2017年12月20日水曜日

【粳米】岩手107号~銀河のしずく~ 【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『岩手107号』
品種名
 『銀河のしずく』
育成年
 『平成27年(西暦2015年) 岩手県 県農業研究センター』
交配組合せ
 『奥羽400号×北陸208号』
主要産地
 『岩手県』
分類
 『粳米』
『銀河のしずく』ですよ~!



白くてつややか、かろやかな食感


岩手県ブランド米戦略”銀・金”の双璧を成す『銀河のしずく』の擬人化です。


どんな娘?

ちょっと打たれ弱くて生真面目な金色の風とは対照的なお姉ちゃん。
良く言えば些細なことは気にしないおおらかさ、悪く言えばちょっといい加減な性格を持っていますが、あくまでも妹を盛り立てる心遣いだけは決して忘れません。

岩手県出身で初めて大々的に表舞台に出ただけあって、先輩品種にも物怖じしない度胸も兼ね備えた娘です。


概要

粒が大きく、粘りが程よくかろやかな食感、冷めても変わらない美味しさの品種です。

立場としては姉になるのですが、最高級路線を歩む妹『金色の風』の次点ポジション…なのかな?
…山形県の”姫・若”だって負けな(略

岩手県中部、および沿岸部で作付可能な良質良食味の岩手県オリジナル品種として、主に『あきたこまち』からの作付転換を担います。
食味ランキングでの特A獲得等、順調に評価を上げることに成功しており、相対取引価格も県内で高い部類となっています。(R5現在)
令和5年(2023年)に全農岩手県本部発表によれば、令和8年(2026年)までに販売数量を5万トンまで延ばす計画だそうで、代わりに県内の『あきたこまち』や『ひとめぼれ』は減産となる見込みです。

ロゴマークの八角形は”米”そのものを表現。また、”お米を作り上げる八十八の工程”、”末広がりの未来へ”の意味を込めて。そして八角形の角を丸くし、色にニュアンスを加えることで食味の特徴である「かろやかな口あたり」「ほのかな甘味」を表現しているとのこと。
八角形の紋様は、上部のひし形は”銀河の星の輝き”を、下部は”こぼれ落ちるしずく”を表現しています。
ロゴマークの9色には以下のような10の美味しいお米のポイントを表しています(順不同)。
…9色なのにポイントは10あるとはこれ如何に?
妹に当たる『金色の風』と同じ…ようで同じでなかったりします。

ポイント意味
無色改良白さと良食味を追求した品種改良
太陽稲の生長を促す輝く太陽
灰色銀河美味しいお米を育む銀河の夜空
濃い水色澄んだ空気、爽やかに広がる夜空
大地元気な稲がすくすく育つ豊かな大地
肥料美味しいお米を育てる肥料設計
水色清らかな水をたたえるたくさんの川
茶色たい肥や稲わら等による土づくりの徹底
桃色お米づくりに関わる人々の愛情
黄色豊かな稔り黄金色に輝く稲穂の波

よくよく見るとロゴタイプデザインにも細かな表現がありました。
『銀河のしずく』の
・『河』のさんずいにはしずくのデザインがあり”美しい銀河から今まさにこぼれ落ちようとするしずく”を表現。
・「ず」の濁点もしずくに見立てた表現になっています。
”ずっと見ていても飽きのこない、やさしく軽やかでありながら味わい深く、生命観をも感じさせるお米の食味を表現したロゴタイプ。”


育成地での出穂期・熟期は『あきたこまち』より2~3日遅い「中生の中」。
耐倒伏性「やや強」、耐冷性「極強」、耐病性「やや強」と栽培特性も優れます。


名称公募

平成27年(2015年)、主力オリジナル品種が不在だった岩手県で、農家待望(だと想像)となる食味ランキングで特A獲得が期待される新品種『岩手107号』の名称公募が開始されます。

公募のポスターによる「岩手107号は、こんなお米です」による宣伝文句は
「黄金の國、いわて。」が育んだ、白く艶やかに炊きあがるお米
心地よい食感がもたらす、あっさりとした粘りと噛むほどに広がる甘み
食味ランキング最高位の「特A」評価が期待できる、岩手県待望の新品種
「岩手107号」は、岩手の本気が生んだ、食卓の新しい主役となるお米です。
というものでした

募集期間は平成27年(2015年)7月1日~7月31日の間で、はがきか専用ホームページからの応募ができました。
最優秀賞(1名)には賞金10万円と『岩手107号』60kg、優秀賞(1名)に賞金5万円と『岩手107号』10kgが用意されていました。

名称公募への応募数は県内外、そして海外からの応募も含めた8,168件。
この中から名称選考委員会が候補名称を12点まで絞り込み、さらにそこから消費者等からの意見も踏まえて、選考を進めました。
そして最終的に平成27年(2015年)11月26日、盛岡市の「エスポワールいわて」で開催された新名称発表会において新品種名『銀河のしずく』が発表されました。


名前の由来は
【銀河】 …キラキラと光る星空から、お米一粒一粒の輝きをイメージ。
      また、宮沢賢治の作品のタイトルから「岩手」をイメージ。
【しずく】…お米の白さ、つや、美味しさを表現。



ロゴマークは平成28年(2016年)3月25日、「生産・販売キックオフイベント」において発表されています。(ロゴが持つ意味は前述の通り)


育成経過

育成開始当初、岩手県では『ひとめぼれ』『あきたこまち』の2品種が作付面積の約8割を占め、日本穀物検定協会の食味ランキングにおいても特Aを獲得するなど、良質米を生産していました。
しかし、対して岩手県オリジナル品種は1割以下の作付面積でしかなく、食味ランキングでも特A獲得に至らない状況が続いていました。


岩手県中部及び沿岸部で主力でありながら耐冷性・耐病性に劣る『あきたこまち』に代わる良質良食味品種の早急な育成と普及が求められていました。

ということで
平成18年(2006年)県中央部向けの良食味米の開発を主眼に母本『奥羽400号』、父本『北陸208号』として人工交配、得られた種子は51粒。
母本の『奥羽400号』は耐冷性と耐病性に優れ、父本の『北陸208号』は『コシヒカリ』並みの良食味が特徴でした。

同年12月から翌平成19年(2007年)4月まで、温室内でF1の29個体を養成。
同じく平成19年(2007年)は世代促進。
F1から得られたF2種子は全粒採種、全量混合播種。
F2の養成個体は700個体。
F3世代は2,000個体養成。
平成20年(2008年)に2,000個体を一株一本植えで選抜を開始。
圃場で短稈かつ強稈の優れた草姿の個体70個体を選抜し、さらにその中から玄米品質に優れる13個体を選抜。
平成21年(2009年)、前年度選抜した13個体を系統として、1系統につき40個体を系統養成。
葉いもち病圃場抵抗性検定及び耐冷性検定をこの世代から開始。
13系統の中から圃場で草姿の良い9系統を選抜し、さらに「味度値」「耐冷性」「玄米品質」に優れる3系統が選抜されます。
この3系統からさらに3個体/1系統選抜しました。
(平成22年(2010年)には選抜された13個体に対して食味試験を実施…と公式HPには記載ありますが、これは間違いのようです。)
平成22年からはF6~F7世代が生産力検定に供試されます。(食味試験もここで)
対象は前年度選抜された3系統9個体。これを3系統群9系統として系統養成。
いずれも収量性が高く耐病・耐冷性に優れていたため、1系統群あたり1系統5個体を選抜し、各系統群に『岩1077』(後の『銀河のしずく』)、『岩1078』、『岩1079』の番号が付されます。

平成23年(2011年)に前年の3系統15個体を3系統群・15系統として系統養成を行い、2系統群から2系統10個体が選抜されます。
平成24年(2012年)、場内の生産力検定及び特性検定、加えて山形県農業総合研究センターでの系統適応性検定の結果から『岩1077』は『岩手107号』の地方系統番号が付されます。奨励品種決定調査供試系統として配布されます。
この年は2系統10個体を2系統群・10系統として系統養成→1系統群当たり1系統5個体を選抜します。
平成25年(2013年)~平成26年(2014年)は1系統5個体を1系統群5系統として各90個体を栽培。奨励品種決定調査・特性検定が行われます。

いろいろあって

平成27年(2015年)に岩手県の奨励品種に採用。

『ヒメノモチ』の適地を除き、県中央部の『あきたこまち』『ひとめぼれ』からの置き換えが予定されています。





系譜図




岩手107号『銀河のしずく』 系譜図


参考文献


○銀河のしずく公式HP:https://www.junjo.jp/ginganoshizuku/

○水稲新品種「銀河のしずく」の育成:岩手県農業研究センタ-研究報告




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