2019年7月15日月曜日

”本当”の幻の酒米『短稈渡船』とは? 間違い徒然~ネット上では90%誤情報しかない!?~

これはあくまでも管理人墨猫大和の集めた情報による私見です。
必ずしも「正確な情報」ではない点にご注意ください。

”ちゃんとした根拠や論拠”で反論することは十分可能な内容だと思います。
ただし、当時(明治~大正期)の資料を基に反論ください。
現代の慣習や書籍を元に反論されても、この問題は「そもそもその根拠が間違っている」という話ですので意味がありません。







目次


”誤った情報”が”事実”として塗り固められたネット


『短稈渡船』

…と、ネット上で検索すれば多くの検索結果が表示されます。

『山田錦』の父親!
滋賀県で幻の酒米『短稈渡船(たんかんわたりぶね)』を復活!
『短稈渡船』を醸した日本酒!
兵庫県産『短稈渡船』を使用!

等々…
この『短稈渡船』を使用したと謳っている日本酒も数多くありますね。

結論から言うと、最初の【『山田錦』の父親!】以外は誤り
そしてネット上では90%(体感)以上でこの間違った情報が事実であるかのように定着している状況です。



そんな状況ですので、仮にこの文章を見て「え?間違い?そんなことあるの?」となったとして
ネットでいくら検索しても、さも事実であるかのようにどこもかしこも”『滋賀渡船2号』は『短稈渡船』である”と表記するサイトばかりですので

【『短稈渡船』がこの世に無い=現代で『短稈渡船』を謳ってるものはすべて誤り

この結論に達することが出来る人は、かなり少ないかと思われます。
ちなみに残り10%も間違いを指摘しているのではなく、推測に過ぎないという点を抑えて(いないかも知れませんが)表記しているだけですので、意識せず読んで違いに気づけるかは微妙なところです。


※なお、この内容は兵庫県農林水産技術総合センター、および滋賀県農業技術振興センター、および国立研究法人 農業・食品産業技術総合研究機構の3機関への問い合わせにより得た回答で作成しております。無根拠な憶測・推測・批判で無い事だけは最初に明記させていただきます。

ですが

ここで問題にしているのは”山田錦の親『短稈渡船』”と宣伝している点です。”短稈渡船”という単語自体には何も法的制限はないので、表記すること自体に法的な問題はないと思われます(高確率で誤解を招くので倫理(個人)的にはどうかと思いますが)。
ただ、稲品種としての”山田錦の親『短稈渡船』”がこの世に存在しないことは確かです。


蛇足ですが、『短稈渡船』の読み方は
滋賀県に習うなら「たんかんわたりふね」です。
「ぶね」と濁点はつきません。
兵庫県で何と呼んでいたか私は資料を確認できていないのでわかりませんが、滋賀県側の『滋賀渡船』の呼称に準じて『たんかんわたりふね』としています。

そもそも『短稈渡船』とはなにか?

『短稈渡船』という水稲品種は、酒造好適米の”王”との呼び名も高い『山田錦』の交配親、その父本(父親側)として使用されたと”兵庫県の記録に残っている品種”です。

兵庫県立農林水産技術総合センター(の池上氏ら)が発表した
「酒米品種『山田錦』の育成経過と母本品種『山田穂』、『短稈渡船』の来歴(2005年)」では


①どこの品種?
定説では滋賀県農事試験場から取り寄せたという解釈になっています。(大正9年 兵庫県立農事試験場業務功程)
ただし、滋賀県側の記録に『短稈渡船』という品種は残っていません

②いつ頃兵庫県に来た?
大正7年(1918年)頃と推定されます。
大正9年(1920年)の兵庫県本場での水稲品種比較試験が供試3年目とされているため。

③どんな品種?
草型は「偏穂数型」、脱粒性は「難」、芒の多少は「中」、芒の長短は「中」、ふ色および芒の色は「黄白」
(昭和3年度兵庫県立農事試験場業務功程 酒造米試験地ノ部)
”短稈”という品種名から、稈長も短い(当時基準)ことが想像されます。



①にあるように、『短稈渡船』は滋賀県が育成した品種と池上氏らは解釈していますが、肝心の滋賀県側には記録が残っていません。
兵庫県側での独自の呼称であるということです。
いずれにせよ、『短稈渡船』は滋賀県に存在した品種『渡船』系統の品種であることが推測されています。


◯では、『渡船』とは?
滋賀県で明治~昭和38年頃にかけて栽培されていた品種。
純系淘汰で『滋賀渡船◯号』がいくつか育成されています。
しかしながらこの『渡船』と言う品種、近代の記録にほとんど残っておらず、その出自はかなり不明瞭になっています(国と県の主張が違うなど、当時から出自が不明瞭だったことがその原因と思われます)。
その為か『雄町』の選抜品種である、異名同種である等、以下のような説がありますが、両者において確たる証拠はありません。→詳しくは”短稈渡船とは?~3~在来品種『渡船』”を追うに記載しております。
ただこれも『短稈渡船』と同じく、仮説にすぎないものや根拠の乏しいものをさも事実のように取り扱っているものが書籍・ネット問わず多数あり、かなり混迷していることには注意が必要です。

福岡県から”船”で”渡”ってきた『雄町』から選抜したために滋賀県で『渡船』と命名された、
 ↑どうやら確度がかなり低そうな情報なので削除

・試験場において、”船”上での作業中に品種名を付けた札を失くしてしまったものがあり、仮に『渡船』と名付けた。その後、品種特性などから札を失くした品種が『雄町』だとわかった、
 ↑滋賀県に残る記録にこのような記述も(嘘くさい

・福岡県で育成された品種『渡船』を滋賀県が取り寄せた。
 ↑一番確度が高そうな情報

元山口大学教授の森脇勉氏の「イネ在来種”渡船”を再考する」で、この問題について非常に詳しく解説されています。
上記の最後「福岡県から取り寄せた品種である」がもっとも確度の高い説ではあるのですが、いかんせんその福岡県に何も情報が残っておらず、『渡船』の出自を追うことは今現在不可能になっています。

ただし、DNA解析において『雄町』に非常に近い品種であることが示唆されており、『雄町』近縁種であることは間違いないようです。(~酒米品種群の成り立ちとその遺伝的背景~)
ただし、(現代に保存されている)『滋賀渡船2号(渡船2号)』は『神力』系統の遺伝子も含まれ、純系淘汰よりは自然交配による雑種からの派生が推定されています。(同上)


しかし厄介なのが
滋賀県では明治38年(1905年)に郡市農会模範農場長会において異名同種の品種名統一を行っており、その際に全国的に『雄町』とされているものについても『渡船』の異名同種として『渡船』に名称を統一しています。
つまり、明治38年以降に滋賀県内で栽培されていた『雄町』は『渡船』になったのです。
滋賀県で選抜している『渡船』とは厳密には違う品種(かもしれない)『雄町』ですが、滋賀県内ではあくまでも名前が違うだけの同じ品種として、『渡船』として呼ぶようになりました。


兎にも角にも
この『渡船』の純系淘汰品種の一種が、『短稈渡船』であったと思われます。



ネットの誤解とは?どこから始まった?


滋賀県から兵庫県にわたった大正7年頃と言う推定から、同時期に滋賀県で育成された『渡船』系統の品種『滋賀渡船2号』、『滋賀渡船4号』、『滋賀渡船6号』、この三つのうちのどれかが兵庫県にわたったのではないか?
そしてこの中で記録に残る『短稈渡船』の特性と最も類似するのは『滋賀渡船2号』であるため、『滋賀渡船2号』が『短稈渡船』とほぼ同じものではないか、という兵庫県立農業技術センターの池上氏の推論”酒米品種「山田錦」の育成経過と母本品種「山田穂」、「短稈渡船」の来歴”に記載されています。

そしてネット上ではこの”推論”がもはや確定された”事実”として流布されており

『滋賀渡船2号』が『短稈渡船』であり、『山田錦』の親品種である(誤り)

相当数がこのような表記で、酷いものでは『渡船』そのものをもはやひとくくりにして『渡船』でも『同2号』でも『同6号』でも『短稈渡船』(『山田錦』の親)扱いです。
日本酒の原材料表記でも多くの蔵が兵庫県産、滋賀県産、茨城県産の『短稈渡船』使用を謳っています。



…いえ、決めつけは良くないですね。
明確な証拠がなく肯定出来ないということは、逆に否定も出来ないということです。
『コシヒカリ新潟BL(IL)』を『新潟県産コシヒカリ』と表記することが許可されるように、関係する公的機関が『短稈渡船』を認め、表記を許可しているのかもしれません。


総括
『短稈渡船』を育成したと(定説で)推測されているのは滋賀県(ただし『短稈渡船』という品種名ではない)
『短稈渡船』の品種名を使用し、交配に用いたのは兵庫県
『短稈渡船』=『滋賀渡船2号』ではないかとの推論を出したのは兵庫県の池上氏
『短稈渡船』の種子を保存している(とネット上でされている)のが農研機構

ここで唐突に出てきた農研機構ですが、茨城県の「府中誉」という酒蔵が、ここから『短稈渡船』の種子を譲り受けて復活させた、と広報していました。
茨城県産の『短稈渡船』とやらはおそらくここが出自でしょう。
さて
関係する上記機関に対して問い合わせしてみましょう。


関係する機関の回答は?

『滋賀渡船2号』は『短稈渡船』なのでしょうか?公認しているんでしょうか?ということで、問い合わせしました。
仮に認めている場合は根拠を教えてください、とも書き添えましたが(9割以上わかってはいましたが)無駄な質問でした。(推論でしかないものを認めているわけがないですよね)


◯滋賀県(農業技術振興センター管理部様)
『滋賀渡船2号』が『短稈渡船』であるとは認めておらず、過去の資料でも確認できない。
・滋賀県の記録上残る『渡船』系統は『滋賀渡船2号』『滋賀渡船4号』『滋賀渡船6号』『滋賀渡船26号』『滋賀渡船白銀』であり、『短稈渡船』と言う品種は無い。
・そもそも『短稈渡船』は滋賀県が命名した品種ではない為、『滋賀渡船2号』との関連性は分からない。

◯兵庫県(農林水産技術センター 酒米試験地 池上主席研究員様)
兵庫県として『滋賀渡船2号』が『短稈渡船』であるとは認めていない。個人的意見として似ているとは思う。
・論文の推測はあくまでも個人の見解であり、兵庫県として協議をしたものでもない。
・ジーンバンク、九州大学、京都大学にも『短稈渡船』と言う品種は現存していない。

◯農研機構(広報課(遺伝資源センター)様)
・茨城県の酒蔵「府中誉」に譲渡したのは『渡船2号』であり『短稈渡船』ではない。
・センターで保存しているのは滋賀県産の『渡船2号』及び『渡船3号』だけであり、『短稈渡船』と言う品種は無い。


重ねて、質問に対応いただいた関係機関の皆様に厚く御礼申し上げます。



総論…というほど大したものでもないけど、結論


と、言うことで

『短稈渡船』の実家である滋賀県も、嫁ぎ先の兵庫県も、種子が現存するかと思われた農研機構もその存在を否定しています。
つまり、ネット上や酒蔵で見られる『滋賀渡船2号(他)』=『短稈渡船』論とは、兵庫県の池上氏の推論を拡大解釈した誤った情報が蔓延していた結果と言うことが推測されます。
(無論この推定を元に『山田錦』の優秀性解明のため、父本とみられる『渡船2号』の研究は行われていますが、この仮定を持って父親と断ずるのはどうなのでしょうか?)

『短稈渡船』の産地として兵庫県産、滋賀県産、茨城県産があると前述しましたが

兵庫県産=『(滋賀)渡船2号』
滋賀県産=『滋賀渡船6号』
茨城県産= でも多分『(滋賀)渡船2号』(詳しくはコチラで解説

これが実際の(正しい)品種名であると思われます。(いずれも『短稈渡船』ではありません。)



推論を唱えた池上氏自身が、「個人の見解に過ぎず、公的な見解ではない」と考えられていることからも、やはり現存しない品種については、どこどこまでいっても推測・推論するしかないものなのだと実感します。
(まさか「推論は推論でも説があるんだから本当だろ?」なんてこと言う人はいませんよね?)
繰り返しになりますが、ここで問題にしているのは「山田錦の父親『短稈渡船』」と宣伝している点です。
関連する『新山田穂1号』についても、明らかに間違いな「山田錦の母親『山田穂(新山田穂1号)』」と宣伝している点を問題にしています。

『滋賀渡船2号』で造ったお酒を「短稈渡船」と言う名前で売ろうが、『新山田穂1号』で造ったお酒を「山田穂」として売ろうが、嘘も何もありません(誤解は生みそうですが)が、それを「山田錦の親」と限定してしまうなら現状は明らかな誤りであるか、少なくとも説明不足感は否めません。


兎に角、今現在の事実としては

・『短稈渡船』(『山田錦』の父)はもうこの世に存在しない
・『滋賀渡船2号』は『短稈渡船』ではない



これ以上でも以下でもありません。
※滋賀県、兵庫県、農研機構以上の確たる情報を持っており、『短稈渡船』の存在を証明できる方がいましたらばぜひコメントください。(必ず根拠を明示してください)


本当の『短稈渡船』は?

池上氏の『滋賀渡船2号』=『短稈渡船』説。
『滋賀渡船2号』と『短稈渡船』の特徴が類似していること、同じ系統であることはある程度信頼できる事実でしょうから、これを引用するのがまったくの「間違い」とは言いません
とは言え、突っ込める部分↓も当然あるわけですが

ですが、何度でも言いますが推測であることをすっ飛ばして断定・宣伝している状態を問題にしています。
『山田錦』の父本となった『短稈渡船』が現存していない以上、「断定・肯定すること」も永遠にできないのが現実的ではないでしょうか?

ちなみにここまで読んで「難癖付けたいだけだろうお前は」と思う方もいるかもしれません。
でもですよ?
ちゃんと根拠のある”推測”にしてもまだまだいっぱい出来るんですよ?
証拠は不十分だけど商品に表示するには十分な根拠だ、ってロマンあふれる皆さんの言う「十分な根拠」ってそれ「みんなが言っていること」を聞いただけではないのですか?


池上氏の『滋賀渡船2号』=『短稈渡船』説では、『滋賀渡船6号』を候補から除外するにあたって、稈が長い(2号<6号)ことを挙げています(草型もですが)。
しかしこれは兵庫県での試験の結果であり、福井県での試験の結果によると、なんと稈の長さが逆(2号>6号)になっています。
しかも『短稈渡船』と唯一合致していなかった特性、脱粒性が同じ「難」となっています。
さらに、「大正十五年一月 道府縣ニ於ケル米麥品種改良事業成績概要」(農林省農務局)では『滋賀渡船2号』ほどではないものの『滋賀渡船6号』も”『渡船』よりも稈が短い”と評価されています。
実は『滋賀渡船6号』=『短稈渡船』!?


また、農研機構で保存している『(滋賀)渡船3号』は、正体は不明ながらなんとその稈の長さは『滋賀渡船2号』と同じくらい。
実は『(滋賀)渡船3号』=『短稈渡船』!?


というか同じく現存していない『滋賀渡船4号』はどうなの?
これこそ『短稈渡船』じゃないの?

また奨励品種になっていない品種(系統)でも交配に使われた可能性はあるかと思います。
『渡船』の純系淘汰第一弾『い號』選抜系統について、『渡船い第4号』や『渡船い第90号』は脱粒性が『難』ですし、穂数型依りの『渡船い65号』(脱粒性「やや難」)や『渡船い第93号』(脱粒性「やや難」)もあったり…
このように『い號』選抜系統のどれかが兵庫県に渡った可能性は?

他にも包括的に推測すると「新しい『短稈渡船』の正体論」も展開することは可能です。
山田錦の父親『短稈渡船』とは?その正体を推測する【墨猫独自論】

…と、いろいろ言っても、何を言っても
すべて"推論"です

いずれにせよ資料が限られており、『短稈渡船』が現存していない以上、十分な検証も証明も出来ません。
そして関係機関が認定していないものを「山田錦の親だ」と売りたいがために、販売者側の都合で断定・表記して売るのっておかしくないでしょうか?(どうなんですか?)

『短稈渡船』とは別の『山田穂』の調査で白鶴酒造に質問した際に言われたのは
「昔の品種が現存していないことは当たり前なんだから、消費者だって似たような別の品種を使っていることはわかっているに決まってる
という旨のことでした。
これが世間の常識ですか?
そんなことがありますか?
「山田錦の親『短稈渡船』を復活!使用!」という謳い文句を見て、本当に復刻したと”勘違い”している消費者が悪いというのでしょうか?


あとがき~ネット情報の恐ろしさ~


まだまだ関係者への問い合わせはするつもりですが、ひとまず『短稈渡船』に係る公的機関からの回答が得られたということでまとめました。

しかし驚きなのは、間違いの発生から(池上氏の推論がこの問題の発端だとすると)15年以上経過して多くの人の目に触れてきたはずなのに、この”存在しない品種『短稈渡船』”が多くの日本酒の原料として使われ、それでいて問題視するような記事等がまったくと言っていいほど見つけられないことです。
ネット上で探せないからといって全くないとは決めつけられませんが、今現在(2019.7)も多くの蔵が平気で「『山田錦』の親を使用!」と銘打っていることからも、大きな問題になってないのでしょう。(そもそも問題なのか?という疑問もあるのですが)
挙げ句の果てにはこの「問題にされていない状況」を言い訳にして「誰にも指摘されていないんだから問題ないだろ」とか言っている酒蔵までいる始末です。

日本酒のライターさんとか大勢いても、やはり「米の品種」に関してそこまで知識もっているわけではない、もしくは品種名の正否に興味を持つ人間が今までいなかっただけの話でしょう。



今回の問題は故意に間違ったというよりは、理解の浅い人が、”『滋賀渡船2号』が『短稈渡船』ではないか?”という情報を本当に正しい事実だと思い拡散していくうちに、根付いてしまったものだと思われます。
そしていったん根付けば、ネット上どこを見ても同じ情報だらけ…
”情報の多様性”がウリのネットとは言え、ここまで間違い一色だと多様性も何もありませんから、間違いに気付ける可能性は非常に低くなります。

故意ではない…と言いつつも
「『短稈渡船』は現存していないが、最も近しいと思われる『渡船2号』を使用。山田錦の系統に思いを馳せて…」…やはり売り出すのにこういう文章では歯切れが悪いからという商業的理由が濃い?

…まさか本当に酒蔵が営利目的でわざと”山田錦の親『短稈渡船』!!!”としているなんてことは…ないよね?ないと言ってよ?



続編~JAみのりへ質問~


山形県鶴岡市にある亀の井酒造(株)では「くどき上手 短稈渡船44」という日本酒を販売しており、その中で「JAみのりから『短稈渡船』の種子を譲り受け、復刻させた」と紹介されています。

なので、種子を保存していたというJAみのりへの問い合わせを行いました。

①『短稈渡船』の種子はあるの?
②『短稈渡船』だという根拠は?
③『短稈渡船』だって指導したの?

回答
①ありません。『渡船2号』なら兵庫県から有償譲渡受けています。
②『短稈渡船』なんてありません。
③『短稈渡船』なんてありませんので指導もしていません。

まぁ…ですよね、という話。
でもやっぱり兵庫県からは「『滋賀渡船2号』と『短稈渡船』は似てるよ」と言う話を聞いていたそうです。
しかしこれで、JAみのりが震源地でないことははっきりしましたね(多分…片方の意見だけで断定は出来ませんが・・・)。



引き続き
関係JA、酒蔵への問い合わせを続けます…た↓






結論は…残念な結果に終わりそう…




参考文献

〇酒米品種「山田錦」の育成経過と母本品種「山田穂」、「短稈渡船」の来歴:兵庫農技総セ研報
〇酒米品種群の成り立ちとその遺伝的背景:日本醸造協会誌
〇業務功程 明治43年度~昭和元、2年度:滋賀県立農事試験場
〇業務功程 大正9年度~14年度:兵庫県立農事試験場
〇水稲及陸稲耕種要綱 昭和11年:大日本農会(農林省農務局)


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古い品種の間違いあれこれ

『短稈渡船』?
 『山田錦』の親に間違われている2品種








【番外関連】滋賀渡船「2号」「4号」「6号」と”飛び番”である理由は?





3 件のコメント:

  1. 過去の記事にコメントする無粋さをご容赦ください。
    今回TwitterのとあるRTで「日本酒に名前をつける」という趣旨のものが回ってきたので面白そうだと思い使用品種を検索してこちらにたどり着きました。
    そちらでは酒蔵と農家が協力し復活栽培したと表記されておりましたのでこのような経緯を知れてよかったです。
    よかったんですが名前を考える気力がちょっと削れちゃいました(笑)

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    返信
    1. 12TKさんでは…ない「匿名の方」ですよね?

      まずはコメントありがとうございます~
      いつどんな記事にでもコメント頂けるだけでうれしいデス~

      古い品種は基本一様に「栽培が面倒臭い」(病気に弱い、倒れやすい、化学肥料に弱い、籾も落ちやすいetc…)ことが多いので、復活・栽培にあたって酒蔵さんと農家さんの苦労が大きい、そのこと自体は間違いないと思います。
      そんな苦労して復活させた品種だからこそ、ちゃんとした情報を発信してほしいと思うのですが…
      コメントにある、名称募集している酒蔵がどこかは存じませんが、「山田錦の父親を使ったお酒!」なんて宣伝をしていないことを祈っております(;´・ω・)


      追伸
      酒蔵さんが作ったお酒の味や質を貶める問題ではないので、どうかいい名前をお考え下さい
      ( ;∀;)

      削除
  2. はい、匿名でございます。

    正確には日本酒を扱う棚卸さんが名前を募集されており酒蔵さんの名前等々伏せておられました。
    名前のヒントになるかなと思って稲の名前を検索してこちらにたどり着いた…という感じです。
    琵琶湖周辺の酒蔵さんという事でそちら連想の名前を考える方が多かったのでならば稲から…と思ったのですが…(´・ω・`)ムズカシイ
    返信ありがとうございました、お酒に罪はないので私もいい名前が選ばれるといいなと願ってます。

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