『山形84号』
品種名
『里のゆき』
育成年
『平成16年(西暦2004年) 山形県 県農業総合研究センター農業生産技術試験場庄内支場』
交配組合せ
『庄1658×山形63号』
主要産地
『山形県』
分類
『粳米(低アミロース)』
「里のゆきです。”ゆきの舞”と呼ばれても反応しちゃいます。」 |
どんな娘?
今までの絵でも、ラフ設定がでもなぜか小さな女の子でしたが正式設定画に当たり、急激に成長しました。
山形米らしくひっそりと、でもしっかりと頑張る娘。
小柄な体ながら頑丈さには密かに自信あり。
ほわほわしているようで、気配りというか、問題を見つけて対処する早さは随一。
概要
『ミルキークイーン』に代表される低アミロース米。
モチモチと糯に近い食感、そんな低アミロースの山形県初開発、かつ独自品種と言えばこの娘!
育成完了当時の平成15年(2003年)より少し前から全国で低アミロース品種が続々と育成されている中、山形県に適した品種はないという状況で、「山形県に適したオリジナル低アミロース米」として育成された『里のゆき』。
低アミロース品種らしく、「冷めてもおいしい」(冷めた状態での食味が良好)、炊飯米の粘りや光沢のとても良い品種です。
その食味が期待され、山間~中山間地で主力ながら食味の面で劣るために販売が厳しく、生産が減少していた『ゆめさやか』や『はなの舞』といった品種に代わって(山間~中山間地の)主力品種となることが見込まれていました。
…でも近年(平成後期)少し生産量が落ち気味か…
当初(2004年)は品種名を『ゆきの舞』としていましたが、北海道の食品会社が同じ読みの「雪の舞」で商標登録をしており、米などを販売していることが判明。
翌年(2005年)に名称を『里のゆき』へと変更しました。
名称変更となっても山形県がこだわった「ゆき」、彼女の粒の白さに由来します。(ただし低アミロース品種にしては、玄米の白濁程度は小さいと評価されているようです。)
適地は山間地や中山間地が想定されており、育成当初は500haの普及が見込まれていました。(検査数量から推定しても最大500ha前後だったようです)
父本の『山形63号』の系統には山形県のかつての代表品種『はなの舞』が含まれます。(青森県のエース米、『青天の霹靂』にも『はなの舞』の血が色濃く残っています。)
育成地における早生品種です。
アミロース含有率は登熟期の気温に左右されにくく、約12%で安定しています。
低アミロースの主要品種は『ミルキークイーン』系統:【Wx-mq】保有と『おぼろづき』系統:【Wx1-1】保有が多いですが、この『里のゆき』は独自の低アミロース遺伝子【Wx-y】を持つとされています。
稈長は試験時の記録で約66cmと短く、稈は「やや太」かつ「剛」とされ、耐倒伏性は「強」と倒れにくい品種です。
いもち病真性抵抗性遺伝子型は【Pii】と推定されています。
いもち病圃場抵抗性に関しては葉いもちが「やや強」、穂いもちが「弱」とされています。
耐冷性は「極強」(旧区分)と『はえぬき』と同じくらい強いです。(新区分の「強」相当)
収量性は558~602kg/10aで、先代の『はなの舞』にはやや劣ります。
千粒重は22.3~22.6g程度です。
令和3年5月31日追記
山形県山辺町の「大蕨の棚田」に関する報道(YTS山形テレビ)で悲しい内容が・・・
同棚田では2020年までは『里のゆき』を植えていたそうですが、2021年から『山形95号』に切り替えが行われました。
理由は「『里のゆき』の種がなくなったから」とのこと・・・
これは生産量が少ないために、種子配布か生産が終了したということでしょうか・・・?
全然記事も書き上げることが出来ていない内に・・・
でも品種というものはこうやって消えてしまうこともままあるんですよね・・・
育種経過
1950年代をピークとして米の消費量が年々減少する中、良食味でヨリ販売に有利な
平成に入る頃には粘りが強く冷めても炊飯米の食味が落ちにくい「低アミロース米」は注目を集めており、平成7年(1995年)に育成された『ミルキークイーン』を筆頭に日本各地で育成・普及が進んでいました。
北海道の『彩』『はなぶさ』、東北では『スノーパール』『たきたて』、北陸では『ソフト158』『朝つゆ』、九州の『柔小町』等々・・・
しかしながらこういった品種は熟期が早すぎたり、出穂以降の高温で品質が左右されるなど、山形県の栽培に必ずしも適しているとは言えませんでした。
『里のゆき』は、低アミロース性を持ち、粘りがあって良食味で、短稈で栽培特性の良い品種を目指して育成が始められました。
平成7年(1995年)8月、母本『庄1658』、父本『山形63号』として人工交配が行われます。
◇母本の『庄1658』は山形県オリジナルの低アミロース系統です。
昭和62年(1987年)に『庄196』を母本、『あきたこまち』を父本とした交配後代のF2(雑種第2代)を葯培養することにより得られた突然変異系統『庄918』が母本であり、低アミロースの系統もここから引き継いでいます(12.7%程度)。
山形県独自の低アミロース系統の始まりとも言える『庄918』は、『きらら397』の育種と同様に自動アミロース分析装置(オートアナライザー)によりアミロース含有率の測定を行うことで見いだされた系統です。
山形県では平成元年(1989年)導入されたこのオートアナライザーにより、良食味個体の選抜を目的に育種系統全て(F4選抜世代以降)にアミロース含有率の調査を行っており、前述した【『庄196』×『あきたこまち』】の雑種後代の葯培養A1世代にアミロース含有率の極端に低い系統を見いだされ、これに育成地番号『庄918』を付与し、特性調査が継続され、『庄1658』の母本となりました。
『庄1658』は「中生の晩」に属し、短稈かつ『はえぬき』並の玄米品質を持つと評価されていますが、千粒重が軽く収量性が悪く、耐冷性・いもち病抵抗性共に「弱」と判断され、地方系統名の付与までには至らなかった品種です。
◇父本の『山形63号』は出穂・成熟期が『コシヒカリ』より1日早い晩生品種です。
短稈偏穂重型で、耐倒伏性に優れ、『コシヒカリ』と同等の千粒重・収量を持ち、玄米品質や食味は優っていると評価されています。
ただいもち病抵抗性は「やや弱」で耐冷性も「中」(当時区分)と少し心許ないものでした。
以上の両親を元に温湯除雄法により交配が行われ、4粒の交配種子を得ました。
交配番号は『庄交95-65』です。
直ちに休眠打破を行い、同年10月に世代促進温室でF1養成を行います。
翌平成8年(1996年)、F1個体由来ごと計90個体をF2養成。
さらに同年10月からF3世代1600個体の集団養成が行われ、27gの種子を得ます。
平成9年(1997年)はF4世代3,500個体を圃場に播種します。
F4世代集団の概評としては、出穂・稈長などの変異はやや大きく、草姿・熟色はやや不良とされました。
その中から草姿良好で穂重感のある108個体を圃場で選抜し、室内で玄米品質とオートアナライザーによる精米アミロース含有量により最終的に3個体を選抜しました。
108個体中低アミロース性が確認されたのはこの3個体のみであったとのことです。
平成10年(1998年)、F5世代は前年の1個体を1系統として、1系統当たり30個体を栽植。
出穂期、草姿、耐倒伏性などの立毛評価と葉いもち、耐冷性の特性検定、そして室内での玄米品質、アミロース含有量により3系統いずれも選抜し、『庄2721』『庄内2722』『庄内2723』の育成地番号を付与します。
後の『里のゆき』となる『庄2722』のアミロース含有量はこの時点で9.6%でした。
平成11年(1999年)、F6世代は前年の3系統を3系統群12系統として生産力検定試験、及び特性検定試験に供試されます。
また、いずれの系統も熟期が早かったことから山形県農業研究センター中山間地農業研究部と標高330mの最上町堺田において現地系統適応性検定試験にも供試しました。
結果、育成地における玄米重が『はなの舞』に劣るものの、アミロース含有量が11.3%であることから『庄2721』『庄2722』の2系統が選抜されます。
平成12年(2000年)、F7世代は城内における生産力検定試験と特性検定試験に加え、農業研究研修センター中山間地農業研究部と標高130mの金山町において、引き続き現地系統適応性検定試験を行いました。
結果、『庄2722』が玄米重が『はなの舞』並、アミロース含有量は11.5%、耐冷性が「極強」で有望として、平成13年(2001年)2月に『山形84号』の地方系統番号が付与されました。
平成13年(2001年)F8世代から県内各地で奨励品種決定調査に供試され、平成15年(2003年)までの3ヶ年で、早生かつ短稈で耐倒伏性に優れ、耐冷性も強く、炊飯米も粘りがあり良食味であるとして有望と判断されます。
そして平成16年(2004年)2月に山形県の奨励品種(認定品種)に採用されました。
同年9月に『ゆきの舞』と命名され、品種登録出願が行われます。
後に北海道の食品会社が類似した商標を獲得していることが判明し、翌平成17年(2005年)に『里のゆき』と名称を変えて登録されました。
系譜図
山形84号『里のゆき』系譜図 |
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