地方系統名
『奥羽飼387号』(『水稲農林408号』)
品種名
『べこあおば』
育成年『平成17年(2004年) 東北農業研究センター』
交配組合せ
『オオチカラ×ミズホチカラ』
主要生産地
主要生産地
『東北中部以南』
分類『飼料用(WCS・飼料米兼用)』
どこの方言かははっきりしないがかなり訛った話し方をする。(怒ったときのどまんなかとは話が通じやすい)
大食らいが多い飼料用品種達の中でも特に大食いで名を馳せた。
夢あおば以上のアレを誇りウェイトバランスを取るのが難しそうなものだが、足腰の強さもさらに夢あおば以上、ふらついたり転んだりはほとんどない。
牛と話すことができるとかできないとか…真相は闇の中。
概要
東北地域に適した飼料稲専用品種『べこあおば』の擬人化です
名前は、【東北地域の「牛」を表す方言である「べこ」を名前に付けることにより,「べこ」が好んで食べ,東北地域に広く普及すること】を願って命名されました。
「べこ」を知らない西日本の方にはわかりにくいかもわからない(東北育ちの管理人としては非常にわかりやすい)ですね。
管理人の周りではむしろ「べご」の方が近いかも(どうでもいい
『べこあおば』育成までは東北地方の飼料用品種は晩生のもの(『クサユタカ』『クサホナミ』『ホシアオバ』等)が多く、これらは東北地域での栽培に適さないものでした。
その点『べこあおば』は熟期が「中生の晩」と比較的早く、さらに直播栽培にも適しており、東北地域の低コスト飼料用稲栽培に貢献するものとして期待されました(しかし使用実態が見えなくて悲しい)。
また極多肥条件での栽培に耐えられる特性は単なる多収品種としての利点だけでなく、家畜排泄物処理問題に於いても、水田に堆肥を利用することによる循環型農業(飼料稲を栽培し、その排泄物はまた水田に還元)の一端としての役割も担えるものとされました。
名前に「牛」が入っているだけあって耕畜連携が見据えられた品種のようです。
出水期は育成地(寒冷地北部)において「中生の晩」に属します。
東北中部以南に適しているとされ、東北地域北部まで行くと熟期が遅れ、主食用米(『あきたこまち』等)の収穫と競合してしまいます。(より熟期が早いのが『べこごのみ』)
稈長は70cm程度と短稈で、その稈は太く、稈質も「剛」の判定で、耐倒伏性は「強」と倒れにくい品種で、直播栽培においても『ふくひびき』などよりも優れた耐倒伏性を発揮します。
その為、家畜ふん堆肥を多量施用した極多肥栽培下(窒素施肥量18kg/10a)でも倒伏しない強さを誇ります。
いもち病への真性抵抗性遺伝子は【Pita-2】と推定され、この抵抗性を侵すレースが殆どないために、現状では圃場での自然発病は認められません。
ただし、圃場抵抗性は葉いもちが「やや弱」、穂いもちが「弱」とされ、親和性レースの発生により激発する可能性が高くなっています。よって状況に応じて適切な防除が必要です。
試験における収量(粗玄米重)は約700~900kg/10aと多収で、極多肥栽培下で970kg/10aや1,000kg/10a超の記録も持ちます。
植物体全体を収穫する際、平均で1.70t/10a(黄熟期・乾物重)の収量が見込まれ、平成13年(2001年)の試験では約2.0t/10aの高収量を示しています。
飼料適性
『べこあおば』は米粒が非常に大きいために一般用品種との識別性を持つとされています。
黄熟期収量(乾物重)は1.37t/10aで『夢あおば』よりもやや多く、直播栽培における黄熟期収量は1.28t/10aと落ちますが『夢あおば』と同程度です。
刈り取りの際に泥が入ると牛の嗜好性が落ちることから、飼料用稲では刈取りの際に地際から15cmほど高い位置で行われますが、その際に残ってしまう茎や葉は収穫損失となってしまいます。
『べこあおば』は短稈(全長が短い)ため、収穫損失率が高くならないか心配されましたが、現地試験において長稈の『夢あおば』などと大きな差はなく、実用上の問題はないものとされています。
飼料栄養価は近赤外線工分析法による推定ではCP(粗タンパク質)が5~6%で、Oa(高消化性繊維)が3~4%等となっており、TDN(可消化養分総量)は約62%となっています。
そこから算出されるTDN収量は『夢あおば』よりも1割程度多収です。
育種経過
『べこあおば』は東北地域に適した飼料稲専用品種の育成を目標に『オオチカラ』を父本、『西海203号(ミズホチカラ)』を母本として交配した後代から育成された品種です。
◇母本の『オオチカラ』は北陸農業試験場(当時)で育成された大粒の多収品種です。
◇父本の『西海203号』は九州農業試験場で育成された多収”系統”です。後に『ミズホチカラ』と命名される系統ですが、この時点ではまだ正式には品種化されていませんでした。
平成8年(1996年)に人工交配が行われ(交配番号『奥羽交96-746』)、冬期間に宮崎県総合農業試験場(当時)においてF1個体が養成されます。
翌平成9年(1997年)に東北農業試験場(当時)水田利用部でF2世代210個体を養成し、その中から24個体を選抜します。
平成10年(1998年)以降は系統育種法により選抜、固定を図っていきます。
F3世代にあたる平成10年(1998年)、前年の24個体を24系統として育成し、9系統が選抜されます。
平成11年(1999年)に9系統群45系統が養成され、1系統が選抜されます(系統番号『羽系668』-2745)。
平成12年(2000年)は平均的な熟期の系統に『羽系668-5』の系統番号を付し、1系統群5系統を養成し、2系統を選抜。
同年以降1系統群5系統養成、1系統選抜が繰り返されます。
この他に、生産力検定試験、特性検定試験を実施しています。
平成15年(2003年)、F8世代から『奥羽飼387号』の地方系統名を付され、希望する各県や関係試験研究機関への配布が行われました。
その中で栽培、給与試験等が行われ、地方適応性や飼料用稲品種としての適性が検討されます。
その結果、熟期、収量性、耐倒伏性、飼料特性の面で東北地域に適した飼料用稲品種としての適性を持つことが認められました。
東北地域の飼料用稲栽培の新興を図れるものと判断され、平成20年(2008年)に命名登録に出願し、水稲農林480号『べこあおば』として命名登録されました。
同年、種苗法に基づく品種登録の出願も行われています。
育種最終年度の平成16年(2004)年時点でF9世代でした。
参考文献
○直播栽培に適する稲発酵粗飼料専用品種「べこあおば」の育成:東北農研研報(2016)
○牧草サイレージにおける揮発性塩基態窒素含量とpHおよび水分含量との関係:篠田 英史
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またまたお早い更新で...お疲れ様です。
返信削除「べこあおば」の直播栽培で苗立は「ふくひびき」に劣る。が、「クサユタカ」、「夢あおば」よりも優れている上、耐倒伏性は「クサユタカ」や「ふくひびき」よりも明らかに優れている。また、堆肥を多量施用した極多肥条件においても倒伏せず耐肥性にも優れている。...といろいろな飼料用米と比較したところ、優れた点とダメn...劣っている点が自分の中では優れた点が多い気がします。ですが「夢あおば」も負けていないはず。ミズホチカラも同じく、あれ何か一つ忘れてる? by12TK
あのもしかして(記事に書かれたことと)同じこと言ってます?だとしたらすみません。
削除まだまだ稲については勉強中でして...
by12TK
育成における理論値はとりあえず勝っているから採用されたんでしょうけども
削除やはり実態としての栽培状況が知りたいです…
まぁそれも実態として栽培面積が多いだけで優劣が付くわけでもないんですが
実戦でどうなのか?は気になるところです