2017年3月4日土曜日

【粳米・掛米】山形100号~出羽きらり~ 【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『山形100号』
品種名
 『出羽きらり』
育成年
 『平成22年(西暦2010年) 山形県 県農業総合研究センター水田農業試験場』
交配組合せ
 『山形75号×ちゅらひかり』
主要産地
 『山形県』
分類
 『粳米(掛米用品種)』

出羽きらりです。大きくなれるよう頑張ります!




どんな娘?

(管理人の独断と偏見で)なんでか大きくならない小さい娘。
(それでもこれでも平成23年のデビューから成長著しい!…はず)

酒米の分野では山形酒米三姉妹の後ろに隠れ気味、山形県の看板としての役割はつや姫と雪若丸の後ろに完全に隠れる小さな娘。
そんな目立たない存在ながら、あれやこれやと人の世話を焼くのが好き。

物静かな性格ですが、一人で何でもできるオールマイティさは知る人には非常に頼りにされています。


概要

山形県の多用途米(掛米用品種)『出羽きらり』の擬人化です。
育成した山形農試では”酒造適性米”とも呼ばれています。

『出羽きらり』育成以前、稲作と共に酒造も盛んな山形県では、酒造好適米として『出羽燦々』『出羽の里』の基幹2品種を要し、高級酒のブランド確立に大きく貢献していましたが、一番生産量の多い普通酒において用いられる掛米専用品種に優秀なものは無く、主食用米品種の流用が主でした。
と言うのも、掛米用品種としてはまず価格の安さが求められ(つまり多収品種)、当時該当した『トヨニシキ』『ふくひびき』『雪化粧』『山形59号』といった品種は収量の不安定さ、胴割米の発生などから生産現場、加工現場両者から敬遠されていたためです。

「吟醸王国やまがた」として、酒造メーカーからも「山形県オリジナルの掛米用品種を!」との声もあり、栽培特性に優れ(耐病・耐冷性)、低タンパクかつ精米時に砕けにくく、多収の品種を目標として産まれたのがこの『出羽きらり』です。

その為、粳米(多用途米)に分類されてはいますが、大半は酒造掛米用として利用されているようです。
『出羽燦々』・『出羽の里』・『雪女神』で構成される山形県オリジナル酒造好適米三姉妹と分類は異なりますが、彼女もまた「米どころやまがた」「吟醸王国やまがた」を支える品種です。

『はえぬき』と熟期が同程度(山形県で中性の晩)で、玄米千粒重は『はえぬき』より1割程度重い(玄米一粒の大きさが大きい)。
収量性も高く、『はえぬき』(約540kg/10a)より1~2割多収(約620kg/10a)です。
雑味のない淡麗な酒質が特徴で、辛口、甘口、幅広い日本酒の味に対応が可能です。
穂いもち病抵抗性、耐冷性ともに「強」と見た目(管理人のちびっ子擬人化)とは裏腹に丈夫で栽培特性が優れています。


育種経過

平成11年(1999年)にいもち病抵抗性が強い良質品種の育成を目標に母本『山形75号』、父本『ちゅらひかり』の交配を行い、その後代から育成されました。

平成11年(1999年)8月に人工交配され、得られた種子は15粒(交付番号:庄交99-55)。
同年10月、世代促進温室でF1養成。
翌平成12年(2000年)にF2を圃場で集団養成(368個体)。
同年10月から3月まで世代促進温室においてF3を集団養成(1360個体)を行い、115gの種子を得ます。

平成13年(2001年)、F4世代より個体選抜を開始。
圃場に栽植した2160個体の集団は出穂、稈長などの変異は少なかったものの、この中から中稈で穂揃いが良好、穂重感のある196個体を圃場で選抜します。
さらに室内においてその中から玄米品質により36個体を選抜。
平成14年(2002年)、選抜された36個体(F5)を1個体1系統の単独系統として、1系統あたり30個体ずつ栽植。
出穂期、草姿、耐倒伏性といった立毛評価と耐冷性試験の結果に加えて、室内での玄米品質選抜により、29系統が選抜され、『庄3379』~『庄3407』の育成地番号が付与されます。
平成15年(2003年)F6世代より生産力検定試験、特性検定試験に供試されます。
それを受け、玄米品質、食味は『はえぬき』並みで精米玄重が多く、耐病・耐冷性が強い『庄3389』(後の『山形96号』)、『庄3404』(後の『山形100号』)など12系統が選抜されます。
平成16年(2004年)F7世代、『庄3404』は場内における生産力検定試験の他、酒田市荻島、川西町堀金、山形県立農業試験場、宮城県古川農業試験場で現地系統適応性検定試験を受けます。
しかしその結果は、収量性の高さを除けば玄米品質や耐病性、食味評価など芳しくなく、再検討となります。
平成17年(2005年)F8世代で再び現地系統適応性試験。
場所は試験場内と酒田市荻島。
その結果、玄米品質は劣るものの、収量性、葉・穂いもち病抵抗性共に『はえぬき』『ひとめぼれ』に優り、大粒で胴割れ米も少なく、掛け米として有望であるとの評価が下されます。
同年度、平成18年(2006年)2月に『山形100号』の系統番号が付与されます。

『山形100号』は平成18年~平成21年(2006年~2009年)の4ヶ年、山形県内各地で奨励品種決定調査に供試されます。
穂いもち病抵抗性”極強”、そして大粒・多収で醸造特性に優れ、すっきりと淡麗な酒質であることから有望と認められ、平成22年(2010年)2月に山形県で奨励品種(認定品種)に採用されました。



系譜図
平成23年(2011年)に『山形100号』としてデビュー、後平成25年(2013年)に『出羽きらり』へと改名。
山形100号『出羽きらり』系譜図


参考文献

〇水稲新品種「山形100号」の育成:山形農業研報



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