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2021年1月16日土曜日

【酒米】山形酒49号~出羽燦々~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『山形酒49号』
品種名
 『出羽燦々』
育成年
 『平成6年(1994年) 山形県立農業試験場庄内支場
交配組合せ
 『美山錦×華吹雪』
主要生産地
 『山形県』
分類
 『酒造好適米』

さんさんと輝く出羽燦々!よっと♪


どんな娘?

山形県における酒米っ娘の長女。

かつては山形県の酒造を支えるという大役を一手に担っていた働き者。
他県の品種と比べれば平凡だったかもしれないが、他県出身者では馴染めなかった山形という土地でその能力を十二分に発揮して活躍した。

ひとりぼっちの時代も特に苦ではなかったが、最近は妹たちが増え、とてもうれしく思っている。
現在のやや奔放気味な発言も雪女神が生まれたからこそ。
本来自分が至らないところまでも何とかしようと頑張っていた頃に比べて、精神的な余裕が出来た証左です。


概要

米どころにして吟醸王国である山形県において、初の本格的酒造好適米となった『出羽燦々』の擬人化です。

「山形県が生んだ酒造好適米にふさわしく、印象の強い名前にしよう」との方針で、山形県、農協、経済連、酒造組合連合会などにより200点以上の品種名候補が集まり、東北芸術工科大学からもアドバイスを受けながら検討が進められました。
その結果、山形を表す「出羽」、そしてそれがキラキラときらめく様子を表す「燦々」を組み合わせ『出羽燦々』と命名されました。
山形の酒への熱い想いが込められています。

令和の今でこそ『出羽燦々』『出羽の里』『雪女神』の3姉妹を要し、さらに掛米用品種として『出羽きらり』を揃える山形県ですが、昭和60年(1985年)頃における酒造好適米の生産は非常に微々たるものでした。
当時は、昭和42年(1967年)に県奨励品種に採用された『改良信交』が細々と(3ha程度)作付けされているに過ぎず、出回り量も10tあまりという、稲作が盛んな山形県では信じられないほど小規模なものでした。
その一方で県内の酒造用原料米は不足しており、代用として『はなひかり』『キヨニシキ』『はなゆたか』などの一般食用米が用いられていました。
そのような状況下、「山形県酒造適性米振興対策協議会」が発足し、酒米について「県外品種の試作」「栽培技術の改善」「生産と需要の調整」等の活動が行われます。
その成果として『改良信交』に代わり長野県育成の『美山錦』が県優良品種として採用され一時206ha(1991年時)まで増えますが、倒伏しやすいという栽培上の欠点と、粒重や心白発現率の年次差・地域差が大きい(山形県の気候条件に『美山錦』があまり適していない)という問題がわかるにつれ、作付け面積は減っていきます(140ha/1994年)。
山形県産日本酒についても同時並行で質の向上活動(後述「山形讃香」)が図られ、その活動は確実に実を結び、質の向上が成果として現れながらも、肝心の原料米については他県に頼るところ大という状況でした。
このような背景の中、「県産酒は山形県のオリジナル品種で」というのが酒造関係者にとって悲願になっていったと言われます。
生産農家にしてみれば栽培しやすくて経済的メリットのある、酒造関係者にとっては良質な酒造特性のある優れている、そんな酒米品種が切望されていました。
そんな切望された”山形県オリジナル酒米品種”として平成7年(1995年)に山形県優良品種に採用されたのがこの『出羽燦々』です。
令和元年度より優良品種から奨励品種へと格上げとなりました。(関連コンテンツ参照)


「やわらかく、端麗で、きれいな酒質」の日本酒が出来るとされています。
『雪女神』が大吟醸用と位置づけられた今では「吟醸酒向け」とされる『出羽燦々』で、事実、育成当初想定されていたのは「搗精歩合75%程度の一般清酒用」ではありますが、登場当初から彼女は大吟醸酒にも用いられています。
ただしやはり試験場の評価は「心白の大きさから50%以上の高度精白には問題が残る」とされています。

育成地に於ける熟期は「中生」で『美山錦』よりも2日ほど遅いです。
草型は穂重型で、収量は試験時に589kg/10aと多収です。
稈長は『美山錦』よりも5~6cm短いながら長稈の部類(約85cm)ですが、耐倒伏性は「中」で、『美山錦』よりも倒れにくくなっています。
耐冷性は「やや強」~「強」(当時:現在の「中」相当)の判定です。
葉いもち病抵抗性は「やや弱」、穂いもち病抵抗性は「中」とされています。
真性抵抗性遺伝子型は【Pi-a】と推定。
白葉枯病抵抗性も「やや弱」で、当初の育種目標にはないので仕方ないと言えば仕方ないのですが、病気全般には強いとは言えません。
玄米千粒重は25~26gで『美山錦』よりも1g程度重くなっています。
大粒・良質で心白(眼状心白が主と推定)の発現も良く、蒸米吸水率など酒造特性の優れた品種です。


【DEWA33】と【山形讃香】

1970年代後半より山形県全体の酒の品質向上を目指し、大吟醸酒共通銘柄「山形讃香」の開発や、酵母の研究開発を行い、品評会での入賞率を飛躍的に増加させることに成功した山形県の酒造業界でしたが、「県独自の酒米」については依然として不在状態でした。
そんな待望されていた『出羽燦々』という山形県独自の酒造好適米の登場を受けて、山形県酒造協会では純米吟醸酒の共同銘柄「DEWA33(でわさんさん)」を設定します。
「やわらかくて、巾がある」そんな「DEWA33」の認定基準は以下のとおり

・『出羽燦々』100%使用
・純米吟醸酒(精米歩合60%以下 アルコール添加無し)
・精米歩合55%以下(吟醸酒の要件よりもより低い精米歩合)
・山形酵母を使用
・山形オリジナル麹菌「オリーゼ山形」使用

以上の基準に適合し、厳正な審査会を通ったものが「純正山形酒審査会認定証」を貼られ、「DEWA33」を名乗ることが出来ます。
イメージソング「DEWA33ソング」もあるそうなので是非聞いてみては?

また精米歩合40%の『出羽燦々』を使用する純米大吟醸酒「(新)山形讃香」もあります。
前身は昭和59年(1984年)当時の知事の提言に始まり、昭和60年(1985年)10月にデビューした大吟醸酒の共同銘柄「山形讃香」です。
県内蔵元の大吟醸酒の中でも審査に合格したものだけが名乗れるのがこの名称「山形讃香」であり、この名称を目指して大吟醸酒の質向上や、今まで吟醸酒に取り組まなかった蔵の新規挑戦といった動きが盛んになったそうです
そのおかげをもってか「山形讃香」誕生以降の昭和61年(1986年)あたりから全国・東北の鑑評会における金賞受賞数が急増し、金賞多数の常連県となることができました。
ただ、この当初の「山形讃香」はその要件が「大吟醸酒(アルコール添加)」でしかなく、使用米も『山田錦』が殆どだったそうです。
山形を冠するお酒に県外産の『山田錦』が使われているのはどうなのか・・・とやはり疑問の声は上がったようで、平成13年(2001年)より要件を「『出羽燦々』使用」「純米大吟醸(アルコール添加無し)」に変更したそうです。
※アル添(吟醸・大吟醸)が悪、純米(アル添無し)が正義、という風潮も一部にはあるようですが客観的に見てそんなことはない・・・と思います。(少なくとも管理人はアル添が悪とは思っていないです)

こちらもイメージソング「山形讃香んだんだ!」がありますよ!

また、令和4年(2022年)3月11日に21年振りの「山形讃香」リニューアルが発表されています。
情報を統合すると
原料は、優良酒米コンテスト(主催:山形県酒造適性米生産振興対策協議会)で上位入賞した農家が栽培した『雪女神』。
醸造する蔵は、山形県の品評会における「雪女神」精米歩合40%以下の純米大吟醸酒において、上位の成績を獲得した数社。
と、日本最高峰を目指す、山形県酒造の粋を集めた純米大吟醸酒とすべく、条件がさらに厳格化されています。
21年間主役を務めた『出羽燦々』はこれでお役御免となったわけですが、確実に次の世代へバトンは引き継がれました。



育種経過


客観的に見て、あまり優良な日本酒の生産地とは言えなかった山形県でしたが、各種取り組みにより山形県産日本酒の質の向上を目指し、それは実っていくことになります。
しかし、県オリジナルでかつ良質な酒造用米には恵まれず、何とかしようと他県開発の『美山錦』を導入したものの、山形にはあまり馴染まず・・・
山形にも独自の優秀な酒米品種が欲しい、そんな頃、山形県立農業試験場庄内支場では昭和59年(1984年)から多用途向け品種開発の一つとして酒米の品種育成を実施しており、大粒・低蛋白という酒米の基本を抑えつつ、地域適応性を備え栽培特性(耐倒伏性)に優れる品種の開発を目標に昭和60年(1985年)から『出羽燦々』となる品種の育成が開始されました

母本は『美山錦』、父本は『青系酒97号』(後の『華吹雪』)として昭和60年8月6日剪穎法により人工交配が行われます。

◇母本の『美山錦』は長野県で育成された品種です。山形県においては「心白の多い大粒の酒米品種」であることから、『改良信交』に代わる品種として有望視されていました(なおその後の実態)
米の品質は高く評価されていたものの、長稈で倒伏しやすい品種です。

◇父本の『青系酒97号』はこの交配翌年の昭和61年(1986年)に『華吹雪』と命名される系統で、青森県で育成されました。
早生で短稈、大粒で心白が大きく、この時点で既に青森県から極有望視されていた系統です。

この交配によって得られた種子は27粒(『庄交85-44』)。
ちなみにこの時、母本父本を逆にした交配も試みられたそうですがそちらについては稔実しなかったそうです。

翌昭和61年(1986年)は世代促進温室を用いてF1世代~F3世代まで集団養成を行います。
F1世代は昭和61年(1986年)2月から5月にかけて13個体を養成、採種。
F2世代は同年5月から9月にかけて約720個体を選抜せずに養成。
F3世代も同じく無選抜で約720個体を同年10月から翌昭和62年(1987年)1月にかけて養成します。
続いて昭和62年(1987年)、F4世代について圃場に1,200個体を栽植し、個体選抜が実施されます。
この集団での立毛概評は「熟期が早生から中生が主体」「長稈」「熟色やや不良の個体多し」でした。
この中から圃場においては「中稈~やや長稈」に加え「熟色が良い」個体を選抜し、最終的には室内選抜において「大粒」であり心白発現程度が「中~やや多い」とされた良質な20個体が選抜されました。

そして昭和63年(1988年)F5世代より単独系統選抜を行います。
前年選抜の20個体を20系統として、1系統当たり36個体を栽植し、各種の特性調査を行います。
この中から熟期は「中生」、稈においては「中長稈」かつ「強稈」、そして「大粒」で心白発現率が「多い」である5系統各4個体を選抜し、翌年の系統群に設定することとします。

平成元年(1989年)F6世代において前年選抜した5系統に『庄酒788』~『庄酒792(後の『出羽燦々』)』の系統番号を付与し、5系統群20系統を設定、選抜を実施します。
生産力検定予備試験及び特性調査(耐冷性、品質)を実施し、心白の大きすぎる『庄酒790号』系統群が、この時点で廃棄されます。
また、この年より山形県工業技術センターで酒造適性試験、試験醸造も開始され、玄米の外観や心白発現率だけでは判断できない酒造適性について調査が行われています。(結果、『美山錦』以上の酒造適性を持つものと評価)
平成2年(1990年)F7世代は生産力検定本試験、系統適応性検定試験並びに特性検定試験に供試されます。
4系統群20系統が設定され、収量、品質の比較的優位であった『庄酒792号』の1系統群が選抜され『山形酒49号』の地方系統名が付与されます。

平成3年(1991年)F8世代では奨励品種決定調査で地域適応性の検討が行われます。
この世代以降は毎年1系統5個体を選抜・採種し、翌年1系統群5系統とすることで固定度を上げていきます。
F8世代では奨励品種決定予備調査に供試されますが、『美山錦』と比較して本場及び庄内支場、置賜分場では「多収だが品質がやや劣る」、最北支場では「収量は並だが品質で優る」と評価が分かれ、他県(岩手・秋田・宮城・福島・栃木)に於ける調査結果でも品質については良・不良の判断が分かれていました。
この年は長稈になったことによる倒伏の懸念と、千粒重が軽く心白の発現も少ない、そして品質も劣ると判断されたことから奨励決定予備調査として再検討されることになります。(秋田県・福島県では検討打ち切り決定。岩手県は継続としたが2年目実施無し。)

平成4年(1992年)F9世代、本場・庄内・置賜・最北各地での試験で概ね収量・品質共に『美山錦』並か優り、耐倒伏性に優れているとの評価を受けます。
県外における調査では、宮城県で「心白が大きすぎる」との理由で調査打ち切り、栃木県では概ね好評価でしたが基本調査へは進まず、実質打ち切りとなりました。

平成5年(1993年)F10世代から山形県奨励品種決定基本調査に供され、一応各試験場で収量や品質が並か優る(『美山錦』比)とされ「やや有望」と評価されますが、この年はまさに平成の大冷害となった低温年次で全般的に酒米の品質が不良となっており、明確な評価が下せないとの理由で基本調査を継続して検討することとなります
またこのF9~10世代間に工業技術センターでの試験醸造が行われており、「やわらかく、端麗で、綺麗な酒質」との良好な官能評価も受けました。

平成6年(1994年)基本調査2年目となるF11世代では、前年と打って変わっての高温条件下での試験となり、全試験場で収量・品質共に『美山錦』に優るとされ、本場・庄内・置賜では「有望」、最北支場で「やや有望」とされ、初年度の予備調査から年々評価が上がった結果となりました。


以上の試験の結果、酒造好適米品種として有望であると認められ平成6年(1994年)に種苗法に基づく品種登録出願が行われます。
平成7年(1995年)2月に山形県主要農作物奨励品種審議会にかけられ、同年4月山形県優良品種に採用されました。



系譜図

山形酒49号『出羽燦々』系譜図


参考文献

〇酒米新品種「山形酒49号」の育成:山形県立農業試験場研究報告
〇「山形酒49号」の特性:東北農業研究
〇水稲品種「山形酒49号」の栽培技術の確立:東北農業研究
〇山形酒造組合ホームページ:https://yamagata-sake.or.jp/publics/index/75/
〇山形県における酒米開発の取り組み:http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_38.pdf
〇山形県酒 造組 合の需要 開発活動:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/97/4/97_4_236/_pdf



関連コンテンツ






2020年5月10日日曜日

種子法廃止に伴う各都道府県対応【奨励品種・優良品種・認定品種とは?】


あ…あれ?
つや姫
ほ?
出羽燦々と出羽の里が優良品種から…削除されたそうなんですが…
(令和2年4月公報)
え?
安心してください、雪若丸
優良品種からの削除は、奨励品種への追加の為ですよ
ああ成程…そういうことでしたか
いや~なんとも重責だね
雪女神と肩を並べることになりました
研鑽していきたいですね

…これで山形県で酒米の優良品種枠は私ひとり
行き遅れ、かな

(?…行き遅れ?)
…糯米に関しては…三人仲良く一緒に優良品種指定です…
だねー
ちなみにもう一人は私だね
ふふふふふ!
なんだかんだで私も認定品種にはちゃんと名前上がっているもんね!
私も山形県なのにさりげなく残っていますよね…(認定品種)
ところでさ

はい、なんですか?つや姫
「奨励」とか「優良」ってなにかな?
それと「認定」?
(ええ…?)
…と、ここまでが前振りだ
(身も蓋もない…)
話題としては一周遅れの感もあるけれども
廃止された種子法関連の話になるわね



明治・大正・昭和と食糧難の時代

まず緒言。
種子法の対象となるのは主要農作物である稲(コメ)、大麦、はだか麦、小麦及び大豆といった、野菜を除いた作物となります。(「食料」というより「食糧」が対象)
日本のソウルフードがお米であることからも、実際問題稲に対しての比重が非常に重いものになっていると言えるでしょう(多分)


そんな「お米」に視点を絞ってお話していきます。


平成から令和の時代となり「米余りの時代」となって久しいですが、戦前(太平洋戦争)からして余裕のある食糧生産が出来るような状況ではありませんでした。

明治期から大正期にかけての人口の急増(明治年間に約2倍に増)を受けて深刻な食糧不足が起き、大正7年(1918年)にはコメ騒動が起きるほどでした。
農地の新規開拓や農地の整備への取り組みで、明治初期~明治30年前後までは国内の増産でまかなえていた国民の食糧消費量増加は、以後輸入(朝鮮米等)にその補填を頼っていくことになります。

具体的な数字を挙げてみましょう。
①明治11~15年(1878~1882年)において日本国内の米総消費量は約2,877万石。
これが四半世紀後の大正初期の②大正2~6年(1913~1917年)には約5,677万石と、消費量は約2倍にまで増えます。
この増加傾向は続き、③昭和8~12年(1933~1937年)には約7,447万石となりました。

①の段階では消費に対する国内生産量は100%を超えており、年々増加する消費量に対して生産量も同じく伸びていきます。
この均衡が崩れ始めたのが明治30年前後で、国内生産量も増えているものの消費量の増加に追いついておらず、大正時代までは全消費量の3~9%程度を輸入に頼っており、②の時は全体の5%が輸入米です。
③の時代には国内消費量の約17%が輸入となっていましたが、それでも国内生産量は①の時代の約2倍にまで増えているんです。(約2,899万石⇒約6,157万石)

食糧生産人口の絶対的比率の減少などもあったようですが、品種改良や農地整備による増産以上に、人口増加が急激だったことがうかがえると思います。


種子法とは?~昭和27年 主要農作物種子法~


このように国内生産量の不足、輸入米(朝鮮米)に消費の一部を依存するなどの問題など、根本的な食糧不足問題を解決できずに昭和16年(1941年)に太平洋戦争に突入した日本。
昭和20年(1945年)に敗戦を迎えるころには、耕地の荒廃、農業労働力の不足といった問題に加え、敗戦により海外統治領からの食糧輸入もままならなくなるなど、同年10月には「1,000万人餓死説」が出るほどの食糧危機に見舞われていました。

焦土と化した日本国は戦後復興に向けて歩み始めますが、こと食糧危機の克服については「戦前への回復」ではなく「新たな食糧供給体制の構築」が必要とされたのです。


そして昭和27年(1952年)、食糧増産の政策の一環として「主要農作物種子法」が制定されます。
この法律は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査その他の措置を”都道府県が責任をもって”行うことを目的としています。


要は(と言うほど要約できませんが)、稲・麦・大豆について、「①普及すべき優秀な品種の選定」「②”優良な種子の生産”の指導・体制づくり」を義務付けるものです。
新品種の開発や、品種の権利の保障とは関係なく、あくまでも「種」の生産について優先品種の選定とそれを生産して供給できるようにするための法律と言えます。
それと明文化はされていませんが、公的資金を投入して種子生産されるために、農家にとっては民間で生産するよりは安価な種子を手に入れることが出来ることが出来ます。


時代は流れ、「米が足りない時代」から「米が余る時代」になりました。
政治家の方の色々な思惑もあるのでしょうが、食糧難解決のために制定されたこの法律は”役目を終えた”とされるのも致し方ない情勢かとも思います。


この種子法については、平成29年(2017年)3月23日に第193回国会において、「主要農作物種子法を廃止する法律」が成立し、平成30年(2018年)4月1日をもって廃止されました。

ちなみに「種苗法改正」と並んでこの「種子法廃止」もデマや見当違いの批判の巣窟です。
元農水大臣(残念ながら本当)である山田正彦氏が結成した「日本の種子(たね)を守る会(笑)がその筆頭ですが、「新品種の開発が出来なくなり多様な品種が店頭から消える」とかおっしゃってますね。
あくまでも「種子法」は奨励品種の指定や、「種子の生産」(新品種の開発ではない)の体制構築を義務付けたものなので、品種の開発や多様性とは無関係です。
とかとかいろんなこと言ってますこの「日本の種子を守る会(笑)」は完全に妄想レベルの恥ずかしいお話ばかりです。
ちなみに入会費一口2,000円です。
SNSの反応見てるとお金払っている人結構いるんでしょうね…新手の詐欺商法にご用心を
※多様な意見は大事ですが、「ネタを守る会」とやらの事実を無視した誇大妄想は意見とは言いません

しかし
ネット検索でまともでない記事の方が多いのは何とかならないものか…

因みに後述しますが、種子法の廃止に伴い、主要各県が代替制度の整備を行う中、真逆の方向、真っ先(多分)に種子生産の義務を民間へ移行したのが大阪府、奈良県、和歌山県です。
種子生産に関する審査及び証明業務を種子協会へ移管しており、当初はそのせいで種子代が値上がりする…みたいな記事もありましたが、実際どうなったんでしょうか?(未確認)
それよりも
【種子法廃止 附帯決議第2項】
「主要農作物種子法の廃止に伴って都道府県の取組が後退することのないよう、都道府県がこれまでの体制を生かして主要農作物の種子の生産及び普及に取り組むに当たっては、その財政需要について、引き続き地方交付税措置を確保し、都道府県の財政部局も含めた周知を徹底するよう努めること。」

これに反して何無責任なことやっているんだ?と言う声もあるとかないとか。
(ただ付帯決議には何の強制力もないんですよね…)


種子条例の制定(山形県の場合)

デマや見当違いの批判も含めて、多くの議論を巻き起こした「種子法廃止」でしたが、特に農業が盛んな県等で、種子法に代わる独自の条例の制定が行われました。

「稲、麦、大豆の種子を供給する義務」を肯定していた法律がなくなってしまったので、これに代わる条例を制定することで「今後も種子供給体制に(都)道(府)県として責任を持つ」ということの意思表示とも言えるでしょう。

【2020年5月10日現在】
廃止年の平成30年(2018年)に真っ先に条例制定に動いたのは新潟県、埼玉県、兵庫県の3県。
山形県もそれに続きます。
次いで平成31年~令和元年(2019年)に北海道、福井県、富山県、岐阜県、鳥取県、熊本県、宮崎県で条例を施行。
次に令和2年(2020年)宮城県、石川県、栃木県、茨城県、長野県が施行。
他、岩手県、千葉県、群馬県、愛知県、滋賀県、三重県、広島県、鹿児島県で条例制定手続きを進行中、検討中とのことです。

青森県、秋田県、福島県、京都府、岡山県、島根県、山口県、香川県、高知県、愛媛県、大分県、福岡県、佐賀県、長崎県では「要綱」や「要領」の形で種子法に準じた取り組みを進めていくようです。
ただあくまでもこれらは行政上の内規の様なものなので、法的根拠は持たないままになるわけですね。

そして

種子生産をやめていた東京都を除いて
無対策は神奈川県、山梨県、静岡県、徳島県、沖縄県(情報求)
明確な民間委託大阪府、奈良県、和歌山県と言った状況ですね。(と、とりあえず書いておきますが、どうやら批判している人たちがだいぶきな臭い感じなので皆さん情報提供お願いします)





話は我らが山形県に戻って
主要農作物の優良な種子の将来にわたる低廉かつ安定的な供給を図るため「山形県主要農作物種子条例」を制定し、平成30年(2018年)10月16日に施行されました。

ということで、山形県ではこの「種子条例」に基づき種子の生産に力を入れる品種として「奨励品種」「優良品種」「認定品種」の三つを設定しているのでした。
これは都道府県により違うようですので、下記はあくまでも山形での定義としてご覧ください。


最後に 奨励・優良・認定の定義


※山形県における定義

1 奨励品種
 生産・流通対策上、主力品種として奨励する品種

2 優良品種
 特定地域を対象とした、もしくは作業体系上必要とする組み合わせ品種、もしくは、生産・流通対策上、奨励品種を補完する品種

3 認定品種
 奨励品種及び優良品種を補完する品種
 将来的に奨励、優良品種として期待できる品種


まぁ上に行くほど重要な品種として県が認めた、と言う認識でいいんじゃないでしょうか?(てきとー)
今まで上から二番目「優良品種」指定だった『出羽燦々』と『出羽の里』が、最重要の「奨励品種」になりました…ということで

兎にも角にも
昇進おめでとうだゼ!!

出羽燦々、出羽の里、奨励品種指定オメデトウ!




参考文献


◯米穀市場の近代化 -大正期を中心として-:持田恵三
◯[農業史研究 第36号 2002]戦後食糧輸入の定着と食生活改善:白木沢旭児
◯山形県農林水産技術会議資料:山形県
◯各都道府県公式ホームページ








2015年10月6日火曜日

イラスト『米っ娘運動会』

題材
 『運動会』

登場品種
 越南17号     『コシヒカリ』
 西海糯118号  『ヒヨクモチ』
            『山田錦』
 山形112号  
 山形97号      『つや姫』
 山形84号     『里のゆき』 
 山形35号      『どまんなか』
 熊本2号      『森のくまさん』
 山形酒49号   『出羽燦々』
 山形酒86号   『出羽の里』
 秋田糯45号   『たつこもち』
 上育糯417号  『風の子もち』


H27.10月作品
ようやく投稿が作品が追いつきました(大した数はありませんが…)。


赤組(粳米っ娘)&青組(酒造用好適米っ娘)&黄組(糯米っ娘)
悩ましいのはここに居るはずだった緑組(飼料用米っ娘)達です…
影も形も見えません…


芸術の秋、食欲の秋、読書の秋、実りの秋、そしてスポーツの秋。
健全な米っ娘達も用途に分けて大運動会です。

粳米っ娘はともかく、糯米と酒造好適米達は選手数が足りなさそうですから、糯米には『ミルキークイーン』のような低アミロース米が、酒造好適米には『出羽きらり』のような両用米や酒造に使われた経験のある粳米達が駆り出されているようです。
『里のゆき』が鉢巻をしていないのも、場合によっては糯米の競技に出るから?(単に作者が描き忘…)

いつか赤組の大将は『つや姫』になって欲しいです。(今回の大将はH25検査数量1位の品種達)

2015年10月5日月曜日

イラスト『米っ娘海!雪女神!』~H27~

題材
 『海』

登場品種
 山形97号    『つや姫』
 山形112号
 山形酒49号  『出羽燦々』
 山形酒86号  『出羽の里』
 山形酒104号 『雪女神』
出羽の里「大吟醸用米『雪女神』ついに登場です!」
出羽燦々「よろしくお願いするです!」

山形112号「私は!?」


山形酒104号『雪女神』の名前決定の時に描きました。
山形酒造適正米っ娘三姉妹、『出羽燦々』、『出羽の里』、『雪女神』の擬人化です。
同じくデビューしたのに名前の決定が遅れているばかりに山形112号は後ろで小さい…ごめんなさい…

酒造好適米っ娘達は普段着が水着なので白黒水着。
『つや姫』と『山形112号』はあくまでも粳米なので水着が色付きとなっています。


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