あ…あれ?
つや姫
ほ?
出羽燦々と出羽の里が優良品種から…削除されたそうなんですが…
(令和2年4月公報)
え?
安心してください、雪若丸
優良品種からの削除は、奨励品種への追加の為ですよ
ああ成程…そういうことでしたか
いや~なんとも重責だね
雪女神と肩を並べることになりました
研鑽していきたいですね
…これで山形県で酒米の優良品種枠は私ひとり
行き遅れ、かな
(?…行き遅れ?)
…糯米に関しては…三人仲良く一緒に優良品種指定です…
だねー
ちなみにもう一人は私だね
ふふふふふ!
なんだかんだで私も認定品種にはちゃんと名前上がっているもんね!
私も山形県なのにさりげなく残っていますよね…(認定品種)
ところでさ
?
はい、なんですか?つや姫
「奨励」とか「優良」ってなにかな?
それと「認定」?
(ええ…?)
…と、ここまでが前振りだ
(身も蓋もない…)
話題としては一周遅れの感もあるけれども
廃止された種子法関連の話になるわね
明治・大正・昭和と食糧難の時代
まず緒言。
種子法の対象となるのは主要農作物である稲(コメ)、大麦、はだか麦、小麦及び大豆といった、野菜を除いた作物となります。(「食料」というより「食糧」が対象)
日本のソウルフードがお米であることからも、実際問題稲に対しての比重が非常に重いものになっていると言えるでしょう(多分)
そんな「お米」に視点を絞ってお話していきます。
平成から令和の時代となり「米余りの時代」となって久しいですが、戦前(太平洋戦争)からして余裕のある食糧生産が出来るような状況ではありませんでした。
明治期から大正期にかけての人口の急増(明治年間に約2倍に増)を受けて深刻な食糧不足が起き、大正7年(1918年)にはコメ騒動が起きるほどでした。
農地の新規開拓や農地の整備への取り組みで、明治初期~明治30年前後までは国内の増産でまかなえていた国民の食糧消費量増加は、以後輸入(朝鮮米等)にその補填を頼っていくことになります。
具体的な数字を挙げてみましょう。
①明治11~15年(1878~1882年)において日本国内の米総消費量は約2,877万石。
これが四半世紀後の大正初期の②大正2~6年(1913~1917年)には約5,677万石と、消費量は約2倍にまで増えます。
この増加傾向は続き、③昭和8~12年(1933~1937年)には約7,447万石となりました。
①の段階では消費に対する国内生産量は100%を超えており、年々増加する消費量に対して生産量も同じく伸びていきます。
この均衡が崩れ始めたのが明治30年前後で、国内生産量も増えているものの消費量の増加に追いついておらず、大正時代までは全消費量の3~9%程度を輸入に頼っており、②の時は全体の5%が輸入米です。
③の時代には国内消費量の約17%が輸入となっていましたが、それでも国内生産量は①の時代の約2倍にまで増えているんです。(約2,899万石⇒約6,157万石)
食糧生産人口の絶対的比率の減少などもあったようですが、品種改良や農地整備による増産以上に、人口増加が急激だったことがうかがえると思います。
種子法とは?~昭和27年 主要農作物種子法~
このように国内生産量の不足、輸入米(朝鮮米)に消費の一部を依存するなどの問題など、根本的な食糧不足問題を解決できずに昭和16年(1941年)に太平洋戦争に突入した日本。
昭和20年(1945年)に敗戦を迎えるころには、耕地の荒廃、農業労働力の不足といった問題に加え、敗戦により海外統治領からの食糧輸入もままならなくなるなど、同年10月には「1,000万人餓死説」が出るほどの食糧危機に見舞われていました。
焦土と化した日本国は戦後復興に向けて歩み始めますが、こと食糧危機の克服については「戦前への回復」ではなく「新たな食糧供給体制の構築」が必要とされたのです。
そして昭和27年(1952年)、食糧増産の政策の一環として「主要農作物種子法」が制定されます。
この法律は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査その他の措置を”都道府県が責任をもって”行うことを目的としています。
要は(と言うほど要約できませんが)、稲・麦・大豆について、「①普及すべき優秀な品種の選定」と「②”優良な種子の生産”の指導・体制づくり」を義務付けるものです。
新品種の開発や、品種の権利の保障とは関係なく、あくまでも「種」の生産について優先品種の選定とそれを生産して供給できるようにするための法律と言えます。
それと明文化はされていませんが、公的資金を投入して種子生産されるために、農家にとっては民間で生産するよりは安価な種子を手に入れることが出来ることが出来ます。
時代は流れ、「米が足りない時代」から「米が余る時代」になりました。
政治家の方の色々な思惑もあるのでしょうが、食糧難解決のために制定されたこの法律は”役目を終えた”とされるのも致し方ない情勢かとも思います。
この種子法については、平成29年(2017年)3月23日に第193回国会において、「主要農作物種子法を廃止する法律」が成立し、平成30年(2018年)4月1日をもって廃止されました。
ちなみに「種苗法改正」と並んでこの「種子法廃止」もデマや見当違いの批判の巣窟です。
元農水大臣(残念ながら本当)である山田正彦氏が結成した「日本の種子(たね)を守る会
あくまでも「種子法」は奨励品種の指定や、「種子の生産」(新品種の開発ではない)の体制構築を義務付けたものなので、品種の開発や多様性とは無関係です。
とかとかいろんなこと言ってますこの「日本の種子を守る会(笑)」は完全に妄想レベルの恥ずかしいお話ばかりです。
ちなみに入会費一口2,000円です。
SNSの反応見てるとお金払っている人結構いるんでしょうね…新手の詐欺商法にご用心を
※多様な意見は大事ですが、「ネタを守る会」とやらの事実を無視した誇大妄想は意見とは言いません
しかし
ネット検索でまともでない記事の方が多いのは何とかならないものか…
因みに後述しますが、種子法の廃止に伴い、主要各県が代替制度の整備を行う中、真逆の方向、真っ先(多分)に種子生産の義務を民間へ移行したのが大阪府、奈良県、和歌山県です。
種子生産に関する審査及び証明業務を種子協会へ移管しており、当初はそのせいで種子代が値上がりする…みたいな記事もありましたが、実際どうなったんでしょうか?(未確認)
それよりも
【種子法廃止 附帯決議第2項】
「主要農作物種子法の廃止に伴って都道府県の取組が後退することのないよう、都道府県がこれまでの体制を生かして主要農作物の種子の生産及び普及に取り組むに当たっては、その財政需要について、引き続き地方交付税措置を確保し、都道府県の財政部局も含めた周知を徹底するよう努めること。」
これに反して何無責任なことやっているんだ?と言う声もあるとかないとか。
(ただ付帯決議には何の強制力もないんですよね…)
種子条例の制定(山形県の場合)
「稲、麦、大豆の種子を供給する義務」を肯定していた法律がなくなってしまったので、これに代わる条例を制定することで「今後も種子供給体制に(都)道(府)県として責任を持つ」ということの意思表示とも言えるでしょう。
【2020年5月10日現在】
廃止年の平成30年(2018年)に真っ先に条例制定に動いたのは新潟県、埼玉県、兵庫県の3県。
山形県もそれに続きます。
次いで平成31年~令和元年(2019年)に北海道、福井県、富山県、岐阜県、鳥取県、熊本県、宮崎県で条例を施行。
次に令和2年(2020年)宮城県、石川県、栃木県、茨城県、長野県が施行。
他、岩手県、千葉県、群馬県、愛知県、滋賀県、三重県、広島県、鹿児島県で条例制定手続きを進行中、検討中とのことです。
青森県、秋田県、福島県、京都府、岡山県、島根県、山口県、香川県、高知県、愛媛県、大分県、福岡県、佐賀県、長崎県では「要綱」や「要領」の形で種子法に準じた取り組みを進めていくようです。
ただあくまでもこれらは行政上の内規の様なものなので、法的根拠は持たないままになるわけですね。
そして
種子生産をやめていた東京都を除いて
無対策は神奈川県、山梨県、静岡県、徳島県、沖縄県(情報求)
明確な民間委託が大阪府、奈良県、和歌山県と言った状況ですね。(と、とりあえず書いておきますが、どうやら批判している人たちがだいぶきな臭い感じなので皆さん情報提供お願いします)
話は我らが山形県に戻って
主要農作物の優良な種子の将来にわたる低廉かつ安定的な供給を図るため「山形県主要農作物種子条例」を制定し、平成30年(2018年)10月16日に施行されました。
ということで、山形県ではこの「種子条例」に基づき種子の生産に力を入れる品種として「奨励品種」「優良品種」「認定品種」の三つを設定しているのでした。
これは都道府県により違うようですので、下記はあくまでも山形での定義としてご覧ください。
※山形県における定義
1 奨励品種
生産・流通対策上、主力品種として奨励する品種
2 優良品種
特定地域を対象とした、もしくは作業体系上必要とする組み合わせ品種、もしくは、生産・流通対策上、奨励品種を補完する品種
3 認定品種
奨励品種及び優良品種を補完する品種
将来的に奨励、優良品種として期待できる品種
まぁ上に行くほど重要な品種として県が認めた、と言う認識でいいんじゃないでしょうか?(てきとー)
今まで上から二番目「優良品種」指定だった『出羽燦々』と『出羽の里』が、最重要の「奨励品種」になりました…ということで
兎にも角にも
昇進おめでとうだゼ!!
◯米穀市場の近代化 -大正期を中心として-:持田恵三
◯[農業史研究 第36号 2002]戦後食糧輸入の定着と食生活改善:白木沢旭児
◯山形県農林水産技術会議資料:山形県
◯各都道府県公式ホームページ
主要農作物の優良な種子の将来にわたる低廉かつ安定的な供給を図るため「山形県主要農作物種子条例」を制定し、平成30年(2018年)10月16日に施行されました。
ということで、山形県ではこの「種子条例」に基づき種子の生産に力を入れる品種として「奨励品種」「優良品種」「認定品種」の三つを設定しているのでした。
これは都道府県により違うようですので、下記はあくまでも山形での定義としてご覧ください。
最後に 奨励・優良・認定の定義
※山形県における定義
1 奨励品種
生産・流通対策上、主力品種として奨励する品種
2 優良品種
特定地域を対象とした、もしくは作業体系上必要とする組み合わせ品種、もしくは、生産・流通対策上、奨励品種を補完する品種
3 認定品種
奨励品種及び優良品種を補完する品種
将来的に奨励、優良品種として期待できる品種
まぁ上に行くほど重要な品種として県が認めた、と言う認識でいいんじゃないでしょうか?(てきとー)
今まで上から二番目「優良品種」指定だった『出羽燦々』と『出羽の里』が、最重要の「奨励品種」になりました…ということで
兎にも角にも
昇進おめでとうだゼ!!
出羽燦々、出羽の里、奨励品種指定オメデトウ! |
参考文献
◯米穀市場の近代化 -大正期を中心として-:持田恵三
◯[農業史研究 第36号 2002]戦後食糧輸入の定着と食生活改善:白木沢旭児
◯山形県農林水産技術会議資料:山形県
◯各都道府県公式ホームページ
最初見たときは「え?…削除?!」と焦ったんですが、推奨品種に格上げの為となっていたので安心しました。 今後も二人の活躍には期待できそうですね。
返信削除日本酒業界では得体の知れない稲を持ってきて「幻の在来種()だ!」と担ぎ上げる動きが多く見受けられますが、ちゃんと育成された県の間違いなく優秀な品種達がいるんですから、ちゃんとそちらにスポットが当たると嬉しいですね
削除『出羽の里』は優秀な交配親として子品種達が目立ちますが、本人ももっと活躍してほしいと思いますです(*・ω・)