2023年6月26日月曜日

鑑評会金賞受賞酒の酒米は何か?~令和3酒造年度全国新酒鑑評会~



独立行政法人である酒類総合研究所が行っている全国新酒鑑評会。
令和4年5月25日に、令和3酒造年度(2021年7月~2022年6月)に関して結果が発表されました。

出品数は826点、うち404点が入賞し、205点が金賞に輝きました。
コロナの影響で入賞酒までしか審査されなかった令和元酒造年度、そして金賞が復活した令和2酒造年度に続き2年目を迎えました。


↓元結果URLはコチラ↓

それで…
そもそも”新酒鑑評会”とは何ぞや?(テンプレ


全国新酒鑑評会(テンプレ

”(前略)清酒を全国的に調査研究することにより、製造技術と酒質の現状及び動向を明らかにし、もって清酒の品質向上に資するとともに、国民の清酒に対する認識を高めることを目的とします。”
~全国新酒鑑評会開催要領より~

ということで、統一された基準で、日本中の蔵が参加可能な吟醸酒の品評会、それが”全国新酒鑑評会”です。

「品評会」は個々の優劣をつけることが主たる目的
に対して
「鑑評会」は酒造技術に対する専門家の評価を技術向上に役立てることを主たる目的にしています。

ところでとってつけたように「国民の清酒に対する認識を高めることを目的」とか書いてますが何をもって認識を高めようとしているのか不明(略
(独)酒研に「出品酒の情報教えてくれませんか?」と聞いたら「それは出品者にしか教えられない」とか言ってるんですが、金賞受賞しましたーだけ発表してれば認識が高まると?
とか(個人的な)不満は尽きない・・・
飯米の食味ランキングでは「特A表記」について、かなり気を遣った宣伝広告をするよう情報発信されていますが、この鑑評会ではそういった動きが見られないのもちょっと懸念点。
発表に使われている「商標名」なんて金賞を受賞した商品とほぼ関係性無かったりするのに、その悪用を見て見ぬ振りと言った感じです。

などなど…
まぁ気を取り直して

どうやって鑑定するの?

独立行政法人酒類総合研究所、国税庁の酒類鑑定官、都道府県醸造試験場の技術関係者などの専門家による唎き酒(人間の五感による鑑定)の他、酸度や香気成分についての化学分析も行われ、入賞酒(俗称:銀賞)、さらにその中から金賞酒が選ばれます。

これもいろいろ批判はあるようですが、
結局、飯米で言うところの「食味ランキング」のようなものでしょうか。
評価する一定の基準とするものであって絶対的な評価として扱う側に問題があるものだと思われます。
でも実際一部酒屋の売り方には一部疑問を感じる・・・


さて本題

と、こんな全国新酒鑑評会。

日本全国の酒蔵が一堂に会しているこの鑑評会で、金賞を受賞するような日本酒にはどのような酒米が使われているのか、恒例になりましたが、調べてみました。

ちなみに令和3酒造年度で最多金賞受賞は福島県が17蔵で、全国の中で金賞最多9連覇(R
元酒造年度を挟んで)となりました(最多通算11回目)。
続いて秋田県と兵庫県の13蔵、新潟県と長野県の12蔵、山形県の11蔵と続きます。
二桁金賞では広島県の10蔵が最後です。


調査方法~こんな感じで調べました~(乱暴)

さて本題・本番です。
令和3酒造年度に金賞を受賞した205蔵について墨猫大和独自調べを行いました。


墨猫大和独自調べ
① 蔵元のHPを確認。金賞受賞酒について原材料名表記があればそれを採用。
② 金賞受賞酒を販売しているか確認。原材料名表記があればそれを採用。
  ※ここ2~3年以内、直近で金賞受賞酒の使用酒米が分かればそれを採用することもある。
③ それでもなければ銘柄名、金賞受賞で検索。個人のブログ等がないか調べる。
④ それでもなければ「どうせ兵庫県産『山田錦』使っているんだろぉ?(ぶん投げ)」
  「国産米100%使用」とか「酒造好適米100%使用」も「どうせ『山田錦(略

令和2酒造年度まではその蔵の製造している大吟醸酒で『山田錦』か「不明」かとかしていたのですが、令和3酒造年度からはもう止めました。
「国産米100%使用」とか「○○県産米使用」とか「酒造好適米100%使用」とかふざけたこと曖昧なことを書いている蔵、表記が無い蔵なんてどうせ兵庫県産『山田錦』使っているに違いない、と言うことにしてます。(労力軽減のため)
でも実際、王道(『山田錦』)を使わない気概があるなら、使用品種名を情報発信くらいすると思いませんか?

ともあれ
以上の省力化はしたものの、相変わらず間違えている可能性は大いにあります。
②※で前年度以前の金賞受賞酒を参考にしているのも不安がある(実際見つけられただけでも、2~3年前は地元の品種を使っていたのに『山田錦』に切り替えている蔵がチラホラ…)のですが

・地方の鑑評会と全国鑑評会、もしくは別賞の「金賞受賞酒」と取り違えている可能性。
・「金賞受賞酒」と「金賞受賞蔵の造った酒」の取り違えの可能性。
・そして上記のような誤情報を(故意にせよ不可抗力にせよ)酒屋が発信している可能性(実際、金賞受賞していない蔵の”全国鑑評会金賞受賞酒”を2~3見つけましたし…)
等々…

あと本当に酒蔵の「銘柄」ってどういうシステムなの?どういう定義なの?
「〇〇蔵の銘柄■■が金賞受賞しました!」とか言ってるくせに、販売されてる金賞受賞酒の商品名全然違ったりするんですけどなんなのですかこれ(発狂)

…まぁ繰り返しになりますがあくまでも参考程度に!



【金賞受賞酒】に使われている酒造好適米!【最多及び総評】

最多が『山田錦』なのは周知の事実なのでどうでもいい()として
その他、独自に頑張っている結果が”見えた”蔵がどれくらいあったかというと…

結果
※あくまで当ブログの独自(雑)調査

  • 160点/205点…(”どうせ”を含む)山田錦(約78.0%)
  •  15点/205点…兵庫県産以外の山田錦(約7.3%)
  •  30点/205点…他品種(約14.7%)

鑑評会で最も多く使われている品種は…!
まぁやっぱり調べるまでも無く(調べても)『山田錦』でしたので(諦め)、それは当然として…

もはや説明するまでも無しの『山田錦』

『山田錦』に関しては、全国で「兵庫県特A地区産」「兵庫県産」がかなり目立ちますし、「最高峰の山田錦」「最上の山田錦」みたいな曖昧なことを言っているのもこの「兵庫県産」の範疇のような気がしますが、どこで生産された『山田錦』なのか、はっきりしない蔵が非常に多いです。
「最高品質の山田錦使用」とか「酒米の王様山田錦使用」って感じの言い回しも多いんですよね。それどこ産?

R2酒造年度まではあくまで「使用品種」でしかソートしてきませんでしたので『山田錦』はすべて一緒くたにしてましたが、今回は原産地が記載されていれば一応別途カウントするようにしてみました。

埼玉県「力士」…阿波山田錦
長野県「神渡」…長野県産山田錦
静岡県「花の舞」…静岡山田錦
三重県「半蔵」…伊賀山田錦
三重県「天下錦」…伊賀山田錦
三重県「酒屋八兵衛」…伊賀山田錦
京都府「坤滴」…鳥取県産山田錦
島根県「石見銀山」…島根県産山田錦
岡山県「三光正宗」…岡山県新見市産山田錦
山口県「長門峡」…山口県産山田錦
徳島県「瓢太閤」…阿波山田錦
福岡県「白糸」…福岡県糸島産山田錦
福岡県「三井の寿」…福岡県糸島産山田錦
福岡県「極醸喜多屋」…福岡県糸島産山田錦
長崎県「白獄」…福岡県糸島産山田錦


と、少なくともこれら15蔵が兵庫県産ではない『山田錦』を使用しているようです。
単純に地元産『山田錦』を使う、というだけではないようです。
わざわざ他県産の『山田錦』を使うのは何かしらのこだわりでしょうか。
…とは言え一抹の不安も
例えば
三重県の「天下錦」、酒蔵の(株)福持酒造場が「酒の製造に使用しているのは全て伊賀産」とか書いていたんですが、こういう情報発信、信用して良いんですよね?
「鑑評会用には兵庫県山田錦つかっているけどなにか?」とか言わないですよね?(まじでさぁほんとにさぁ…)

信用したとして
三重県と福岡県では県産の『山田錦』を使用する傾向が強いようですね。


金賞受賞酒に使われている酒造好適米【その他品種30点の内訳】

◯青森県(金賞受賞4蔵中1蔵)

古豪復刻品種『豊盃』で金賞を受賞した蔵を発見

『華吹雪』『華想い』『華さやか』の華三姉妹に4女『吟烏帽子』を加えた4品種が青森県の最新(?)酒米品種達ですが、それ以前に青森県内で育成された品種としては『古城錦』『豊盃』の2品種があります。
青森県として初めて本格的に酒造好適米を意識されて育種された『古城錦』、そしてその短稈化に成功した『豊盃』共に、昭和50年代以降にはいったん栽培が統計から消えたものを、平成に入ってそれぞれ酒蔵が復活させています。(なお純度・系統維持管理状況は知らぬ)

今回はそのうち三浦酒造(株)が『豊盃』で見事金賞受賞。
令和2酒造年度は新進気鋭『吟烏帽子』で金賞受賞した蔵もありましたが、新参古参ともに頑張っている様子が見えるのは楽しいですね(個人的に)


◯宮城県(金賞受賞5蔵中1蔵)

宮城県の地元っ子

宮城県ではここ最近『美山錦』や『ひより』使用での金賞受賞がありましたが、令和3酒造年度は宮城県開発品種の『蔵の華』で内ヶ崎酒造店が金賞受賞です。
内ヶ崎酒造店は昨年度は『美山錦』での受賞でしたが、今年から地元産に切り替えた?のでしょうか。
願わくばこのまま続けて欲しい…(個人的に)

過去の受賞品種状況は知るよしもないので真偽は不明ですが、『蔵の華』を使用した清酒での金賞受賞はこれが初とのこと。
…平成9年の育成以来、今まで無いって本当ですか?(と言いつつあり得そうだなと思います)

『蔵の華』は醸造用玄米における基準、大まかに言えば「心白が大きいものが良い品種」見直しの機会になった品種であり、見た目は明瞭な心白は発現しにくい品種となっています。
しかしながら吸水性などの酒造適性は優れており、なんと!あの!最高峰()の酒造好適米である山形県の『雪女神』の親品種にもなっていることからも、その優秀性は疑いようが無いですね!

人を酔わせる「華」との期待を込められた彼女、今後も引き続きの金賞受賞を期待します。


◯秋田県(金賞受賞13蔵中2蔵)

新参と古参がそれぞれ活躍!『百田』『秋田酒こまち』

福島県の17蔵に続いて13蔵の金賞受賞は全国第2位。
そんな秋田県では県オリジナル品種の『秋田酒こまち』と『百田(ひゃくでん)』で金賞を受賞した蔵が2つありました。

千歳盛酒造(株)は秋田県オリジナル品種の『秋田酒こまち』で金賞受賞。
『美山錦』並の栽培特性、『山田錦』並の醸造特性は伊達では無い!
秋田銘醸(株)は近年開発された新品種の『百田』で受賞。
『一穂積』とほぼ同時にデビューした新参の酒造好適米で、すっきり淡麗の『一穂積』と『山田錦』以上(かもしれない)の酒造適性を持つ『百田』と、秋田県産清酒の味にさらなる幅を持たせることが期待されている娘達です。
『百田』は両親品種共に『山田錦』の血が流れており、育種の早い段階から『山田錦』に醸造適性が似ているとされていたとか?


◯山形県(金賞受賞11蔵中4蔵)


酒米の女王『雪女神』様っ!

※念を押しておきますが、当ブログは露骨に山形県びいきを行っています。
…山形県は頑張っているのか?

「酒どころ山形」の集大成にして『山田錦』に匹敵する最高峰の大吟醸酒向け酒造好適米『雪女神』!!!
そんな『雪女神』で錦爛酒造、加藤喜八郎酒造、松山酒造などが受賞!
新潟県の『越淡麗』切り替えと同様に県オリジナル品種への切り替えが進んでいる?山形県は、新潟県に次いで全国で2番目のオリジナル品種金賞受賞県です。(兵庫県除く・墨猫独自調べ)
それもこれも『山田錦』を超える品種の優秀性あってこそのものですからね!
※さらに念を押しておきますが、当ブログは露骨に山形県びいきを(略

それで、誤解の無いように何度でも言いますが、県独自・県産の酒米を使って金賞を取るのが絶対的に偉いとか言うつもりは毛頭ありません、
が、個人的にそういう「地域ならでは」みたいのが大好きなんです、すごいと思うのです。

…なのですが、一部で「令和3酒造年度は山形県金賞受賞蔵の約半数が『雪女神』だった」とか宣伝していたのですよ。
ですが調べた結果は11分の4…これって約半数?せいぜい3分の1じゃないのかい?
はっきりしていないのは「十四代」の高木酒造と「くどき上手」の亀の井酒造なんですが、どっちも最近の令和元~2酒造年で兵庫県産『山田錦』使っているっぽいので…3酒造年度から切り替えたのなら別ですが…本当に頑張っているんですよね?
(とは言え、4蔵受賞でもかなり頑張っている方なのもまた事実)


◯福島県(金賞受賞17蔵中3蔵)


もはや常連の『きたしずく』と、福島オリジナル『夢の香』

さて、理由は未だによく分かっていない(調べていない)のですが、北海道のオリジナル品種『きたしずく』を使って、福島県の千駒酒造株式会社が金賞受賞。
昨年に続いて二年連続です。
生産上位品種でもなく、というか『山田錦』以外で県をまたいで金賞受賞酒に使用されているのは非常に珍しいですね。

松崎酒造株式会社、笹正宗酒造株式会社は福島県オリジナル品種『夢の香』を使用して、昨年に引き続き金賞受賞です。
この地元品種を使うという気概(なのかどうかはわかりませんが)、ものすごく(個人的に)好きです。
福島県の大吟醸用向け品種『福乃香』への移行はあるんでしょうか…まだまだ研究が心許ないのでしょうかね?
ちなみに『夢の香』は「ゆめのかおり」、『福乃香』は「ふくのか」で、品種名に同じ”香”を使用していても読み方が微妙に違うので要?注意。

北海道の『きたしずく』と福島県の『夢の香』と凸凹コンビにも見えますが、広島県の”八反錦”姉妹つながりが地味にあったり…本当に地味に。
『きたしずく』は父本の『吟風』の母品種が『八反錦2号』、『夢の香』は母本が『八反錦1号』と従姉妹?再従姉妹?となっています。
共通祖先で『八反35号』がいるわけですね。


金賞受賞最多を誇る福島県ですが、兵庫県産『山田錦』に頼るところ大という状況は特に変わりないようです。(これが悪いと言っているわけではないですが…個人的につまらぬ…)


◯茨城県(金賞受賞7蔵中1蔵)


日本酒界隈で有名『雄町2号』も鑑評会ではあまり…

そこそこ金賞受賞蔵数の多い茨城県ですが、オリジナル品種『ひたち錦』があるんですが、ですがですが…
また浮気かよ

例年黒っぽいグレーの府中誉株式会社の「渡舟」が金賞受賞してましたが、令和3酒造年度は『雄町2号』を使用した結城酒造が金賞受賞です。
「赤磐雄町」とか書いてましたので、単純な岡山県産『雄町2号』でしょう。

昔は鑑評会を総なめにしていたらしい「雄町(系品種群)」。
とは言え、昔も「和気」やら「赤岩」やらと呼ばれ、酒造業界が実際の品種名も分からないままありがたがっていた状態だった疑いもあり、じっさいのところ黄金期もどうなんだいと(偏見、でも品種名も知らずに酒造業界が使っていたのは本当)


高度精米(大吟醸造り)に重きが置かれがちになってきた現代で、心白大の『雄町2号』では苦しいのか、使用されているのは近年見つけられていませんでした。
とは言え、根強いファンを持つ品種『雄町2号』。
「飲んで美味しい清酒」と、「金賞を受賞する清酒」はまた違うのは周知の事実ですが、それでもなお最古参組の一角として、その実力を示したというところでしょうか。


◯栃木県(金賞受賞8蔵中1蔵)


なんだかんだ毎年姿を見る『夢ささら』

醸造用玄米品種としては『とちぎ酒14』しかなかった栃木県に登場した大吟醸用酒米『夢ささら』。
株式会社虎屋本店及び井上清吉商店の2蔵が金賞を受賞しました。

平成30年育成完了の彼女は縞葉枯病への抵抗性を持った娘。
酒造りの夢を叶え、奏でる願いを込められた彼女は着実に実績を重ねていますね。
昨年度は”新潟県や山形県、長野県に比べても「脱山田錦活動」はかなり鈍い”と私は書きましたが、こうも毎年確実に受賞蔵が存在すると、堅実に頑張っているのだなぁと少し感想が違ってきます。

他の蔵も追随してくれないかなぁ…


◯新潟県(金賞受賞12蔵中7蔵)


(一応)全国最多金賞 新潟県の『越淡麗』

酒造用原料米について、いち早く県外産(というか兵庫県産?)に依存する態勢からの脱却を図り、かつその実績が目に見えてスゴイ新潟県。

小さめの線状心白に低タンパク、大吟醸用のエリート品種『越淡麗』を使用して栃倉酒造、高の井酒造、DHC酒造、大洋酒造、松乃井酒造の5蔵が金賞受賞で、オリジナル品種使用金賞としては全国最多(兵庫県を除く)です。

樋木酒造や峰乃白梅酒造など、過去に『山田錦』+『越淡麗』で金賞を受賞している蔵も令和3酒造年度で金賞を受賞しているので、使用蔵はさらに増える可能性もあるんですが…どうも酒蔵を信用しきれない…
こういう中途半端な使用をしていた蔵って、後年すぐ『山田錦』単独使用に戻している率高かったんですよね(個人調べ)

あと「新潟県産米100%使用のお酒」とかいうのもやめてください(そこまで書くならちゃんと品種名書いてくれません?)


◯長野県(金賞受賞12蔵中3蔵)


新古手を取り合って頑張ってますね。『金紋錦』『山恵錦』

品種別酒米生産量全国第三位を誇る『美山錦』の生まれ故郷長野県。
そんな長野県では『美山錦』で金賞受賞…した蔵はいませんが、山形県、新潟県と並んで金賞受賞蔵、及び『山田錦』以外の品種使用率が高いです。

まずは古参で最近再注目を浴びている『金紋錦』で田中屋酒造店が金賞受賞。

昭和39年(1964年)育成と、新潟県の『五百万石』育成より少し後、広島県の『八反35号』とほぼ同世代とけっこうな古株品種ですが、鑑評会で良く使用されているように見受けられます。
2019年度の受賞歴を根拠に使用していると判断したんですが裏切ってないですよね?

また古株品種だけでなく、平成30年から銘柄設定された新進気鋭の『山恵錦』も2蔵金賞。
高橋助作酒造店、仙醸のうち高橋助作酒造店は販売品を見つけられていないのですが、蔵のHPに『山恵錦』採用までの熱いストーリー記載しているくらいですから…まさか裏切ってないですよね?

3蔵受賞と言っても、少し怪しい長野県でした。
令和2酒造年度は長野県酒造組合が結果をTwitterしてくれてたので非常に助かったのですが…R3酒造分は無かったです。
酒類総合研究所さん、品種発表くらい出来ないんですか?(切実)


◯千葉県(金賞受賞3蔵中1蔵)

『秋田酒こまち』だぶるぶい!

秋田県オリジナル品種の『秋田酒こまち』が千葉県の鍋店(株)で使用されて金賞受賞…
福島県で北海道の『きたしずく』が使用されているように珍しいです…珍しいんですが…
これ、ふざけんなよ案件です。

なにが?というと、販売されている金賞受賞酒の説明でも、蔵の公式HPでも、使用品種は「酒こまち」とか書かれています。
はい、秋田県産「酒こまち」、だそうですよ…品種名間違えてるじゃんか!?

正しい品種名くらいちゃんと把握して記載してくださいよ(個人的な願望…なんですが、名前を間違えないとか基本的なリスペクトでは無いの?)

まぁなにはともあれ、珍しい県外産米の使用にこだわっている理由は気になりますね。
わざわざ使っているのに基本的な情報すら把握出来ていないのは何故かとか


◯愛知県(金賞受賞5蔵中1蔵)


清らかな山のイメージ『夢山水』

愛知県ではオリジナル品種『夢山水』で金賞を受賞した蔵が1。
関谷醸造(株)の稲武工場で使用を確認できました。

『山田錦』の子品種というスタンダードな経歴をもつ『夢山水』ですが、生まれは平成10年と結構昔。
特に使用に至るエピソード等発見できなかったのですが、宮城県の『蔵の華』のように地元回帰の動きが徐々に広まっているんでしょうか?
…こういうの知るためにも金賞受賞の品種、公表して欲しいですよねぇ…

「出品酒使用品種」は公表されているんですが、どこの蔵が何を使っているかまでは分からないですし、金賞に占める割合もわからないしで、大して役立ちません。
継続性とかも見たいですよね?


◯京都府(金賞受賞7蔵中1蔵)


『滋賀渡船2号』物言わず、もの申す!

早速ですが、案件です。

京都府の玉乃光酒造が『雄町2号』で金賞受賞。
「岡山県産雄町使用」だそうなので、『雄町2号』で間違いないでしょう。
2年連続とのことなので、令和2酒造年度の調査からは漏れていましたが、継続して『雄町2号』を使用しているようです。
茨城県に続き『雄町2号』使用酒蔵2県目ですね。

まぁこれ自体は何も問題ないのですが
この玉乃光酒造、『滋賀渡船2号』を「山田錦の親 短稈渡船」として未だに虚偽宣伝を続けてます。

技術が素晴らしいとか、お酒が美味しいとか
それは良いんですが、これは全く別問題だし、何でも良いってもんじゃ無いですよ。ね?


◯兵庫県(金賞受賞13蔵中1(13)蔵)


遺伝的に近い出自を持つこと自体は嘘では無い『山田錦』『白鶴錦』

ある意味最強の県。
酒米の王『山田錦』の故郷兵庫県は県オリジナル品種使用金賞受賞率100%デス。
(黄桜と西山酒造場は明確に「兵庫県産」とは確認できませんでしたが、『山田錦』使用は間違いないので…まさか他県産は使うまい?と言う乱暴な推測含む)
そんな兵庫県については過去2年間触れてきません(と言うか調べてすらいない)でしたが、白鶴酒造本店二号蔵で『白鶴錦』の使用が確認できたのでこの際挙げました。

令和3酒造年度は福島県に次いで、(秋田県と並んで)金賞受賞蔵数全国二位。
『Hyogo Sake 85』のような新参品種もデビューはしていますが、鑑評会に使うような蔵はやはり兵庫県では出ないようです。
やはり絶対的な王の牙城はそう簡単に崩れないということでしょう…

そんな中で白鶴酒造は本店二号蔵が『白鶴錦』で金賞受賞。
令和3酒造年度が初めてというわけでは無いようですが、いつから使用しているかは不明です。
最近まで「山田錦の兄弟米」とか盛んに発信していたことから未だにそんな風潮で言っているところも多いですね。
ちょっと何言ってるか分からなかったんですが、近年は昔の妄言は無かったことにして無難な言い方に修正はされてます。
ですが、これは何度も言ってますが「酒米の性質」や「製造される製品の品質」とは無関係な話なので、金賞を受賞できていると言うことは、酒造原料米としての『白鶴錦』の優秀性は間違いないと言えるでしょう。
…でも宣伝文句に用いる出自も大事な話ではあるのですよ



◯島根県(金賞受賞6蔵中1蔵)


神の国島根県の酒造の未来を担って 『佐香錦』

出雲大社に代表される神事が盛ん…だと墨猫が勝手に思っている島根県。
『改良雄町』『改良八反流』の戦後直後に育成された古参が最近重用されている印象でしたが、平成っ娘『佐香錦』(さかにしき)で池月酒造が金賞受賞です。
名前の由来は島根県平田市にある、酒造の神様としてまつられている「佐香神社」にちなんでいるとか。

『改良八反流』の酒造適性そのままに栽培特性の改良を狙って育成された彼女ですが、大粒ながら心白が大きいため高精米には向かない…はず。
純米にせよアル添にせよ大吟醸(米をかなり削る)造りが主流の鑑評会に出品するのは大変だったのでは無いでしょうか。(とは言え一部吟醸クラスもあるようなのでありえなくはない?)

蔵の公式HPに書いていたので使用は間違いないはずですが…が
なぜか「令和3年鑑評会でも金賞」みたいに書いてるんですよね…受賞していないハズなんですが、この情報源(公式HPだけど)本当に大丈夫?


◯広島県(金賞受賞10蔵中3蔵)


広島県も地味に頑張ってます 『千本錦』

令和3酒造年度に金賞を取った相原酒造株式会社は引き続き『山田錦』との併用、金光酒造と柄酒造は『千本錦』単体で金賞受賞。
栃木県の『夢ささら』のように頑張っている蔵は頑張っている広島県。

賀茂鶴酒造のように「広島県産の米にこだわっています!」とか宣伝しているのに『山田錦』だったり(広島県産『山田錦』かもしれないけど)、過去に『千本錦』使っていたのに今はもう『山田錦』を使用している白牡丹酒造とか
裏切り※が目立った広島県ですが、そもそも広島県で多く生産されていた八反系・雄町系の大心白品種では大吟醸造りが厳しいからと登場した『千本錦』。
地元産でも挑戦できるようにと登場した『千本錦』。
やはり目を付ける蔵はちゃんと目を掛けてくれて、頑張っている蔵は頑張っている!

※何度でも言いますが、世間一般の普遍的な評価で「地元の品種にこだわって使用するのが偉い」とは毛頭思っていませんが、私個人がそういうのが好きなんです。



まとめ

さて「新酒鑑評会に向けた日本酒」の原料に使われている品種をピックアップしてみました。
鑑評会は「美味しい日本酒はどれか」と言うよりは「教科書通りの日本酒を作れるか」という性質が強いと言われますので、酒米としての評価もまたほんの一面を映しているだけかも知れませんが、継続していくことで酒蔵の思考も見えてくるものがあるのでは無いでしょうか。

令和2酒造年度に比べ、令和3酒造年度は『山田錦』以外の使用蔵割合が5%ほど低下しました。
今回の調査で「R2酒造年度に実は別品種を使っていた蔵」も2~3蔵ありましたので、実数としてはもう少し減るかも知れません。
酒蔵が公式に発表していれば助かるのですが、大半が「金賞受賞酒を販売している酒屋」が情報源になるので、正直精度としてはかなり怪しいのが3年目を迎えても未だ課題です。
冒頭に述べたとおり、故意か否かは判断尽きませんが、いい加減な情報発信をして売っている酒屋も目立ちますから、果たして上記の調査内容も本当かどうか…神のみぞ知る。
「金賞受賞酒の品種情報を公表すると不公平だから」とかいう種類総合研究所の謎主張が変わることを祈るしかありませんが…

日本酒業界全体の傾向として、原料の品種についての情報発信に特にこだわらない風潮があるのかも知れませんが、こだわらないならまだしもいい加減ともなるとこれはもう問題なのでは?(と言ってもどの業界でもあるのでしょうけども)
と、一個人が言ったところで変わらないのでしょうし、調べられる範囲で状況把握は続けていきたいです。


最後に何度でも言います。
他県産の『山田錦』で日本酒を作ることが無条件で悪ではありませんし、
地元の酒米を利用して日本酒を作ることが無条件で偉いとは思いません。

個人的に好きなんだ!
それだけなんだ!



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