2020年10月8日木曜日

【WCS・飼料米用】奥羽飼395号~べこごのみ~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『奥羽395号』(『水稲農林425号』)
品種名
 『べこごのみ』
育成年
 『平成19年(2007年) 東北農業研究センター』
交配組合せ
 『ふくひびき×97UK-46』
主要生産地
 『東方中北部以南』
分類
 『飼料用(WCS・飼料米兼用)』

どーもなっし。べごごのみだべ。



どんな娘?

東北べこコンビの一人。
姐さん格のべこあおば同様、なぜか訛っている。
どこの方言かははっきりしない。

夢あおば、べこあおばは東北における先輩格で、彼女らより早い仕事が出来ることがウリ。
年齢は一番下だが常に先頭に立つ、東北勢(青森県除く)の引っ張り役。


概要

『べこごのみ』は「東北地方で牛を意味する”べこ”を名前に付けることにより、東北地域において牛が好んで食べ、飼料イネ栽培が振興されること」を願い命名されました
『べこあおば』もそうですが、「べこ=牛」と特に西日本の方はすぐにわかる・・・というかイメージできるでしょうか?

米不足の時代から過剰生産傾向となった昭和の時代からさらに平成へ、人口減少も始まっており、より一層の主食用米の減産=転作が必要とされていました。
しかし水田として耕作した場合の多様な効果、水田としての機能の保全を考えた場合、畑作ではなく同じ水稲の作付をすることが(労力の観点から見ても)望ましいことは事実です。
そして米が余っている反面、畜産業における飼料の国内自給率は25%程度(2008年当時)と低く、世界的な穀物需要の高まりによる価格高騰といった状況も踏まえ、国産自給飼料の増産は急務と考えられていました。

平成11年(1999年)以降、東北地域でも稲WCS(発酵粗飼料)用の作付が拡大しており、特に東北地域847ha(2005年時点)の作付の内、岩手県(113ha)及び秋田県(286ha)の2県で全体の約50%を占めていました。
2県はいずれも東北中北部に位置しています。
熟期の遅い飼料用品種しかないような状況だった東北で、中生の晩に属する『夢あおば』、続いて『べこあおば』が育成されましたが、それでも東北中部以南にしか適しておらず、WCS用稲栽培の盛んな東北中北部に適する、より早生の飼料用品種が求められていました。
その要求に応えることが可能になったのがこの『べこごのみ』です。
東北地域中北部以南をカバーする飼料米用・WCS用兼用品種で、『べこごのみ』よりも熟期の早い早生品種となっています。


育成地(秋田県大仙市)における熟期は「早生の早」で、主食用基幹品種と競合することなく黄熟期刈り取りが可能です。
稈長は79~87cm程度の「中稈」で、その稈は太く、剛柔は「やや剛」とされ、耐倒伏性は「強」です。
いもち病圃場抵抗性は葉いもちが「強」、穂いもちが「中」と判定されています。
真性抵抗性遺伝子は【Pib】【Pik】と推定。
耐冷性は「やや弱」であるものの、地上部を収穫するWCS用として考えれば、不稔の発生も問題にならないものと思われます。


飼料適性

地際刈取りした際の乾物収量は1.4t/10aと比較試験の際には『べこあおば』よりも多収で、なにより稈長が『べこあおば』よりも長いために、泥混入防止の為に地際から高めに刈り取りを行った際にも、収量減少率が少なくなる利点があります。

TDNは60%程度で、TDN収量は『アキヒカリ』より5%程度多収です。
黄熟期収穫した『べこごのみ』のVスコアは97以上と高品質になる実験結果も出ています。

育種経過

『べこごのみ』は東北農業研究センターにおいて『ふくひびき』を母本、『97UK-46』を父本として交配した後代から育成された品種になります。

母本の『ふくひびき』は中生の安定多収品種です。
父本となった『97UK-46』は多収系統となっています。

『ふくひびき』は東北地方で安定して収量性のある中生の食用品種です。
『97UK-46』は中国雲南省の多収系統の血を引く『奥羽342号』を父本、山形県の『雪化粧』を母本とした交配後代で、多収系統となっています。

平成9年(1997年)に東北農業試験場水田利用部において人工交配を行い(交配番号『奥交97-160』)、同年冬期にF1個体の養成を行いました。
平成10年(1998年)にF2世代800個体を集団養成し、その中から22個体を選抜しました。
平成11年(1999年)のF3世代からは系統育種法による選抜固定が行われます。
前年の22個体を22系統としてその中から5系統15個体を選抜します。
ただ、翌年すぐの平成12年(2000年)から平成13年(2001年)の間は系統の養成が行われず、育成継続の是非を検討するため種子保存されていました。

その後東北中北部における主食用品種よりも早期に黄熟期収穫の出来る早生の飼料用品種が求められ、平成14年(2002年)にこの系統が復活されます。
5系統群15系統とした中から熟期が早く、黄熟期乾物全重が高い系統の選抜が行われ、2系統10個体が残ります。

平成15年(2003年)には『羽系飼793』の系統名が付され生産力検定試験、特性検定試験が実施されます。
この年は2系統群10系統の中から1系統5個体を選抜します。
以降1系統群5系統として1系統5個体を毎年選抜し、固定を図っていきます。
平成16年(2004年)のF6世代で『奥羽飼395号』の地方系統名が付され、希望する関係県や関係研究機関に配布され、地方適応性や飼料適性の検討が行われます。

結果熟期が早く、東北中北部における主食用品種よりも早く黄熟期収穫が可能であること、牛の飼料として適していることが明らかになりました。
また特に秋田県からは稲発酵粗飼料として高い評価を得、東北地域中北部における稲発酵粗飼料の振興を図れるものとして、平成19年(2007年)に品種登録出願が行われました。




系譜図

奥羽飼395号『べこごのみ』 系譜図


参考文献

〇直播栽培における飼料用稲新品種「べこごのみ」の生育特性:秋田県農林水産技術センター農業試験場
〇東北地域向けの早生稲発酵粗飼料専用新品種「べこごのみ(奥羽飼395号)」 _ 農研機構
〇東北地域向けの早生の飼料イネ専用品種「べこごのみ」の育成:東北農研研報





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