2020年2月4日火曜日

日本酒における品種名表示(実は無法)~短稈渡船を追え【番外編】~









目次



今回のお題について(税務署に問い合わせました)

さてさんざんさんざんさんざん今までもんもんしてました。

日本で”お米”を売る場合、そこに表記できる”品種名”は限られたものです。
(穴が無いとは言いませんが)農家さんや米屋さんが好き勝手に表示することはできません。

しかし、日本酒業界で表記されている品種名はまさに勝手気まま、フリーダム
なんでどの蔵元も存在もしない「『短稈渡船』使用してます!」なんてしてるの?
それって法的にどうなの?

「赤磐雄町」やら「広島雄町」やら枚挙にいとまがありません。

方々聞きましたがらちが明かず
結局
仙台国税局山形税務署に問い合わせました。


「清酒の製法品質表示基準」とは

当然ですが、日本酒(清酒)はお酒です。
(国産のコメを使った清酒が「日本酒」、米を原料にして醸して”ある種の”ろ過をしたものが「清酒」…でいいのかな?)

そんな清酒は
①特定名称(吟醸酒・純米酒等)を表示する場合の基準
②容器等に表示しなければならない(義務)事項の基準
③容器等に任意に表示できる(任意)事項の基準
④容器等に表示してはならない(禁止)事項の基準
が一律に定められ、消費者が商品を判断する際に品質を判断するよりどころになっています。
蔵元側が各々勝手なルールでいろいろ記載されては、消費者にとっては何が良いのか、どれだけ優れているのか判断のしようがありません。
同一のルールに基づいて表記されることで初めて、消費者にとってたくさんの商品の比較ができるようになるわけですね。

要は「清酒(日本酒含む)の表示事項のルール」になりますが、これが「清酒の製法品質表示基準(平成元年11月22日 国税庁告示第8号)」です。
日本で販売される清酒は、かならずこの基準に基づいて表示されなければなりません。


「清酒の製法品質表示基準」の中の品種名ルールは?


さて、表示ルールの本元であるこの「清酒の製法品質表示基準」
この中で品種名についての表示ルールはどのように表記されているのでしょうか?


「清酒の製法品質表示基準」の概要

◯使用する白米について
・殊に、特定名称の清酒に使用する白米は、農産物検査法によって、3等以上に格付けされた玄米又はこれに相当する玄米を精米したものに限られています。

◯原料米の表示「任意記載事項」
・表示しようとする原料米の使用割合が 50%を越えている場合に、使用割合と併せて表示できます。


…はい…うーん…
どうにもはっきりしませんね。
「品種名」としか書いていません。
酒造業者さん向けのチェックシートも存在しますが、そちらでも単に「品種名」としか書いていません。


一般的な(誤った認識も含めて)「品種名」として認識されているのは幻の酒米『渡船』?~産地品種銘柄とは?品種名?商標?~でも述べましたが、①品種名(稲の名称)、②産地品種銘柄名(お米の名前)、③商品名(お米の商品の名前)のおおまか三つ。
今回問題にした『短稈渡船』については新たな④俗称(見識のない方の勝手な呼び名)になるでしょうか。

日本酒に(法的に)表示してよいのはどれなのでしょう?


少しおさらい~お米の場合~

ここで少しだけ。

冒頭でも少し触れましたが
「お米」として売る場合、「品種名」として正式に表示できるのは「産地品種銘柄」に設定されたものだけであり、それも農産物検査を受ける必要があります。

地方農政局によって銘柄に設定されていない「お米」は品種名を表示できません
農産物検査を受けなければ”未検査米”として売るしかなく、品種名の表示はできません。

一般家庭向けでない業務用米などでは品種名がそもそも消費者の目に触れることはほとんどないでしょうから問題になりませんが
(一般家庭向けに)品種名を宣伝したいとなると、この「産地品種銘柄」の設定は避けては通れないものになるでしょう。

農産物検査法によるこの銘柄設定自体も、ぶっちゃけ穴がある制度ですが、消費者にとっては「確かにその品種である」という担保となっていると言えるでしょう。


…じゃあ日本酒はなんで好き放題出来ているの?
その表示の担保はだれがしてくれるの?
品種について見識の浅い蔵元?



本題~仙台国税局 山形税務署の回答~

質問はシンプルにしました。

【墨猫大和】
”清酒の製法品質表示基準”における”品種名”の定義を教えてください」

ただここで、当たり前というか、仕様がないというか、少し問題が発生。

【税】
「品種名って品種名では…?」

というような反応。
そこで少し質問を変更。

【墨猫大和】
「品種名は
①作物の名称なのか
②農産物検査法における産地品種銘柄なのか
③蔵元が自由に表示できるのか
どれなんでしょうか?」

【税】「確認して後日回答します」


で、回答です。(電話での受け答えだったので間違えもあるかも…)


【意訳含】

結論から言えば、「清酒の製法品質基準」には品種名についての定義は無い。

多くの場合は産地品種銘柄に指定された醸造用玄米を使用しているが、やはり一部復刻米(銘柄設定品種以外)を用いている蔵も増えている。

では、その品種名を表示してよいかどうかという判断をどう行うかと訊かれれば
「その品種名であることについて説明責任を果たせるかどうか」になるかと思われる。

酒蔵や酒類販売業者は「清酒の製法品質基準」や「景品表示法」に基づき商品に係る表示をし、その表示について何らかの根拠を持っているはずである。
となれば品種名の表示については、表記した酒蔵や酒類販売業者がその根拠を明示できるということが表示の条件になるだろう。

【墨猫大和(仮名)】さんが気になる品種名表記があるのであれば、その蔵元に問い合わせれば根拠を教えてもらえるはずである。
(↑今回根拠を説明できた蔵がなかったので絶望したんですがそれは)

※ちなみに念のためですがちゃんと住所・本名を名乗って問い合わせしています。


まとめ

ということで、これはあくまで「清酒の製法品質表示基準」(国税局)に係る回答です。
この法にかかわる部分では問題なし(ただし表示者がちゃんと根拠を説明できるのなら)。

「その品種名であることについて説明責任を果たせるかどうか」
ですから
今回の短稈渡船シリーズでの回答のように

「みんなやってるから…」
「短稈渡船だと思ってたから…」
「ネットで見たから…」

この程度では「説明責任を果たした」とはとても言えませんねってこれじゃまるでどこその野党みたいなので実例を…

最低これくらい説明してもらいたい(管理人の独断と偏見)
・公的な機関、もしくは種籾の入手先に「正式な品種名」を確認している
 ↑俗称などではなく「正式な」品種名の確認が出来てますか?
  「そんな品種は譲ってません」なんて言われないですよね?
  在来種純系淘汰品種の区別はついていますか?

・来歴の確認と俗説、諸説の確認
 ↑『短稈渡船』であきらかなように誤情報も出回りやすい
  それは世間一般に宣伝してよいほどの確かな情報ですか?

・作物「稲」としての品種の定義を理解し、維持する試みを行っているか
 ↑品種が固定された絶対なものであるという認識なら認識不足


ということで
「日本酒に使用されている品種の担保はだれがしてくれるのか?」については「販売元の蔵元」となるようですが…
正直、稲の品種について専門家ではない蔵元さんがそれを本当に担保できるのか…今回の経験から誤解を恐れずはっきり言いますが、非常に疑わしい…


ちなみに
「山田錦の親!『短稈渡船』使用!」なんて言う虚偽表示はやはり景品表示法の部類に入るようなので、優良誤認を誘発するようなこの行為が横行している日本酒業界、それはそれで問題だぞ(謎の上から目線)

ただこれ本当に、私のような稲オタクが今までいなかったから表に出なかっただけで
関係ないような(可能性の高い)米で作った日本酒を、「山田錦の親を使っているんだ」と信じて買っている人が今まで大勢居たということは少しは憂慮すべき問題じゃないんでしょうか?日本酒業界さん?
今回私が調べた範囲で悪意のある…ようにしか思えない蔵もいましたが蔵元さんはいませんでしたが、確実に悪用できる状態ですよね?これ…

説明責任はある!
といって
じゃあ誰がそれを指摘するの?(実際今まで全く是正されてこなかった『短稈渡船』)


「本当に山田錦の親だと思ったから買ったのに、詐欺だ!」と景品表示法の方面から責められて、たった一人の推測をあてにしている蔵元は本当に対応できるのでしょうか?
そしてその一人の認識は「似てると思います」程度でしかないということを認識しているのでしょうか?


最後に

『短稈渡船』を追って日本酒の表示法にまで足を延ばしましたが、なんともすっきりしないまま終わりを迎えました。

おそらく、今も日本で蔵元が新しい「山田錦の親『短稈渡船』使用」を謳った日本酒を販売していることでしょう。

税務署の回答では、そこを問題にするとしたら消費者庁(景品表示法)に相談しては?とのことなので…
いやでも別に告発したいとかではなくて、根拠を知りたいだけなんですけどね…

「わたしたちの知らないところでなにかがおこっている」
のような、無根拠な憶測による陰謀論は基本嫌いな私ですが


一般の方の興味の薄いところで無法が行われているという実態は、今回垣間見ることが出来ました。



追加の情報、間違いの指摘はいつまでもお待ちしております。














2 件のコメント:

  1. 素晴らしい考察ですね!山田錦の親と思っておりましたしそのように関係者も説明したり本に書いてあるので誤解がどんどん拡がっている感じがします。どこかでしっかりと訂正が欲しいですね。

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    1. コメントありがとうございます~
      しつこいようですがこの『短稈渡船』関連記事はあくまで私個人の考察である点にはご注意ください(この主張が正しいかどうかはわかりません)
      ただやはり、あくまでも仮定であったり証明ができないものを真実・確定事項であるかのように消費者に謳って売る行為に(個人的に)疑問符が付くのでした
      少なくとも私はこの投稿をきっかけに調べるまでずっと、本物の(山田錦の両親である)『山田穂』や『短稈渡船』がずっと保存されていて、それを復活したものだと信じていましたので…蔵側に都合のいい解釈でいろんな品種が使われているとは思ってもいませんでした。

      販売者側の説明不足というか誇張というか…それが問題だと思っているので「短稈渡船と表示して売るのをやめろ」ではなく「山田錦の親使用!」の宣伝を改めるか説明をしっかりとしてほしいのが個人的な意見でした。

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