2015年10月4日日曜日

【粳米】越南17号~コシヒカリ~ 品種群~コシヒカリBL~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『越南17号』(水稲農林100号)
品種名
 『コシヒカリ』
育成年
 『昭和31年(西暦1956年) 福井県 県立農事試験場』
交配組合せ
 『農林22号×農林1号』
主要産地
 『日本全国』
分類
 『粳米』


地方系統名
 『       』
品種名
 『コシヒカリ新潟BL(品種群コシヒカリ新潟IL)』
育成年
 『新潟県 県農業総合研究所作物研究センター』
 ※他「富山農試」「福井農試」「愛知農総試」等にもBLのNILあり
交配組合せ
 『いもち病抵抗性遺伝子所有品種へのコシヒカリ戻し交配』
主要産地
 『新潟県』※富山県でも銘柄指定はあるが全面切り替えは新潟県のみ
分類
 『粳米』
「あらあら~そんなにいじけないの」「う…五月蠅いですわ、コシヒカリ…」


名前の由来は【北陸地方の国々を指す「越の国」と「光」の字から「越の国に光かがやく」ことを願って】
育成は福井県ですが、命名は新潟県です。
…ただし実際は「『越南17号』にこんな素晴らしい名前を与えるのはもったいない」と言われていたとか。(初期候補名は『ユキコマチ』『コシニシキ』)


新潟県や福井県のホームページ等、その育種過程はインターネット上ではさらっと紹介されていますが、このコシヒカリが育種され普及されたことは、まさに奇跡の中の奇跡。
『コシヒカリ』を知る日本人は居ても、この奇跡の事実を知る日本人は非常に少ないでしょう。

…というか育種過程については正直「事実を知る人が少ない」どころか間違った情報が散見されます。
・『コシヒカリ』は栽培が難しいものの、味が良いことが認められて採用された。
・『コシヒカリ』は新潟県が産んだのであって福井県はほぼ何もしていない。
・福井県はすごい先見の明があって『コシヒカリ』を育成できた。
・新潟県はすごい先見の明があって『コシヒカリ』を奨励品種に採用した。
・新潟県は最初から一貫して『コシヒカリ』を推していた。
・新潟県が交配し、途中福井県が育成し、最終の育成は再び新潟県が行った。(福井県はほとんど何もしていない)
これ全部誤りです。(少なくとも裏付けする事実がないものがほとんどです。)

交配は新潟県で、その後雑種第二代の採種までも新潟県で行われています。
ここで福井県に送られ、雑種第三代から系統番号が付される雑種第八代まで育成が行われました。
雑種第八代の後、適応性試験のために各都府県に種子が送られましたがこの時点で育成をは完了しています。
配布のために新潟県でも種子増産は行っており、この時点で『越南17号』の固定は完全ではなかったとのことでしたが、それは「育種」という性質のものではありません。
奨励品種として採用した新潟県(というより杉谷場長)がここで「新潟県が『越南17号』の最終の選抜・固定を行った」という自論を展開しており、これが変な伝わり方をしているのか、誤った情報が反映された文章も時折見かけます。

育成・初期選抜「新潟県」
育成・選抜・固定「福井県」
命名・奨励品種採用「新潟県」

途中経過が複雑だったりするのでネット上は誤りだらけですが、奇跡の品種『コシヒカリ』、大まかな経過はこの通りです。




『亀の尾』、『旭』の良食味、そして『大場』『愛国』『上州』『神力』と始祖米達の特性をその身に(意図せず)集結させた、言わずと知れた日本の米の女王。
『新潟県(南)魚沼産コシヒカリ』と言えばおおよそ米の銘柄に興味がない人でも日本最高峰のお米として聞いたことぐらいあるはずです。
そんな『コシヒカリ』と、『コシヒカリ(新潟)BL』の擬人化です。
ただし、その中身は少し複雑です。

コシヒカリは極良食味を持つ品種ですが、施肥を誤ると簡単に倒伏し、またいもち病にも弱いという決定的な欠点があります。
それでも尚、彼女は全国でも最大の作付面積を持ち、気温への対応適正の高さを物語っています。
しかしやはりいもち病に弱いというのは頂けない…ならば、と生み出されているのが『コシヒカリBL』です。

コシヒカリBL銘柄指定品種(H25時点)
『コシヒカリ新潟BL』銘柄指定 1,2,3,4,10,11,13号 計7種1群【全面切替】
『コシヒカリ富山BL』銘柄指定 1,2,3,4,6号        計5種1群
と、このように『コシヒカリBL』は違ういくつかの品種を総括して『品種群』としています。
目標のいもち病抵抗性遺伝子のみを『コシヒカリ』に導入するため、5~7回程度の『戻し交配』を行い、ほぼコシヒカリと同形質でいもち病抵抗性を持った品種を産みだしたのです。

まずここで一点。
流石に今現在ではもういないかとは思いますが、この戻し交配による遺伝子の導入すら「遺伝子組み換えだ!危険だ!」と一部のぴーとそれに乗せられた有象無象が騒ぎたてました。
クローン作物でも食べてなさい(でもそれだって元は…)。

さて、コシヒカリと同じ性質なのに、いもち病に強く、その分農薬の散布回数も減らせると「環境に優しい」の触れ込みで、「偽新潟産コシヒカリ」に頭を悩ませていた新潟県は、『コシヒカリBL』全面切り替えへと踏みきります。
詳しい経緯や思惑は後に語るとして…そう、私たちが日頃目にしている『新潟県産コシヒカリ』(無論魚沼産コシヒカリも)はほとんどが『コシヒカリBL』なんですね。
一部自家栽培で『コシヒカリ』を育て続けている農家さんもいますが、98%が既に切り替え済みとのこと。
実際の収穫量の何倍もの米が『魚沼産コシヒカリ』として世に出回っている現状に新潟県も業を煮やしていました。これで遺伝子判別が可能なわけです。

またここで二点目。
『コシヒカリBL』の切り替えに対し
世間からは「偽装表示だ!」。
農家からは「不味い!生育特性が違いすぎる!」
との批判が噴出。
どの程度の規模であったかはわかりませんが、やはりこういう声が出れば一部のぴーとそれに乗せられた有象無象が有ること無いことまた騒いだのでしょうね。
新潟県の食味試験やアンケートの結果を「信用ならない」とか言って直売している農家産も多く、謎の「食味比較表」のようなものを載せていることもありますが、何を基準に比較しているかもわからないそっちの表の方がよっぽどうさんくさいです。




と、日本一の米の看板を背負いながらも、なかなか順風満帆の人生とはいかない『コシヒカリ(新潟)BL』。ですが高飛車なお嬢様人格で、そんな批判どこ吹く風、日本の米の頂点に立ち続けています。
そんな彼女の人知れぬ苦悩を一番わかっているのは、やはり『コシヒカリ』ではないでしょうか?

ちなみに
日本穀物検定協会の食味ランキングで『魚沼産コシヒカリ』が平成27年現在で唯一の27年連続特A獲得、とされていますが、平成17年度からは『コシヒカリ新潟BL』へ切り替えているので、正確には同一品種での連続特Aではない…のかも。
※正確には新潟県産コシヒカリは、コシヒカリBL四種の組み合わせ『コシヒカリIL』となります。
越南17号『コシヒカリ』系譜図

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブログ アーカイブ

最近人気?の投稿