2020年10月3日土曜日

【粳米】福島40号~福笑い(福、笑い)~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『福島40号』
品種名
 『福笑い』(公称は『福、笑い』)
育成年
 『平成26年(西暦2014年)? 福島県農業総合センター』
交配組合せ
 『新潟88号×郡系627』
主要生産地
 『福島県』
分類
 『粳米』
米、擬人化、福、笑い、福笑い
福笑い「にこっ♪と笑っていきましょ♪」



「ふくしまプライド。」
ふくしま米をさらなる高みへ

日本一の米をつくりたい。


どんな娘?

天のつぶの背中を見て育った娘。
どんなときでも笑みを絶やすまいと誓った。
そしてどんなときでも現実から目を逸らすまいと誓った。

ドストレート毒舌気味率直な物言いになってしまいがちな天のつぶとは対照的に、物腰は柔らかく他人に甘い優しい。

福島の諸先輩達の頑張り、優秀さを知っているが故に、現状比較的低価格に甘んじている現状には内心非常に悔しい思いをしている。
見た目と人当たりの良さとは別に、なんとかしなくてはと思う決意は非常に強い。


概要

平成23年(2011年)東日本大震災による被災、そして原発事故による風評被害により、それ以降価格下落に悩んでいる福島県の農産物。
しかしながら米に関しては、震災以前は高品質の『コシヒカリ』産地として高い評価を受けてきており、穀検の食味ランキングでは獲得銘柄数で幾度か最多を数えるなど、高品質・高食味の米産地としての実力は間違いなくあります。

そんな福島県の清らかな水、恵まれた気候風土のもと、生産者が磨き上げた技術と米づくりへのこだわり、開発者の情熱が結集したプレミアムなお米が「福、笑い」です。
初の県オリジナル水稲品種『ふくみらい』は失敗、その雪辱を誓った第二弾オリジナルブランド品種『天のつぶ』も東日本大震災同年のデビューとなり、風評被害も相まってこれもまた低~中価格帯に甘んじています。
3度目の正直、福島県産米の挑戦が行われています。


「つくる人、食べる人、みんなが笑顔になり、幸せになりますように」そんな願いを込めて「福、笑い」と命名されました(「、」付きは品種名でも銘柄名でもないので愛称に近い扱いになる模様)。
「福、笑い」を選んでいただいた皆さまのもとに、とびっきりの笑顔と幸福が訪れますように。(福島県公式)

大粒の『福笑い』は「強い甘み」と「独特の香り」を売りにしており、柔らかめの食感です。
県産米全体のイメージと価格をけん引する役目を担うことが期待されています。

平成30年(2018年)「減反政策廃止」の数年前、東北・北陸を中心とした米どころ各県がこれを契機として高級路線のブランド米や、各県独自の品種を発表、売り出していく中、音沙汰がないように見えたのが秋田県と、ここ福島県でした。
そんな各県の動きには遅れながら(同じ後発組の秋田県よりは1年先んじて)、平成30年(2018年)9月の時点で『福島40号』『福島44号』の2候補があり、消費者、流通業者、飲食業者らを対象にした調査を踏まえ、1品種に絞り込むと発表されていました

そして令和元年(2019年)に福島県の新ブランド品種『福島40号』が発表されます。
同年5月には県の奨励品種に指定、9月からは名称公募を行い、令和2年(2020年)2月10日に名称を「福、笑い」と決定・発表し、令和2年8月にパッケージデザイン(デザイナー:寄藤文平氏)が発表となりました。


「田園や米づくりにまつわる世界」をかたちにし、あたたかみや手づくり感のある「新しいプレミアム感」を表現しているそうです。

令和2年度(2020年度)は期間と店舗を限定しての先行販売のみ。
11月9日に福島市でPRイベントを開催、11月10日より東京、神奈川、福島の3都県の百貨店や米穀店、インターネットの合計25店で先行販売を開始。
先行とはいえ販売初年度となったこの年の生産量は、福島県内の農家13人(約6.6ha)により約37t。
この年の買い取り価格は60kgあたり18,000円前後と、同県産『コシヒカリ』より6,000円ほど高かったそうです。

令和3年度(2021年度)より本格デビューを予定しています。
生産予定は、作付面積25haで約130t。
今後も県やJAでつくる協議会が生産量を調節して、高価格の維持とブランドの確立を目指すと思われます。

他県ブランド米と同様に生産者登録制により、誰にでも作れる品種にはなっていません。
要件でも特筆すべきは「第三者認証GAP(農業生産工程管理)の取得」で、さらにその第三者認定GAPを取得した農家3戸以上で構成する「研究会」単位でしか生産に取り組むことができません。(R2年度は4研究会が認定)
減農薬や有機肥料使用などは謳われていませんが、こういった条件を課しているのは令和2年時点で国内唯一ではないでしょうか。(山形県の『雪若丸』の栽培要件にも一部GAPは課されていますが非認証のGAPです。)

出荷基準としては篩目1.9mm以上、粗タンパク質含量6.4%以下(水分15%換算)となっており、基準以下の玄米も含め、全量出荷が義務づけられています。



名称公募(そしていろいろと複雑なその”名称”)

数多くの高級志向のブランド米たちと同様に公募を行いました。
単なる応募・採用ではなく「皆さまからいただいたネーミング案をブラッシュアップして決定します」と、最初からある程度の改変を公称していました。

令和元年(2019年)9月2日から10月6日の期間でネーミング案を募集(専用フォームおよび応募用紙にて)。

『福島”40”号』にあやかってか、最優秀賞(1名)には賞金40万円と、副賞として福島県産品2万円相当を贈呈。
優秀賞(当初予定5名→最終9名)に福島県産品2万円相当、ということで応募はスタートしました。
「福島県産品2万円相当」の中身としては

・福島牛1kg
・福島県産『天のつぶ』40kg
・全国新酒鑑評会金賞受賞酒1本
・6次化商品「ふくしま満天堂」(福島県産品の生産・加工・販売プロジェクト商品)

とかなり豪勢な顔ぶれ。
『秋系821(仮称)』は賞金100万円という高額で世間の目を引きましたが、福島県もかなり副賞には力を入れていたことがわかるのではないでしょうか?(しかし結果…)

令和元年12月13日に応募数が発表され、その総数は6,234点。
過去のブランド品種たちの応募総数~【関連記事】新品種台頭 名称公募得票数のマジック~と比べ、副賞を勘案して公平に見ても、正直言って少しばかり寂しい応募数…なんてことはどうでもいいんだ売れてくれ!
アドバイザーチーム(以下のメンバー)による第一回名称ブラッシュアップ会議が11月25日に、12月23日にも第二回会議が開かれ、応募された名称のブラッシュアップ(選定作業)が行われます。

・総合アドバイザー 箭内 道彦 氏 福島県クリエイティブディレクター
・米の専門家 澁谷 梨絵 氏 株式会社シブヤ 代表取締役
・米の専門家 小久保一郎 氏 有限会社こくぼ 取締役
・料理人 野﨑 洋光 氏 分とく山 総料理長
・流通関係者 正田 峰仁 氏 株式会社髙島屋MD本部 食料品・リビングディビジョン バイヤー
・流通関係者 横田 純子 氏 特定非営利法人素材広場 理事長


最終的に決定された名称は「福、笑い」(応募された原案は「福笑い」)。
令和2年(2020年)2月10日の知事定例記者会見で発表されました。
原案応募者は10名で、抽選の上で最優秀賞1名(静岡県の20代男性)と優秀賞9名を決定しました。
わざわざ「、」がついていることについて、内堀福島県知事の記者会見での回答をそのまま以下に載せます。

「福、笑い」には「、」が付いております。ご存知のとおり、「福笑い」という一般的な言葉がありますが、このお米の新しい名称には、福島の「福」、笑顔の「笑い」、その両方が凝縮されているということを、より分かりやすく表現出来るよう、「、」を付けております。

ということで…このブログではお馴染み。
「決定された”名称”」と記載しておりますが、つまりこれは「品種名」ではない、ということです。
公式にも商品の表示上も「福、笑い」で統一されるでしょうから、一般消費者の方には一切関係ない話ですが品種名は『福笑い』(句読点なし)です。

というのも、品種登録の際の”品種名”には句読点を使用することができないので、おそらくこういう対応になったのではないかと思われます。『スーパーバイオレットアクエリアスピンクレディ平成白雪』もだめ
ちなみに商標登録も『福笑い』(句読点なし)です…が、類似判定で包括的に「福、笑い」もカバーできるから良し、としたのか、品種登録前の権利確保のために登録品種名と同じくしたのか…(後者は必須行為)福島県に聞いてみないとわかりませんね。
兎にも角にも

・販売名・公称「福、笑い」
・産地品種銘柄名『福笑い』(令和2年度までは『福島40号』でした)
・品種名『福笑い』

と、なかなか正確な名称を考えると頭の痛い品種です(でもこういうのがスタンダードになっていくのかな…)



育種経過



平成18年(2006年)より品種開発が開始されます。

『新潟88号』を母本、『群系627』を父本として人工交配、その後代から育成されました。

奨励品種指定の令和元年(2019年)まで実に14年の期間を要しています。(育種期間は?)


系譜図


福、笑い 系譜図
福島40号『福笑い(福、笑い)』 系譜図




参考文献

○福、笑い公式HP:https://fukuwarai-fukushima.jp/
○知事記者会見 令和2年2月10日(月):https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/chiji/kaiken202002010.html
○「福、笑い」生産に係る登録制実施要綱:https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/399690.pdf




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5 件のコメント:

  1. 販売名・公称は「福笑い」が、品種名は「福、笑い」...なんだか複雑な感じですね。
     育成年もよくわからず産地品種銘柄名も不明。生産は集団農家(しかも色々な条件付きで結ばれた)でしか今の所できない。「ふくみらい」が誕生するも震災の影響で失敗に終わり、震災同年にデビューした新品種「天のつぶ」も中の中程。
     福島県の新たなエース米として頑張って頂きたいものですね。にしても最近(たった数件だけど)クロネコさん未定稿多くn(殴
     by12TK

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    1. 販売名・公称は『福、笑い』(句読点あり)
      品種名は『福笑い』(句読点なし)
      商標登録は今のところ『福笑い』(句読点なし)…でございます(複雑ですよね(;゚ロ゚))。
      『ひゃくまん穀』にしろ『秋系821』にしろ、重箱の隅をつつくようなことしていないで、世間で言われているとおりに名称を書いていれば混乱は少ないと自分でも思うんですが
      ここは”稲品種”擬人化ブログなので、やはり「稲の品種名」は外せないところです(^o^)

      ちなみに広告設置はしてませんが出来るだけ多くの人に見てもらいたいなぁ、とは思っているので
      SEO対策って訳ではないんですが、情報が出そろって完全なページ作ろうと思って出遅れるとまったく検索で上位の方に出てこなくなってしまうんですよ…もうそのお米の販売ページばっかり検索上位に出てしまって…
      関連ページ数が少ない今のうちにとりあえずページ作ってアクセスしてもらえると後々のアクセス数も違う…気がするので拙速ですがこの娘達のページ作りました(でも肝心の擬人化ががが)

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  2. なぜこの子の商標登録が「福笑い」なのか基本的なことをうっかり忘れてました。福島40号にとって今の段階での商標登録は品種登録が行われるまでの「仮押さえ」のようなこと(品種登録ができていれば商標に制限をかけられるが、品種登録完了までに商標を取られるとまずい)なので、当然品種名と同じ「福笑い」で申請しなければ意味がないです(なお、このような理由で出願した商標登録は品種登録が商標と同じなので名称変更しなさいという通知が来たときに取り下げる)。
    だから、もしも商標「福、笑い」を使う気があるなら、品種登録が完了したあと商標登録出願するかも。

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    1. あ、本文に言及されてましたね。うっかりしてました

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    2. 読み返したらその部分、ちょっとわかりにくかったので修正しましたです。
      常道でいくなら
      品種登録確定→商標「福笑い」取り下げ→商標「福、笑い」申請
      …なのでしょうか

      個人的に気になるのは産地品種銘柄がどうなるか…句読点は果たして使えるのか!?
      結局『ひゃくまん穀』コースの可能性が高いのかな、とは思いますが。

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