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2020年12月13日日曜日

【糯米】奥羽糯277号~ヒメノモチ~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『奥羽糯277号』(『水稲農林221号』)
品種名
 『ヒメノモチ』
育成年
 『昭和47年(1972年) 東北農業試験場(岩手県盛岡市)』
交配組合せ
 『大系227×こがねもち』
主要生産地
 『岩手県、山形県、千葉県』
分類
 『糯米』

跳っねるはう~さ~ぎ~
う~さ~ぎは~・・・あー・・・うん、ヒメノモチ、だよ


どんな娘?

いつも眠たそうにしていると思われているが、単に垂れ目なだけ。
ただ普段のけだるそうな話し方がよりいっそう”眠そうキャラ”を後押ししている。
物事に対してややルーズで、てきとーな性格だが、ある意味柔軟な対応が出来、こがねもちと良いバランスを保っている。

東北の糯米っ娘達にとっては話しやすい身近なお姉さんになっている。


概要

東北部を中心に関東、近畿、中国地方と幅広く作付され、長らく糯米生産量第2位の地位を占める『ヒメノモチ』の擬人化です。
昭和58年(1983年)に作付面積第1位となってから、最後に1位になったのが平成元年(1989年)。
それ以後2位と3位をふらふらしながら、統計変わって平成18年(2006年)より生産量第2位となっています。

・”姫”のように美しいこと
・”ヒメ”のつく植物は短生(短稈)であること
・盛岡市郊外の山姿の良い“姫“神山
にちなんで『ヒメノモチ』と命名されました。

その実態としては前代主力の『こがねもち』を早生化し、いもち病耐性を導入したものと言えます。
東北地域で生産されていた『こがねもち』は晩生に過ぎ、天候の影響を受けやすく、葉いもち病にも弱いために安定生産の面では難があったことから、熟期が早く(早生・中生)、耐病性の優れた糯品種が望まれ、生まれた『ヒメノモチ』はその役目を見事に果たしました。

一番最初の奨励品種採用県であり、生産の中心である岩手県によればもち米にしてはあっさりとした味わいで、おこわなどに向いている…とか
糯品種自体の需要が減る中でも、変わらぬ生産量があることからもその需要の高さが窺えます。

出穂期は『こがねもち』よりも10日ほど早く東北中部では「中生の早」にあたります。
稈長は『こがねもち』86cmに対して81cm程度とやや短稈化しましたが、耐倒伏性は「中」と同程度にとどまりました。
しかしながら『こがねもち』のような極端な挫折型の倒伏はしにくいために、倒伏の被害は軽微になります。
比較的穂が大きい偏穂重型で、脱粒性は「易」です。
稃先色は「黄白(白)」で通常粳品種との外観による判別は出来ません。
試験当時で各県の対照品種よりも多くの収量を示す事例が多く、概ね1割弱程度の増収が見込めました(東北農業試験場平均565kg/10a)が、晩生の『こがねもち』にはやや劣る試験結果も出ています。
東北農業試験場におけるいもち病の圃場抵抗性評価は「中」程度で、占有する菌のレースによって耐性も大きく変わる試験結果が出ています。
真性抵抗性遺伝子型は「Pi-k」と推定され、山形県(2007年)では葉いもち病耐性・穂いもち病耐性共に「強」と評価されています。
白葉枯病と紋枯病に対する耐性は「やや弱」~「中」とされています。
耐冷性は「中(当時基準)」と推定され、東北地方中南部の主要品種(当時)とほぼ同じでした。(令和基準で耐冷性は「やや弱」)

伸し餅の白さは「3」(1:白い~5:黒い)、伸し餅硬度は2.8kg/㎠。
食味は「上下」と判定されています。


育種経過

昭和37年(1962年)に東北農業試験場で『大系227』を母本、『こがねもち』を父本として人工交配が行われます。
同年、冬期間に東北農業試験場の温室においてF1世代を栽培して世代促進を行います。

翌昭和38年(1963年)、F2で486個体の中から糯個体のみを選抜し、164個体が残ります。
その集団を北陸農業試験場に依頼してF3世代からF4世代にかけて世代促進を行います。

F5世代は東北農業試験場に戻り、穂別系統として500系統3,500個体を栽植します。
固定度、受光態勢良好な草型に加え、短稈でいもち病抵抗性「強」を目標に選抜し、23系統91個体が残ります。
F6世代以降系統育種法により選抜固定を図ります。
昭和41年(1966年)F6世代は1系統群4系統、1系統2列・30個体(23系統群91系統として2730個体)として播種、畑晩播によるいもち病耐性検定(C菌型圃場)も行われます。
系統群の固定度、草型、稈質、いもち病抵抗性などにより選抜し、7系統群および固定度の不安定な1系統群から3系統を選抜し、計8系統群10系統40個体を選抜します。
このF6世代におけるいもち病耐性は、母本の『大系227』よりは弱いものの、『こがねもち』よりは遙かに強い抵抗性を示していました。
この時点での糯品種としての品質調査では天候不順もあってか残存系統全て「中上」との評価でした。

昭和42年(1967年)、F7世代において、『大系1068』~『大系1077』の系統名を付し、生産力検定試験及び特性検定試験を行います。
前年のF6世代における出穂期は8/14~8/22の間にばらけていましたが、後に『ヒメノモチ』となる系統はこの時点で最も出穂期が早いものでした。
F7世代10系統群の中から、その『ヒメノモチ』となる系統を含む最も出穂期の早い3系統が選抜され、『大系1075』『大系1076』『大系1077(後の『ヒメノモチ』)』が残されます。
無論、出穂期のみならず稈質やいもち病抵抗性への耐性を考慮した上での選抜です。
昭和43年(1968年)F8世代はこの3系統群で生産力検定試験及び特性検定試験を行い、3系統何れも優秀だったものの、草型・熟色良く難点が少ないと認められた『大系1077』が残され、昭和44年2月に『奥羽糯277号』の地方系統名が付されます。

同昭和44年(1969年)、F9世代において関係県に配布の上で、地方適否の検討に入ります。
その結果極めて有望と認められ、昭和47年(1972年)5月に『ヒメノモチ』と命名、『水稲農林糯221号』に登録されました。
昭和47年度は岩手県でのみ奨励品種に採用されています。

その後多くの県で採用されていきます。

育成当初の評価は、耐倒伏性が不十分(『こがねもち』と同程度の「中」)であり、おまけに穂発芽性も「易」のまま改善しなかったことで、「より改良が必要」とされていた『ヒメノモチ』でしたが、半世紀過ぎた令和現在でも主力として現役で頑張っています。



系譜図


奥羽277号『ヒメノモチ』系譜図



参考文献

〇水稲新品種「ヒメノモチ」の育成について:東北農業研究報告
〇耐冷性が強く、餅が白い良食味の水稲新品種候補「山形糯87号」の育成:農研機構https://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H17/suitou/h17suitou04.html




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2018年1月7日日曜日

”岩手金銀” 『金色の風』&『銀河のしずく』の違い ロゴにこめられたメッセージ

岩手県が高価格帯ブランド米への切り込みを狙う”銀・金コンビ”
岩手107号『銀河のしずく』&岩手118号『金色の風』
お姉さんの岩手107号『銀河のしずく』は中価格帯、妹に当たる岩手118号『金色の風』は魚沼産コシヒカリや山形県産つや姫等の高価格帯のブランドへの参入を目指しています。
…姉妹関係から考えると”銀金コンビ”なんだけどもやっぱり語呂としては”金銀”ですよね…でもやっぱり”銀金コンビ”と呼ぼう!

『金色の風』  :【ほどよい粘りとふわりとした食感、豊かな甘み】←準低アミロース系
『銀河のしずく』粒が大きく、粘りが程よくかろやかな食感、冷めても変わらない美味しさ

北海道の『ゆめぴりか』のような柔らかい食感が好きな方は『金色の風』も口に合うかもしれません。
そんな『金色の風』が重い…という方には『銀河のしずく』、となるのかな?



そんな二人のロゴがコチラ。


同じような色の配列がありますね。(描くときめんどくせー!!
これ、それぞれの色に意味があるそうなんです…が

同じ岩手県米なので、意味もほぼ同じなのですが微妙に違うところもあります。

ということでその一覧が下の通り。

ポイント意味金色の風銀河のしずく
ハイテク最新の科学技術を用いて開発-
改良白さと良食味を追求した品種改良-無色
太陽稲の生長を促す輝く太陽
銀河美味しいお米を育む銀河の夜空灰色
澄んだ空気、爽やかに広がる夜空濃い水色濃い水色
大地元気な稲がすくすく育つ豊かな大地
肥料美味しいお米を育てる肥料設計黄緑
清らかな水をたたえるたくさんの川水色水色
たい肥や稲わら等による土づくりの徹底橙色茶色
お米づくりに関わる人々の愛情桃色桃色
豊かな稔り黄金色に輝く稲穂の波黄色黄色



えと…なんで統一しなかったんですか?
”肥料”と”土”は解説が一緒なのに色が違いますよね?
ん~…
なんで、と言われてもね?
私と銀河のしずく、あくまでも別人ですから…
価値観の相違、とでも言いましょうか
と言うか貴女方は無駄に意味を盛り過ぎですのよ
えぇ…

………
(自虐…でしょうか?)
…ん?
自虐か?
あ…(言ってしまった…)
…新之助、雪若丸?
ちょっとこちらに来なさいな
おう?
いいぜ、何の用だ?
うぅ…(とばっちりです…)
もう…およしなさいな…








本日『金色の風』実食しました。
炊飯器を買ったらば約3合分のお試しセットがついてきていました。
で…うん…
柔らかすぎて個人的には…というか完全に水加減ミスしました…
2,3回炊いてみないと適正な水加減ってわからないんですよね…

2017年12月20日水曜日

【粳米】岩手107号~銀河のしずく~ 【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『岩手107号』
品種名
 『銀河のしずく』
育成年
 『平成27年(西暦2015年) 岩手県 県農業研究センター』
交配組合せ
 『奥羽400号×北陸208号』
主要産地
 『岩手県』
分類
 『粳米』
『銀河のしずく』ですよ~!



白くてつややか、かろやかな食感


岩手県ブランド米戦略”銀・金”の双璧を成す『銀河のしずく』の擬人化です。


どんな娘?

ちょっと打たれ弱くて生真面目な金色の風とは対照的なお姉ちゃん。
良く言えば些細なことは気にしないおおらかさ、悪く言えばちょっといい加減な性格を持っていますが、あくまでも妹を盛り立てる心遣いだけは決して忘れません。

岩手県出身で初めて大々的に表舞台に出ただけあって、先輩品種にも物怖じしない度胸も兼ね備えた娘です。


概要

粒が大きく、粘りが程よくかろやかな食感、冷めても変わらない美味しさの品種です。

立場としては姉になるのですが、最高級路線を歩む妹『金色の風』の次点ポジション…なのかな?
…山形県の”姫・若”だって負けな(略

岩手県中部、および沿岸部で作付可能な良質良食味の岩手県オリジナル品種として、主に『あきたこまち』からの作付転換を担います。
食味ランキングでの特A獲得等、順調に評価を上げることに成功しており、相対取引価格も県内で高い部類となっています。(R5現在)
令和5年(2023年)に全農岩手県本部発表によれば、令和8年(2026年)までに販売数量を5万トンまで延ばす計画だそうで、代わりに県内の『あきたこまち』や『ひとめぼれ』は減産となる見込みです。

ロゴマークの八角形は”米”そのものを表現。また、”お米を作り上げる八十八の工程”、”末広がりの未来へ”の意味を込めて。そして八角形の角を丸くし、色にニュアンスを加えることで食味の特徴である「かろやかな口あたり」「ほのかな甘味」を表現しているとのこと。
八角形の紋様は、上部のひし形は”銀河の星の輝き”を、下部は”こぼれ落ちるしずく”を表現しています。
ロゴマークの9色には以下のような10の美味しいお米のポイントを表しています(順不同)。
…9色なのにポイントは10あるとはこれ如何に?
妹に当たる『金色の風』と同じ…ようで同じでなかったりします。

ポイント意味
無色改良白さと良食味を追求した品種改良
太陽稲の生長を促す輝く太陽
灰色銀河美味しいお米を育む銀河の夜空
濃い水色澄んだ空気、爽やかに広がる夜空
大地元気な稲がすくすく育つ豊かな大地
肥料美味しいお米を育てる肥料設計
水色清らかな水をたたえるたくさんの川
茶色たい肥や稲わら等による土づくりの徹底
桃色お米づくりに関わる人々の愛情
黄色豊かな稔り黄金色に輝く稲穂の波

よくよく見るとロゴタイプデザインにも細かな表現がありました。
『銀河のしずく』の
・『河』のさんずいにはしずくのデザインがあり”美しい銀河から今まさにこぼれ落ちようとするしずく”を表現。
・「ず」の濁点もしずくに見立てた表現になっています。
”ずっと見ていても飽きのこない、やさしく軽やかでありながら味わい深く、生命観をも感じさせるお米の食味を表現したロゴタイプ。”


育成地での出穂期・熟期は『あきたこまち』より2~3日遅い「中生の中」。
耐倒伏性「やや強」、耐冷性「極強」、耐病性「やや強」と栽培特性も優れます。


名称公募

平成27年(2015年)、主力オリジナル品種が不在だった岩手県で、農家待望(だと想像)となる食味ランキングで特A獲得が期待される新品種『岩手107号』の名称公募が開始されます。

公募のポスターによる「岩手107号は、こんなお米です」による宣伝文句は
「黄金の國、いわて。」が育んだ、白く艶やかに炊きあがるお米
心地よい食感がもたらす、あっさりとした粘りと噛むほどに広がる甘み
食味ランキング最高位の「特A」評価が期待できる、岩手県待望の新品種
「岩手107号」は、岩手の本気が生んだ、食卓の新しい主役となるお米です。
というものでした

募集期間は平成27年(2015年)7月1日~7月31日の間で、はがきか専用ホームページからの応募ができました。
最優秀賞(1名)には賞金10万円と『岩手107号』60kg、優秀賞(1名)に賞金5万円と『岩手107号』10kgが用意されていました。

名称公募への応募数は県内外、そして海外からの応募も含めた8,168件。
この中から名称選考委員会が候補名称を12点まで絞り込み、さらにそこから消費者等からの意見も踏まえて、選考を進めました。
そして最終的に平成27年(2015年)11月26日、盛岡市の「エスポワールいわて」で開催された新名称発表会において新品種名『銀河のしずく』が発表されました。


名前の由来は
【銀河】 …キラキラと光る星空から、お米一粒一粒の輝きをイメージ。
      また、宮沢賢治の作品のタイトルから「岩手」をイメージ。
【しずく】…お米の白さ、つや、美味しさを表現。



ロゴマークは平成28年(2016年)3月25日、「生産・販売キックオフイベント」において発表されています。(ロゴが持つ意味は前述の通り)


育成経過

育成開始当初、岩手県では『ひとめぼれ』『あきたこまち』の2品種が作付面積の約8割を占め、日本穀物検定協会の食味ランキングにおいても特Aを獲得するなど、良質米を生産していました。
しかし、対して岩手県オリジナル品種は1割以下の作付面積でしかなく、食味ランキングでも特A獲得に至らない状況が続いていました。


岩手県中部及び沿岸部で主力でありながら耐冷性・耐病性に劣る『あきたこまち』に代わる良質良食味品種の早急な育成と普及が求められていました。

ということで
平成18年(2006年)県中央部向けの良食味米の開発を主眼に母本『奥羽400号』、父本『北陸208号』として人工交配、得られた種子は51粒。
母本の『奥羽400号』は耐冷性と耐病性に優れ、父本の『北陸208号』は『コシヒカリ』並みの良食味が特徴でした。

同年12月から翌平成19年(2007年)4月まで、温室内でF1の29個体を養成。
同じく平成19年(2007年)は世代促進。
F1から得られたF2種子は全粒採種、全量混合播種。
F2の養成個体は700個体。
F3世代は2,000個体養成。
平成20年(2008年)に2,000個体を一株一本植えで選抜を開始。
圃場で短稈かつ強稈の優れた草姿の個体70個体を選抜し、さらにその中から玄米品質に優れる13個体を選抜。
平成21年(2009年)、前年度選抜した13個体を系統として、1系統につき40個体を系統養成。
葉いもち病圃場抵抗性検定及び耐冷性検定をこの世代から開始。
13系統の中から圃場で草姿の良い9系統を選抜し、さらに「味度値」「耐冷性」「玄米品質」に優れる3系統が選抜されます。
この3系統からさらに3個体/1系統選抜しました。
(平成22年(2010年)には選抜された13個体に対して食味試験を実施…と公式HPには記載ありますが、これは間違いのようです。)
平成22年からはF6~F7世代が生産力検定に供試されます。(食味試験もここで)
対象は前年度選抜された3系統9個体。これを3系統群9系統として系統養成。
いずれも収量性が高く耐病・耐冷性に優れていたため、1系統群あたり1系統5個体を選抜し、各系統群に『岩1077』(後の『銀河のしずく』)、『岩1078』、『岩1079』の番号が付されます。

平成23年(2011年)に前年の3系統15個体を3系統群・15系統として系統養成を行い、2系統群から2系統10個体が選抜されます。
平成24年(2012年)、場内の生産力検定及び特性検定、加えて山形県農業総合研究センターでの系統適応性検定の結果から『岩1077』は『岩手107号』の地方系統番号が付されます。奨励品種決定調査供試系統として配布されます。
この年は2系統10個体を2系統群・10系統として系統養成→1系統群当たり1系統5個体を選抜します。
平成25年(2013年)~平成26年(2014年)は1系統5個体を1系統群5系統として各90個体を栽培。奨励品種決定調査・特性検定が行われます。

いろいろあって

平成27年(2015年)に岩手県の奨励品種に採用。

『ヒメノモチ』の適地を除き、県中央部の『あきたこまち』『ひとめぼれ』からの置き換えが予定されています。





系譜図




岩手107号『銀河のしずく』 系譜図


参考文献


○銀河のしずく公式HP:https://www.junjo.jp/ginganoshizuku/

○水稲新品種「銀河のしずく」の育成:岩手県農業研究センタ-研究報告




【粳米】岩手118号~金色の風~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『岩手118号』
品種名
 『金色の風』
育成年
 『平成28年(西暦2016年) 岩手県 県農業研究センター』
交配組合せ
 『Hit1073×ひとめぼれ』
主要生産地
 『岩手県』
分類
 『粳米』
「金色の風、『銀河のしずく』とともに”岩手県銀・金”、よろしくお願いします。」


黄金の國から全国へ美味しい新風を吹き込む。



岩手県ブランド米戦略”銀・金”の双璧を成す『金色の風』の擬人化です。


どんな娘?

銀河のしずくの妹(直接的な血の繋がりは無い)。
妹という立場ではありながら、自分が岩手県のトップに立たなくてはならないという重責に銀河のしずくの後押しを受けて頑張って立ち向かっています。

生真面目でちょっと神経質なところがあるせいで、何かをする際に少し手が縮み気味になり、成果が上がらないこともチラホラ…
ただしそれは自分の力を冷静に見つめ、対処しようと必死に頑張っている事の表れでもあります。


概要

高品質の『ひとめぼれ』(食味ランキング連続特A)の産地ながらも主力となる高品質かつオリジナルの品種が不在だった岩手県。
その岩手県が『銀河のしずく』に続いて打ち出す真打、それが彼女です。

品種名の『金色の風』は平成28年(2016年)12月8日発表。
平泉町の世界遺産・中尊寺金色堂やたわわに実った稲穂をイメージし、日本の食卓に新しい風を吹き込むという願いを込めて。

ロゴマークのデザインは(株)純情米いわてが手掛けました。
流線型の金色に彩られた風が一粒のお米をやさしく包み込むイメージを表現しています。
また、風が舞うように配置された10個の色面は、お米の美味しさを生み出す10のポイントを象徴しています。
姉に当たる『銀河のしずく』と同じ…ようで同じでなかったりします。

ポイント意味
ハイテク最新の科学技術を用いて開発
太陽稲の生長を促す輝く太陽
銀河美味しいお米を育む銀河の夜空
濃い水色澄んだ空気、爽やかに広がる夜空
大地元気な稲がすくすく育つ豊かな大地
黄緑肥料美味しいお米を育てる肥料設計
水色清らかな水をたたえるたくさんの川
橙色たい肥や稲わら等による土づくりの徹底
桃色お米づくりに関わる人々の愛情
黄色豊かな稔り黄金色に輝く稲穂の波


アミロース含有率は15%前後の低アミロース米…なのかどうかかなり微妙なライン(H26~H28平均で15.7%)。
(低アミロース米はアミロース含有率が15%以下のものを言う…と管理人は勝手に考えている)※コメント欄参照~解釈は様々あるようです~
母本の『Hit1073』は『ひとめぼれ』の突然変異、そして父本は『ひとめぼれ』と岩手県主力であった『ひとめぼれ』の低アミロース化改良品種”スーパーひとめぼれ”とも言えるでしょう。(下系譜図参照)だけど本当の”スーパーひとめぼれ”は他に居たりする。
ほどよい粘りとふわりとした食感、そして豊かな甘み。
農研開発の『ミルキークイーン』や北海道の『ゆめぴりか』、さらに同期では宮城県の『だて正夢』が同じ方向性…かな?


もともと高品質米栽培でポテンシャルの高い岩手県。
この『金色の風』は「相対取引価格で全国5位以内」を目指すと言うほど意気込みと自信(?)を感じます。
『金色の風』『銀河のしずく』基礎能力の高い二種の新主力品種参入でこの米戦国時代に凱歌を上げられるかどうか、注目・・・でしたが
令和5年(2023年)時点で生産量は1,000トンを上限としてあまり拡大できておらず、苦戦が窺えます。


【何れも育種における試験値】
育成地に於ける熟期は『ひとめぼれ』内の「晩生の中」です。
稈長は約87.8cm、穂長は約19.8cmと『ひとめぼれ』並で、偏穂数型の品種です。
穂数も『ひとめぼれ』とほぼ同等ながら、1穂籾数が明らかに少ないとされています。(アミロース低減性遺伝子の副作用とのこと)
その為、千粒重は『ひとめぼれ』(22.5g)に比して重い23.1gですが、収量性は522kg/10aと『ひとめぼれ』(563ka/10a)に劣り、懸念材料の一つとされています。
また、前述の通り長稈の部類に入るため、耐倒伏性は「やや弱」との判断で、この倒れやすさも欠点とされています。
葉いもち圃場抵抗性は「やや弱」、穂いもち圃場抵抗性は「中」で、真性抵抗性遺伝子型は【Pii】と推定されます。
耐冷性は『ひとめぼれ』並の「強(旧・極強)」と強いですが、高温耐性(高温登熟耐性)については「やや弱」と判断されています。(『ひとめぼれ』の高温耐性は「中」)


日本穀物検定協会の食味ランキングでは大苦戦*商品そのものの評価ではありません。

岩手県が満を持して繰り出した『金色の風』でしたが、多くの産地品種が高品質を謳うにあたって一種の登竜門、「特A」(基準米より特に良好)を狙う穀検の食味ランキングでは大苦戦を強いられています。

平成29年度に参考品種として参加しましたが、評価は上から二番目の「A」(基準米より良好)
この年は正式参加となった『銀河のしずく』も「A」評価となり、岩手県はかなり肩を落としたことでしょう。

雪辱を誓ったであろう平成30年度も同じく参考品種として参加。
しかしながら上がるどころかさらに一段階下げて「A'」(基準米と概ね同等)とまたもや最高評価を受けられず。

元号変わって令和元年度は…なぜか正式参加なし。
一部報道では「審査の基準となる作付面積1,000haに届かず、参考品種は2年のみの審査の為、審査の対象にならなかった」と言っているところもあります。
ただ、作付面積1,000ha以下の品種なんていまやちらほら(福井『いちほまれ』、神奈川『はるみ』)ありますから、これは少し古い基準のことを言っており、正確ではないように思われます。

評価が散々だったことから新潟県の『新之助』のように、岩手県では食味ランキングには参加しないことにした…のではないでしょうか?(憶測です)



育種経過

岩手県において作付け面積全体の7割を占める『ひとめぼれ』は「極強(旧)」の耐冷性を活かし、冷害が多い当県における高品質米の算出に大きく寄与していました
県の1等米比率も2016年まで10年以上90%以上を維持するなど品質は高く、穀検の食味ランキングで『岩手県県南産ひとめぼれ』は同一品種同一産地最多の13年連続特A記録を持つほどです。
そんな高品質の岩手米ですが、市場取引価格は全国銘柄平均を下回り、全国上位の品種銘柄と比較すると1俵当たり3,000~8,000円もの価格差がありました。
これは山形県の『はえぬき』の状況と酷似していますが、高い玄米品質と食味評価を受けながら価格は安いという、岩手県からしてみれば適正な評価を受けていないと感じるに十分な状況です。

『ひとめぼれ』や『コシヒカリ』に替わって岩手県産米全体の市場評価を高め、かつそれら品種と同等の相対取引価格が期待できる岩手県最高級品種の育成が望まれていました。
『金色の風』はそんな岩手県において、県南部の特A評価栽培地向けとなる極良食味品種を開発目標に、(公財)岩手生物工学研究センターと岩手県農業研究センターの言わば”合作”で育成されました。

『金色の風』の交配母本は『Hit1073』、父本は『ひとめぼれ』です。
『Hit1073』は『ひとめぼれ』の突然変異低アミロース個体、『ひとめぼれ』は前述の通り岩手県の主力良食味品種です。

母本となる『Hit1073』の育成は、平成17年(2005年)から開始されました。
平成17年(2005年)、公益財団法人岩手生物工学研究センターにおいて2万個体の『ひとめぼれ』(の穎花)に対してエチルメタンスルフォネート(EMS)処理を行い、突然変異を誘発させます。
この年は9,300個体を栽植し、内2,709個体を選抜しています。
(ちなみに【12,000系統の『ひとめぼれ』突然変異系統から選抜】と各所で記述されていますが、「12,000」という数字は後にも先にも出てきません。『岩手118号』の育成には係わらない研究系統全体の事を言っているのかも知れませんが、兎に角ここでは『金色の風』育種論文に沿って記述します。)

平成17年(2005年)から平成19年(2007年)にかけては前述の2,709個体(系統)の突然変異系統について、各系統10個体栽植し養成が行われました。
平成20年(2008年)は栽植が行われず、種子の保管が継続されただけです。
保管年明けて平成21~22年(2009~2010年)の2ヶ年、岩手県農業研究センター圃場で有用変異体の選抜が実施されます。
ここでアミロース含有率が『ひとめぼれ』に比較して2~3ポイント安定して低く、食味官能値の高い『Hit1073』が選抜され、平成23年(2011年)は『Hit1073』のアミロース含有率の年次変動について確認を行っています。

時はほんの少し遡って平成22年(2010年)、育成された低アミロース系統『Hit1073』を母本、『ひとめぼれ』を父本とした人工交配(温湯除雄法使用)が岩手県農業研究センター作物研究室で実施され、3粒の種子を得ました。
同F1世代3個体は平成22年(2010年)12月から平成23年(2011年)3月にかけて温室内での養成が行われます。

翌平成23年(2011年)、F2世代76個体の中からMutMap法※により、アミロース含有率が『ひとめぼれ』比で2~3ポイント低い19個体を選抜します。
平成24年(2012年)F3世代は前述の19個体を19系統として養成し、19系統57個体が次年度の試験用に選抜されます。

平成25年および平成26年、生産力検定試験および特性検定試験に供試され、葉・穂いもち病圃場抵抗性検定、いもち病真性抵抗性遺伝子型の推定、生涯型耐冷性検定、穂発芽性検定及び食味官能試験が実施されます。
選抜課程としては、平成25年(2013年)F4世代は19系統57個体を19系統群57系統として系統養成されます。
この中から玄米品質あるいは食味官能評価の優れる12系統群12系統(各系統5個体)を選抜し、各系統群に『岩1229』~『岩1240』の試験番号が付されます。
平成26年(2014年)F5世代は、前年の12系統60個体を12系統群60系統として栽植します。
そしてこの中から、出穂後の枯れ上がりが少なく、草姿の優れる『岩1237』1系統5個体が選抜されます。

平成27年(2015年)、直近2ヶ年の試験の結果『岩1237』は熟期、いもち病抵抗性、耐冷性といった特性が『ひとめぼれ』並であり、食味は『ひとめぼれ』に優るとの判断がなされ、『ひとめぼれ』を超える極良食味の晩生品種として期待できると判断されます。
『岩手118号』の地方系統名が付され、奨励品種決定調査供試系統として配布されることになりました。
奨励品種決定調査は岩手県農業研究センター(北上市)で基本調査が実施され、そのほかに奥州、一関の2箇所で現地調査を実施しています。
この年のF6世代は前年の1系統5個体を1系統群5系統として栽植し、1系統10個体を選抜しています。

平成28年(2016年)も奨励品種決定調査を継続します。
基本調査に加え、金ケ崎(農業大学校)、奥州、一関の3箇所で現地調査を実施しています。
ちなみにF7世代は『No.1』~『No.10』の10系統を栽培し、内『No.5』が廃棄されます。
しかしながら新たに1系統が養成された(育成系統図では元の『No.9』から新系統『5』『9』に分離したようにも見えるが明記されていない)ので、最終的に全体で年度当初と同じ10系統を維持しています。
そしてこの年の12月に『金色の風』との名称が発表されました。

育成地での調査結果及び奨励品種決定調査の結果、『岩手118号』は『ひとめぼれ』と同等に良質で、強い耐冷性を有し、『ひとめぼれ』を上回る食味を持つ系統であることから、平成29年2月に岩手県の奨励品種に編入することが承認されました。
ただし試験の結果、やや長稈で倒れやすいことと、収量が『ひとめぼれ』に劣ることも明らかになっています。

育種最終の平成28年(2016年)時点でF7世代。
若干若い気もしますが、ほぼ『ひとめぼれ』同士の掛け合わせなので固定も早いという事でしょうか?

県南の『ひとめぼれ』特A評価地区に置き換わっての普及を見込み。
でしたが、令和5年(2023年)の全農岩手県本部発表によれば、『金色の風』の生産量は1,000トンを維持するとのことで、かなり生産量は制限する方針のようです。

系譜図
岩手118号『金色の風』系譜図


参考文献


○「金色の風」開発の物語:http://www.iwate-kome.jp/konjiki/

○やや低アミロース性の主食用水稲品種「金色の風」の品種特性:岩手県農業研究センター・岩手生物工学研究センター




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