2021年4月30日金曜日

観賞用稲(田んぼアート用)の品種を調べてみよう~「紫大黒」「黄大黒」「緑大黒」~

観賞用稲・・・と言って良いのか悪いのか・・・

世の中には「田んぼアート」があります。
近年かなり有名になって全国各地で行われていますから、この「田んぼアート」を知っている人も多いのではないでしょうか?

「田んぼアート」は読んで字のごとく、田んぼに植えた稲で絵柄を表現するもので、最初こそ「文字を書く」程度だったものが、遠近法を用いてより巨大に、より繊細な絵柄も表現されるようになってきています。
「田んぼアート」で検索するだけですごい作品が続々見つかります(はず!)

「田んぼに植えたで絵柄を表現する」のですから、当然いろんな色の稲が必要になりますよね。
一般用飯(粳)米、糯米、酒造好適米、飼料用稲とはまた一線を画す「観賞用稲」に加えて、葉の色が違う在来種達が用いられています。

そんな田んぼアート先駆けにして最新地区にして最強区と言えば青森県の田舎館村です(私見)
そしてそんな青森県では「観賞用稲」の育成が非常に盛んです。


今日はそんな観賞用稲を・・・紹介するはずでした。
(田んぼアート、観賞用稲のとりまとめは改めてまた後日)

調査で速攻・大ブレーキがかかる

ここまでブログ文章を打った上で調査に取りかかりましたのです、いつも通り。

田んぼアートで使われている品種を調べて(正直この時点で運営委員会か報道か、あるいは両方の認識・知識があやふやすぎて苦労はしましたが・・・)
使われている品種を調べて・・・

それでここで引っかかったのがタイトルにもなっている「紫大黒」「黄大黒」「緑大黒」という品種※達。

彼女らが何者なのかが全く見えてきませんのですよ。


※他観賞用稲品種達と同表記にする都合上ひとまず「品種」扱いにします。

謎の「大黒シリーズ」

わからない、その事自体はよくあるのですが、田んぼアートの始祖田舎館村が使っている(&登録品種でない事は確かなので権利関係の扱いが雑でも良い)からか、これが実に、非常に、とってもよく全国の田んぼアートで使われているのです。

主要な、頻繁に使われている品種が「よくわかりません」では格好が付きません(私見)。


山形県産米を紹介するのに
マイナー部類の「『どまんなか』や『山形95号』がわかりませんでした」とは言えても
メイン品種の「『つや姫』や『雪若丸』のことはよくわかりませんでした」では意味がありません(と、個人的に思うのです)。
・・・あー・・・えっとですね
・・・うん

繰り言になりますが「大黒」シリーズで確かに言えたことは

・品種登録されていない(登録品種の異名の可能性はある)
・農研機構ジーンバンクにもない(ジーンバンク登録名の異名の(略)
・九州大学にもない(九州(略)

これだけ・・・
とある記事では「田舎館村が苦労して育種した品種」なんて紹介されていたりでさらに混乱に拍車がかかったり・・・
あえて詳細は省きますが、ここだけ先に結論から言うと、こういうことを書いている記事を見つけてもその内容は間違いです。(「田舎館村が育成した品種」なんてものは存在しません【確認済】)


いつもの「とある情報筋」より超有力情報

ここでいつもの(どの?)非常に信頼できる情報筋様より耳寄りな情報を頂きまして

青森県の育成品種(観賞用稲)の育種論文内に出てくる在来品種
『短稈紫稲』『黄色稲』『観稲』
これらが
「紫大黒」「黄大黒」「緑大黒」
ではないか?ということでした。

なるほど・・・
『べにあそび』の育種論文では以下のように書かれています。

近年、観賞用の稲を使った田んぼアート等が、注目を集めている。青森県では、これまで在来品種である極短稈で葉色が紫色の「短稈紫稲」、極短稈で葉色が黄色の「黄色稲」、極短稈で葉色が濃い緑色の「観稲」 の3色品種が主に用いられてきた。


これは確かに田んぼアートで使われている事が明記されており、色も「大黒」シリーズの三色と共通です。

・・・まぁかと言って『短稈紫稲』『黄色稲』『観稲』に関する情報も見つからなかったんですけどね

ちなみに品種名の読み方は順に「たんかんむらさきいね」「きいろいね」「かんとう」です。
『観稲』を「かんいね」とか一ヶ月ほど読み続けていたやつがいたって本当ですか?私です(´・ω・`)


なにはともあれ確認

ということでまずは基本的なことから確認することにしまして・・・
「田舎館村で「紫大黒」「黄大黒」「緑大黒」と呼んでいる品種の由来はなんなのか?」
(青森県産技セで保存している『短稈紫稲』『黄色稲』『観稲』ではないのですか?)
これを田舎館村役場に訊いてみました。

田舎館村からの回答は(意訳)
「田んぼアート用の稲品種を青森県産業技術センター以外から取り寄せたことはないので、”大黒”は『短稈紫稲』『黄色稲』『観稲』に対する田舎館村の独自呼称であると思われる」

(正直これで確定としていいか不安ですが)ひとまず

「紫大黒」=『短稈紫稲』
「黄大黒」=『黄色稲』
「緑大黒」=『観稲』

これは確定で良いでしょう。
しかし期待した品種に関する特性の情報については一切入手できず。

籾の色は?
葉が有色であれば籾にも色が入る品種は多いです(が入らないのも当然有り)
玄米の色は?
観賞用に用いられるからと言って玄米が有色とは限りませんが果たして?
そもそも糯?粳?

等々・・・擬人化するにあたっては知りたいけども、わからないことが多すぎました。
・・・ええ、一応このブログ「稲品種擬人化」ブログですからね(自分でも時たま忘れてる)

青森産業技術センターに問い合わせ・・・してもだめそうなので現物を買いました

そこで最終、品種保管者である青森産業技術センターに問い合わせ・・・と考えたのですが
在来品種であることから詳細な特性の整理がそもそもされておらず、公開もされていない・・・ということでどん詰まり・・・

よし
ならばセルフで調査するしかないな、と。
田舎館村から「紫大黒」「黄大黒」「緑大黒」の種籾を買って観察することにしました(唐突)

(ようやく本題)実際に観察した結果

ということで
購入しました3品種の種籾(意外とあっさり。田んぼアートに興味ある方はお気軽に田舎館村に問い合わせませう)。
種籾の状態でわかることはそれほど多くはないですが、知りたかった情報は十分調べられる!
と言うことで以下その結果(すべて素人判断なのであしからず)と写真です。

〇『短稈紫稲』(紫大黒)

『短稈紫稲(紫大黒)』籾外観
籾には基本的に着色は見られません。
多少色が付いているように見える籾も見えますが・・・
穎色は通常品種と変わらない「黄色・黄白」と言ったところでしょうか?

左が『短稈紫稲』 右は正体不明の混入籾

芒があったかどうかはやはり種籾では判断しかねます。
しかし通常我々が目にする籾と比べてかなりずんぐりむっくり、かつ小さい印象です。
右の混入籾は通常(よく目にする)「籾」のイメージですね。
それにしてもやっぱり少し着色(紫?)がありますかね・・・?

左が『短稈紫稲(紫大黒)』 右が対照『どまんなか』

一般的な品種(対照)として『どまんなか』を用いています。
玄米色はちょっと茶色がかっているように見えますね。

表面に色が付いている・・・ように見えるんですけども・・・うーぬ・・・
墨猫独自判断で「褐色(茶色)」ってことにしておきます。

『短稈紫稲(紫大黒)』玄米アップ

あまり「きれいな玄米」とは言えないかもしれません。

左が『短稈紫稲(紫大黒)』 右が対照『どまんなか』

ヨードチンキに対する反応。
着色薄いかもですが、粳の『どまんなか』とほぼ同様の着色具合なので「粳」でいいのではないでせうか(素人判断)

〇『黄色稲』(黄大黒)

『黄色稲(黄大黒)』籾外観
『短稈紫稲』よりもなお籾色は通常通りに見えます。
穎色は通常品種と変わらない「黄色・黄白」でよいのではないでしょうか。

左が『短稈紫稲』 右は正体不明の混入籾

やっぱりずんぐりむっくりさん。

 左が『黄色稲(黄大黒)』 右が対照『どまんなか』

『どまんなか』に比べれば茶色っぽいですが、『短稈紫稲』よりは明らかに薄いです。
「淡褐色」でせうか?

『黄色稲(黄大黒)』玄米アップ

左が『黄色稲(黄大黒)』 右が対照『どまんなか』

ヨードチンキで着色して『どまんなか』とほぼ同様?
これも「粳」でいいのではないでせうか?

〇『観稲』(緑大黒)

『観稲(緑大黒)』籾外観

やはり『観稲』もとい『緑大黒』(濃い緑の稲)と呼ばれるだけあって、何の変哲も見られません。
穎色は通常品種と変わらない「黄色・黄白」で良いのではないでしょうか?

左が『観稲』 右は正体不明の混入籾

重ね重ね芒の判断は据え置きです。
籾の形状は『短稈紫稲』『黄色稲』と大差ありませんが、さらに粒が小さいです。
着色は全くないですね。
余談ですが、『緑大黒』の混入籾には着色があるものがちらほらありました。

左が『観稲(緑大黒)』 右が対照『どまんなか』

玄米色は『どまんなか』よりは茶色がかっているように見えますが、ほぼ差はないですね(素人判断)
玄米色は「淡褐色」じゃないでしょうか(素人判断)。

『観稲(緑大黒)』玄米アップ

腹白持ちがちらほらいますかね?

左が『観稲(緑大黒)』 右が対照『どまんなか』

着色がほぼ一緒で「粳」ということで(本当に良いのかな・・・)



まとめ

世間一般で、田舎館村から広まった田んぼアートに用いられる品種「紫大黒」「黄大黒」「緑大黒」は
青森県産業技術センターで保存している在来品種『短稈紫稲』『黄色稲』『観稲』にそれぞれ田舎館村が独自の名称を与えて呼んでいるものであると確認できました(多分・・・一応・・・おそらく・・・)。

品種に関する情報は在来品種ということであまり整理されていないようで、今回種籾を取り寄せて確認できる事項だけ確認してみました。
これを元に米っ娘デザインを!そして田んぼアート記事作成をしたいと思います!

↓しました↓


今回わかったことの覚え書き


特性/品種名短稈紫稲黄色稲観稲
粳/糯
穎色(籾)黄白黄白黄白
玄米色褐色(茶色)淡褐色淡褐色


順番や名前が違うのは大目に見てください・・・

千粒重を計測してはいませんが
粒の大きさは『黄色稲』が一番大きくて、『観稲』がひときわ小さいですね。


追記 蒔いてみた

『短稈紫稲』出穂後
やはり稃先色あり。紫色でしょうか?
芒は見受けられず、ですね。


『観稲』出穂後
芒はなし、稃先色も無し。
茶色に見えるのは中身の玄米の色が透けて見えている・・・から?


『黄色稲』出穂後
芒無し、稃先色無し、特別な色は何もない綺麗な籾。
熟していく過程で変わったりするのかな?



参考文献

〇観賞用赤葉稲新品種「べにあそび」の特性:青森産業技術センター農林総合研究所


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