択ですわ(必ずしも他者へ強制するものではありません)



2021年5月12日水曜日

酒米の系譜図(育成年と直接親)を作ってみた

イラストでもないし、何かを解説するでもないのですが・・・

酒造好適米の育成年と直接交配親の関係の図です。
なお正確には品種化、地方系統名付与前の系統が交配に使われていることが多々多々ありますが、便宜上すべて最終品種名を用いています(だってそのほうがわかりやすいでしょうし?ちゃんとした交配親は公式情報ちゃんとありますし?【言い訳】)


こうして作ってみると「現代の酒米品種の多くに雄町の血が流れている」って言われてもぱっとしないですね・・・(すべては「雄町=短稈渡船」とかいう超絶雑な理論のせいなんでしょうけども)

現代で我々が目にする「雄町」は岡山農試の『雄町2号』でしょうから、実際「雄町の血を引いている」のは北海道の『きたしずく』くらいでしょうか?



酒米歴代系譜図







擬人化済みの酒米しか載っていないので、最新品種は少し少なめです。
主に作付面積上位、または新酒鑑評会で金賞を取った酒に使われている品種を優先して擬人化していますので、主要な品種は網羅している・・・はず

その視点で見れば、上位の『山田錦』『五百万石』『美山錦』『雄町2号』を除いて
1990~2010年代に育成された品種が集中しています。

最上位品種以外は世代交代もそれなりに進んでいるということでしょうか。

それでも酒米はまだ『山田錦』からの直接繋がりが多いので系譜図も作りやすいですね(粳米で挫折した人間がここに・・・)





2021年5月4日火曜日

田んぼアートとは?そしてその花形「観賞用稲」とは

いや~・・・田んぼアート難しい・・・(さらし首とか言わないで)

世の中には「田んぼアート」があります。

「田んぼアート」は読んで字のごとく、田んぼに植えた稲で絵柄を表現するもので、最初こそ「文字を書く」程度だったものが、遠近法を用いてより巨大に、より繊細な絵柄も表現されるようになってきています。
「田んぼアート」で検索するだけですごい作品が続々見つかります(はず!)

「田んぼに植えたで絵柄を表現する」のですから、当然いろんな色の稲が必要になりますよね。
一般用飯(粳)米、糯米、酒造好適米、飼料用稲とはまた一線を画す「観賞用稲」に加えて、葉の色が違う在来種達が用いられています。

今日はそんな観賞用稲を紹介したいと思います。
(ここまで前回の天丼)




田んぼアートの歴史(簡易)と田んぼアート開催一覧

田んぼアートの先駆けは青森県の田舎館村で始まりました。
平成5年に始められた当初は、3種類の稲(おそらく『短稈紫稲』『黄色稲』『つがるロマン』)を使用して「岩木山」の形に加えて文字を書くだけという、簡易なものでした。
駆け出し当初はまだ「田んぼアート」という言葉もなく、「稲文字」と呼ばれていたそうです。

平成13年まではこのような単純な絵柄と文字だけというものでしたが、平成14年から「稲」と「月」を含んだ図柄に文字も絡め大規模化したのを皮切りに、平成16年からは遠近法(”田んぼアートの作り方”で後述)も用いて絵柄はより繊細なものになっていきます。

墨猫大和独自調べ(下表参照)によると、田舎館村の絵柄が具体化・遠近法も取り入れ始めた後の平成18~20年頃から田んぼアートを始める地区が他県でも続々現れてきます。
あくまでも”管理人独自調べ”なので抜けている地区も多くあると思いますが(どうかコメント等で教えてください)、東北の方がかなり多い印象ですね。

後発ながら埼玉県行田市は平成27年9月8日に「世界最大の田んぼアート」としてギネス認定(180m×165mの水田)されるなど、各田んぼアートでしのぎを削っている状況です。

都道府県名開始年田んぼアート場所企画・運営団体使用稲種類
北海道旭川市H18~旭川市東鷹栖JAたいせつ 青年部6
青森県田舎館村H5~田舎館村展望台(第1田んぼアート)
弥生の里展望所(第2田んぼアート)
田舎館村 企画観光課商工観光係10
秋田県内陸縦貫鉄道H25~上桧木内駅から鷹巣駅までの区間北秋田地域振興局農業振興普及課6
秋田県八郎潟町H28~塞ノ神農村公園地域振興協議会8
岩手県奥州市水沢区H20~奥州市水沢区常盤地区田んぼアート実行委員会7
岩手県花巻市H22~石鳥谷生涯学習会館八幡まちづくり協議会
八幡田んぼアートプロジェクトチーム
6
山形県米沢市H18~米沢市簗沢米沢市役所 産業部農林課5
山形県最上町H28~最上町月楯楯っ子田んぼアート実行委員会5
宮城県角田市H20~角田市高倉字内田(元は西根5区)角田市役所総務部まちづくり交流課8
福島県双葉郡楢葉町H30~楢葉町山田岡地内福島田んぼアートプロジェクト事務局7
新潟県十日町市H27~松之山の棚田アート東京の美味しいごはん専門店
「おひつ膳 田んぼ」
7
埼玉県行田市H20~行田市古代蓮の里行田市役所 環境経済部農政課9
山梨県北杜市H19~北杜市高根町箕輪新町北杜市役所 観光課3
静岡県菊川市H20~菊川市下内田の稲荷部地区菊川市観光協会
田んぼアート菊川実行委員会事務局 
9
滋賀県長浜市H25~長浜市虎姫地区虎姫地域づくり協議会5
滋賀県甲賀市H27~甲賀市水口町牛飼地区農事組合法人「うしかい」4
三重県熊野市飛鳥町H18~飛鳥町小又地内飛鳥地区地域まちづくり協議会9
兵庫県豊岡市H23~豊岡市但東町正法寺但東町正法寺の温泉宿泊施設
「シルク温泉やまびこ」
4
熊本県上天草市H27~上天草市松島町教良木天草四郎観光協会4

※必ずしも最新の状況・情報とは限りません、あしからず
※「使用種類稲」についてはいろいろ怪しいのですがとりあえず・・・仮に

田んぼアートの作り方

(令和2~3年はコロナ騒ぎで自粛・縮小するところが多いですが)非常に盛んになりつつある「田んぼアート」。
そんな「田んぼアート」はどうやって作るのでしょう?

①絵柄の決定

最初にまず作りたい絵柄を決めます(当然と言えば当然ですが・・・)
後述しますが使用できる(表現できる)色にも限りがありますので、その辺も考慮して考えるものと思われます。

初期の頃の田んぼアートはこの図案をそのまま田んぼに”平面的”に描いていたものも多かったようですが、それでは1つ問題があります。
②でも平面的に書いたのでは実際見た時歪んでしまう・・・

”平面的に”ということは、航空機などで真上から見ればきれいな形に見えると言うことです。
つまり・・・これでは高台や仮組みした展望台などから見た際には形が歪んで見えてしまうのです。

上の絵でも『ゆきあそび』ちゃんもずいぶんと胴長というかおデブというか・・・(小顔にはなりましたが)
これでもドローンでも飛ばして真上から撮影すればきれいな絵柄になっているのです

③展望台からこういう風にきれいに見えるようにしたい

せっかくイベントなどで告知して多くの人に見てもらうんですから、見に来てくれた人にきれいな絵柄を見せたいですよね。
④遠近法を勘案して実際の植え付け図柄を決定します
「実際の図柄」←【田んぼを真上から見た図】→「展望台から見える(はずの)図柄」 

というわけで利用するのが皆さんご存じ「遠近法」。
この場合遠くのものほど小さく、近くのものほど遠く見える、これを利用して上空から見れば歪んだ図面が、ある一点から見るときれいな絵柄となって見えるようになります。

上の絵でも『ゆきあそび』ちゃんの頭がとんでもないことになっていますが、縦に長い水田を利用して、展望台から右のような図面を見るためにはこれくらい歪んだ図面を描く必要があります(多分・・・素人芸なのであまり信用しないでください)
斜めから見る場合や横方向に広い場合など、「どこから見るか」によって歪め方も変わりますので、ここはプロの測量会社さんなどに依頼・・・しているんじゃないでしょうか(憶測)

必ずしもすべての田んぼアートがこの遠近法を取り入れているワケではないですが、やはり巨大になればなるほど距離による歪みも大きくなるので、巨大なアートを目指すなら必須の技術と言ったところでしょうか。


⑤図柄のどこにどの品種を割り振るか計画図を作ります

こうしてできた図柄を水田に測量(これこそ本当にプロの領域)を行った上で正確に書いていきます。
後は人海戦術で決められた場所にいろんな色の稲を植えていきます。
一大イベントの田植えとして一般の人を募集しているところも多いですね。

⑥だんだんと絵柄が浮かび上がってきます(イメージ)

こうして植えられた稲は、おそらく出穂期頃に葉の色、籾の色、芒の色がはっきり出て、綺麗な「田んぼアート」となります。

【本題】田んぼアートで活躍する品種達は?・・・ちなみに「古代米」なんてない

さてここまで紹介してきた「田んぼアート」
巨大で繊細な絵が増えていく以上、表現の幅を増やすのに重要なのはやはり用いる稲の「色」です。
通常の絵画で言えば「絵の具」の役割を果たす稲達は、一般用品種、在来品種、専用品種(観賞用稲品種)が用いられています。

以下紹介していきますが、その前に・・・

特にマスメディアの記事で顕著ですが
「古代米を用いて描かれた田んぼアート~」のような記述をよく見かけます。
まず根本的に、これ間違いです。
世間一般すでに「古代米」の意味が雑多に乱用されていることは知っていますが、はっきり言います。
間違いです。古代米なんて使われていません。

例えば、古代に生きていた生物「マンモス」。
そして現代に生きているゾウは鼻が長くて牙があって・・マンモスと一緒ですね。
だから今生きてるゾウは古生物なんだ!・・・と言っているのと同じです。

有色米を無分別に「古代米」なんて呼ぶのを止めましょう。
芒の長い品種を無差別に「古代米」なんて呼ぶのを止めましょう。
葉色が緑以外の品種を安直に「古代米」なんて呼ぶのを止めましょう。

繰り言になりますが、以下紹介する品種の中に「古代米」は一切いません。

背景用(緑) 一般用飯米品種

絵を描いた時の背景(絵の周囲)となる品種には多くの場合一般用飯米品種が使用されているようです。
その地域で最も一般的な品種が用いられているように思われ、特に記述されていないことも多いです。

例を挙げると
北海道では『ななつぼし』、青森県では『つがるロマン』、山形県では『はえぬき』、岩手県では『ひとめぼれ』、埼玉県では『彩のかがやき』等が使用されているようです。

絵画で言えばキャンバスの役割で、特に色に特徴が必要ないために一般用品種で十分と言うことでしょうか。
厳密に、というか一般用飯米品種間でも葉の色には差がありますから、彼女たちでもその気になればより繊細な表現は出来るかもしれません。

実際平成29年(2017年)の埼玉県行田市の田んぼアートでは『彩のかがやき』を「緑」、『キヌヒカリ』を「黄緑」として表現に用いていました。

また、上越市立清里小学校が平成23年(2011年)から行っている「稲文字」では『コシヒカリ』と『こがねもち』の一般品種だけを使用しています。

田んぼアートの先駆け 『短稈紫稲』『黄色稲』『観稲』

『短稈紫稲』『黄色稲』『観稲』は青森県産業技術センターが保存している在来品種で、青森県田舎館村の田んぼアートで使われたのを皮切りに、全国の田んぼアートに広まっているものと思われます。


短稈紫稲(紫大黒)
〇『短稈紫稲』~たんかんむらさきいね~
 極短稈で葉の色が紫色の在来品種。
 田んぼアートでは「紫」や「黒」の表現に用いられる。
 穂の色は普通だが、稃先色あり。
 玄米色はやや褐色が強い粳(管理人独自調査)。
 芒は無いが、稃先色が紫。
 ■使用団体【8~11】
黄色稲(黄大黒)
〇『黄色稲』~きいろいね~
 極短稈で葉の色が黄色の在来品種。
 田んぼアートでは「黄色」の表現に用いられる。
 穂や玄米の色は普通で粳。
 「黄色」表現品種として代わりの無い重要品種。
 芒や稃先色は無し。
 ■使用団体【10~13】
観稲(緑大黒)
〇『観稲』~かんとう~
 極短稈で葉が濃い緑色を有する在来品種。
 田んぼアートで「濃い緑」の表現に用いられる。
 穂や玄米の色は普通で粳。
 正直使用されている機会は少ないように感じる。
 芒や稃先色は無し。
 ■使用団体【4】



人為的な交配が行われた品種ではないようですが、初期の田んぼアートから活躍し、未だ現役(一部)で用いられており、彼女たちは「観賞用稲」の先駆けとも言える品種達です。

なお、経緯は不明ですがこの3品種はなぜか「紫大黒」「黄大黒」「緑大黒」の呼称が多く用いられており、実質普及元となった田舎館村でもこの名称が使われています。
少なくとも田舎館村から普及した”大黒シリーズ”については間違いなくこの『短稈紫稲』『黄色稲』『観稲』ですが、正直他の県についてはわかりません。

元々の名前の”紫稲”や”黄色稲”も、稲の形態そのままを表しているので、別の紫色や黄色の系統や品種を”紫稲”や”黄色稲”と呼んでいることもままありそうで・・・(同名異種)
品種名の扱いが基本雑なので、記載されている品種名をそのまま信じて良いかもよくわかりません。
ここで紹介しているのはあくまでも「青森県田舎館村由来の品種達」と言うことにはご留意願います。(他県の田んぼアートで「紫大黒」や「黄色稲」があったとしてもここで紹介しているものと同じとは限らないのです)

ちなみに、令和現在青森産業技術センターでは容易に在来種について種籾の譲渡はしてくれません(多分)ので、基本的には田舎館村に依頼して貰うのが一般的なようです。
かく言う自分も田舎館村から入手しました。

青系観シリーズ

田舎館村の田んぼアートがより精巧になるにつれ、より表現を広めるためにも色彩豊かな品種が求められた青森県産業技術センターでは、平成22年以降色とりどりの品種が育成されました。
地方系統名に「観」を冠しており、まさに「観賞用専門の品種」として6品種が品種登録されています。
後で紹介する「奥羽観」系品種が1品種当たり2~3箇所で使用されているのに対して、「青系観」品種(とくに「あそび」系統)は1品種当たりで10箇所以上で使用されているものまであります。
現在の田んぼアートの表現を支える主力は「青系観」系品種と言えるのではないでしょうか。

〇青系観174号『白穂波』
 芒が長く穂全体を覆うことで遠目に白く見える品種。
 田んぼアートでは「白」の表現に用いられる。
 出穂期以降に新たな柄を出現させることが可能で、表現の幅が広がることが期待されている。
 葉・穂色は普通だが、玄米色は「赤茶」。
 旧系統名『青系赤174号』で使用されたことも。
 ■使用団体【1】
〇青系観175号『ゆきあそび』
 極短稈で葉色が淡黄緑~白の品種。
 田んぼアートでは「白」の表現に用いられる。
 白表現のエース品種で全国引っ張りだこ。
 穂の色は普通でやや短い白い芒がある。
 背(稈長)も低いが、収量もかなり低い(226kg/10a)
 ■使用団体【14】
〇青系観176号『べにあそび』
 葉色がピンク(マゼンタ)、穂色が赤淡紫色の品種。
 紫色の短い芒を持つ。
 田んぼアートでは「赤」「ピンク」の表現に使用。
 「あそび」シリーズの中で唯一の糯品種。
 収量性は並んで低い(322kg/10a)。
 ■使用団体【10】
〇青系観177号『あかねあそび』
 田んぼアートでは「橙」の表現に用いられる。
 葉は赤紫色と黄緑色が混じり合い、遠目には橙色に見える。
 穂色は普通で、芒はないが紫色の稃先色を持つ。
 収量はかなり低い(175kg/10a)。
 『黄色稲』と『短稈紫稲』の子品種というエリート(?)。
 ■使用団体【9】
 
〇青系観178号『赤穂波』
 穂の色が赤茶色の品種。
 出穂後に穂の発色が進むので、アートに変化を付ける場合に用いられる。(遠目で「やや赤みのある緑」)
 褐色でやや短い芒を持つ、玄米は通常色の糯品種。
 発色が地味だからか田んぼアートでの使用率は多少低い。
 『紫穂波』とは姉妹品種。
 ■使用団体【2】
〇青系観179号『紫穂波』
 穂の色が紫色の品種。
 出穂後に穂の発色が進むので、アートに変化を付ける場合に用いられる。(遠目で「やや黒みのある緑」)
 紫色でやや短い芒を持つ、玄米は通常色の糯品種。
 発色が地味だからか田んぼアートでの使用率は多少低い。
 『赤穂波』とは姉妹品種。
 ■使用団体【2】


なお田んぼアートの使用品種について「青系観」(本当に記述がこれだけ)であったり、「青森県の古代米」と表現している団体も少なくないので、実体というか実数は本当にわかりません。
むろんどれも育成・登録品種ですから馬鹿なこと(自家採種、種子の無償・有償問わずに譲渡)はしてはいけませんし、各団体もしていない(はず)です。
育成者権の侵害、これ本当にダメ・絶対。

奥羽観シリーズ 西海観シリーズ

農研機構の東北農業研究センターでは、青森県ほどの華やかな活躍はないですが、『べにあそび』の親にもなった『奥羽観383号』を始めとして、いくつかの観賞用稲品種が育成されています。
品種登録されていない系統も田んぼアートに用いられているようです(その経緯と現在も使用継続されているのかは不明)。
また同じ農研機構の九州沖縄農業研究センターでも観賞用稲系統は多数育成されていますが、実際品種登録・使用されているのは1品種だけのようです。


〇奥羽観378号『祝い茜』
 極短稈で穂及び芒が赤~褐色の品種。
 当初は切り花用を想定。
 田んぼアートでは「赤」の表現に使用。
 葉色は普通で、穂の赤とのコントラストが美しい。
 『祝い紫』とは父方の『対馬在来』で繋がりがある。
 ■使用団体【2】
〇奥羽観379号『祝い紫』
 穂及び芒が紫色の品種。
 当初は切り花用を想定。
 田んぼアートでは「紫」の表現に使用。
 葉色は普通で、穂の紫とのコントラストが美しい。
 『祝い茜』とは父方の『対馬在来』で繋がりがある。
 ■使用団体【3】
〇奥羽観383号『奥羽観383号』
 穂が紫色の品種で、地方系統名が品種名。
 芒はないが稃先色は紫色。
 葉には白い縦縞が入る糯品種。
 田んぼアートでは出穂前「白」、出穂後「紫」として使用できる。
 『奥羽観399号』は姉妹品種。
 ■使用団体【1】
〇奥羽観399号
 白く長い芒、そして葉には白い縦縞が入る品種。
 品種登録されていない。
 観賞用稲「秋田きれいね」で「祝い雪」とされているのは彼女か?
 田んぼアートでは「白」の表現に使用。
 『奥羽観383号』は姉妹品種。
 ■使用団体【2】

〇奥羽観401号
 葉に白の縦縞が入る品種。
 芒は長く紅色。
 田んぼアートでは「赤」や「ピンク」に使用。
 『奥羽観383、399号』と同交配系統と『祝い茜』を交配した後代子品種。
 ■使用団体【1】
〇西海観246号『西海観246号』
 ピンク色の長い芒が特徴の品種。
 葉には白い縦縞が入り、籾の色は普通。
 田んぼアートでは「ピンク」の表現に使用。
 玄米色は赤褐色の糯品種。
 ピンクという色の発現は他品種と被らない強みであると思われる。
 ■使用団体【4】



『奥羽観383号』『奥羽観399号』『奥羽観401号』は宮城県角田市で使っていたとの記述がありましたが、今も続けているかは不明です。
複数団体が使用しているのが当たり前の「青系観」と比べると、やはり「奥羽観」の使用状況は芳しくないというのが率直な感想です。
「白」では『ゆきあそび』が圧倒的、「赤」では『べにあそび』が圧倒的、「紫」では『短稈紫稲』始め在来でも多数・・・
『祝い茜』や『祝い紫』は青森県の『赤穂波』『紫穂波』と発色が被っているのも苦しいところでしょうか・・・

『西海観246号』の「ピンク」だけはやはり強いなと感じます。

宮崎観(ひむか)シリーズ

地方系統名に「観」が入っていれば、ひとまず観賞用の専用品種として意図を持って育成されたことがわかります。
イネ品種データベースで検索すると、令和2年現在で数少ないですが、宮崎県で育成され、品種登録されている「ひむかシリーズ」があります。
田んぼアート用というよりは「奥羽観」と同じようにドライフラワーや民芸品などに使用することを想定して育成されたことになっています。(一応育種論文内に「水田絵文字に利用」の記述はあるんですけども・・・)
すべて糯品種で、稈長が『コシヒカリ』並に高いので倒伏しやすい欠点は共通しています。

〇宮崎観37号『ひむか赤のげ』
 赤籾・赤の長芒を持つ品種。
 
〇宮崎観38号『ひむか黒のげ』
 紫籾・紫の長芒を持つ品種。
〇宮崎観39号『ひむか白のげ』
 籾色は通常で、長い白い芒を持つ品種。
〇宮崎観40号『ひむか赤もみ』
 赤籾で赤の中芒を持つ品種。
 5姉妹の仲で唯一の赤糯。
〇宮崎観41号『ひむか黒もみ』
 紫籾で紫の中芒を持つ品種。








これらすべて【母本『ちくし赤糯22号』と父本『FL175』】という同じ交配から生まれた、本当の5姉妹品種です。
ただこの娘達、平成19年(2007年)に品種登録されているんですが、育成者権の最長期限25年が切れる遙か手前の平成28年(2016年)に育成者権が消滅している(おそらく意図的に継続を止めた)ことから、よほど普及しなかったんだろうなぁ・・・とは思います。
今も保存されているのかなぁ・・・
でもせっかく『コシヒカリ』と同じ、現代では珍しい5姉妹なので、紹介することにしました。

でも穂の外観は本当に綺麗な品種なんですよ。

他、よくわからん品種とか

青森県の育成品種が普及する前だったからか、「大黒」シリーズの他に有色米(紫黒米)を用いているところがチラホラありました(多分)・・・が
これまた酷いもので、「紫米」とか「紫穂米」とか「紫黒米」とか・・・もう品種名なんだか俗称なんだかその地域の研究機関でそういう名前で保存されてきたものなんだかまったく見当が付きません
もしかしたら『短稈紫稲』に対する「紫大黒」とはまた違った独自の呼称かもわからないですし・・・
また「大黒稲」とか「短稈稲(紫)」とか「青森紫」とか青森県の大黒の別称っぽい感じはするものとかどう判断しろって言うんでしょう・・・

品種を民間に任せるとフリーダム過ぎてダメだって事がよくわかる事例ではないでしょうかこれはもう・・・

〇「神丹穂」~かんにほ~
芒が赤い品種・・・のようですが、芒が白いものも「神丹穂米の一種」とか言っているところもあってもうなにがなんだか訳がわかりません。

〇「ムラサキ905」
「埼玉県が育種した品種」とか言っているところもありましたが育成品種にこんな名前のものはありません。
おそらく埼玉県で独自に保存していた在来種のことだとは思いますが・・・
この程度のことで問い合わせるのも・・・というのもこれが民間側の独自呼称だったりすると研究機関側はさっぱりわからないわけで・・・

という自分が調べた中で、唯一ちゃんとわかったのは1品種だけでした。

〇奥羽糯349号『朝紫』
 岩手県花巻市の田んぼアートで使用?
 農林水産省東北農業試験場(当時)で育成された紫黒糯品種で、バリ島在来の品種名不詳の紫黒粳系統由来。
 『ヒメノモチ』並の食味をもった有色糯品種として育成されましたが、葉色や稃先色・芒色が紫、籾は黄白ながら玄米色を反映して黒っぽく見えるなど、外観上の特徴が強いことから田んぼアートへの使用も可能だったのでしょう。

ということで
田んぼアートには謎の品種が多数使われております。(誰か情報ください)


まとめ

「稲」というのは種子である「米」を収穫する事を目的とした作物です。
しかし観賞用稲は稲でありながら基本的に「米」に目的が向いていないという点で非常に特殊です。(翌年の栽培のために種籾の収穫は当然しますが)

稲の品種数多しと言えども、観賞用というこの特殊なジャンルでは今回紹介した娘達でほぼすべて網羅してしまっています。(前述した謎の品種多過ぎ問題はありますが・・・)
後は『朝紫』のように既存品種の中でも、観賞の用途に転用できるものもいくつかあるでしょうが・・・今後さらなる新色の当場なんてあるんでしょうか?

今後動向を注視するとしたら田んぼアートの最先端青森県か・・・埼玉県・・・はどうなんでしょう?
田んぼアートが脚光を浴びても、「どんな品種を使っているか」はあまり注目されないものですが、稲ヲタクとしてこれからも情報を探していきたいと思います。


参考文献

〇田舎館村公式ホームページ「田んぼアート水田風景」:http://www.vill.inakadate.lg.jp/docs/2012022800030/
〇行田市公式ホームページ「田んぼアート」:https://www.city.gyoda.lg.jp/shigoto/nogyo/tanbo/index.html
〇青森産技「品種データベース」:https://www.aomori-itc.or.jp/soshiki/nourin_sougou/seika/hinsyudb.html
〇観賞用水稲新品種ひむかシリーズ5品種:宮崎県総合農業試験場研究報告



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