2017年2月12日日曜日

【酒米】山形酒104号~雪女神~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『山形酒104号』
品種名
 『雪女神』
育成年
 『平成27年(西暦2015年) 山形県 県農業総合研究センター農業生産技術試験場庄内支場
交配組合せ
 『出羽の里×蔵の華』
主要産地
 『山形県』
分類
 『酒造好適米』
山形酒104号『雪女神』、参ります。


どんな娘?

山形酒米三姉妹の末妹。

一番年下ながら、落ち着き払った大人の雰囲気から、傍から一番の年長者に見られることも多いです。
辛抱強く物事に取り組むのが得意で、周囲の評価も非常に高い。

山田錦に代わり、山形県内の大吟醸酒を担う事を期待されており、その自負と使命に密かに燃えています。


概要

『出羽燦々』から『出羽の里』へ、そしてその『出羽の里』から『雪女神へ』…連綿と受け継がれる山形県酒造好適米のある意味集大成、酒造好適米『雪女神』の擬人化です。
え?
『出羽きらり』ちゃんはね…酒造適性米だし…ね?

平成13年、山形県農業総合研究センターで母本『出羽の里』、父本『蔵の華』の交配が行われ、そこから15年の歳月をかけて育成された山形県のオリジナル酒造好適米です。
主に吟醸・純米吟醸酒用の『出羽燦々』、純米酒・本醸造酒用の『出羽の里』とオリジナル酒造好適米を要していた山形県でしたが、日本酒の花形、大吟醸用の酒米は県外産の『山田錦』等に頼るところ大、という状況が続いていました。(『出羽燦々』の大吟醸等は勿論ありますよ)
米どころ山形県だからこそ「オリジナルの大吟醸用酒米を!」との声はやはりあったようで、その様な蔵元が待望した悲願の山形県オリジナル大吟醸酒造好適米『雪女神』は平成28年から本格始動しました。

『出羽燦々』に比較して大粒、粗タンパク質含量が低い、点状型で高い心白発現率など、純米大吟醸に適する原料米として期待されています。
東北各県が次世代の酒造好適米を模索する中、つや姫に続いて山形県がまた一歩先行する形となりました。

耐倒伏性「中」、穂いもち抵抗性「やや強」と『出羽燦々』と同等ですが
葉いもち抵抗性「やや弱」と耐冷性「中」は『出羽燦々』よりワンランクダウン。
収量性や心白発現率は『出羽燦々』より優り、玄米粗蛋白含有率も『出羽燦々』よりやや低い優秀な成績を示し、醸造された酒質も、兵庫県産『山田錦』と比較しても”きれいで良好な酒質”との評価を受けています。


山形県オリジナルブランド純米大吟醸酒「山形讃香」

山形県酒造組合が開発・推進している純米大吟醸のブランド「(新)山形讃香」の使用酒米もこの『雪女神』になっています。
(ちなみにリニューアル2回目、詳細後述)

前々身は昭和59年(1984年)当時の知事の提言に始まり、昭和60年(1985年)10月にデビューした大吟醸酒の共同銘柄「山形讃香」です。
県内蔵元の大吟醸酒の中でも審査に合格したものだけが名乗れるのがこの名称「山形讃香」であり、この名称を目指して大吟醸酒の質向上や、今まで吟醸酒に取り組まなかった蔵の新規挑戦といった動きが盛んになったそうです
そのおかげをもってか「山形讃香」誕生以降の昭和61年(1986年)あたりから全国・東北の鑑評会における金賞受賞数が急増し、金賞多数の常連県となることができました。

ただ、この当初の「山形讃香」はその要件が「大吟醸酒(アルコール添加)」でしかなく、使用米も『山田錦』が殆どだったそうです。
山形を冠するお酒に県外産の『山田錦』が使われているのはどうなのか・・・とやはり疑問の声は上がったようで、平成13年(2001年)より要件を「『出羽燦々』使用」「純米大吟醸(アルコール添加無し)」に変更され、「(新)山形讃香」として再スタートしました。

それより21年。
令和4年(2022年)3月11日に「山形讃香」リニューアルが発表されました。
原料は、優良酒米コンテスト(主催:山形県酒造適性米生産振興対策協議会)で上位入賞した農家が栽培した『雪女神』。
醸造する蔵は、山形県の品評会における「雪女神」精米歩合40%以下の純米大吟醸酒において、上位の成績を獲得した数社。
へと変更。
日本最高峰を目指す、山形県酒造の粋を集めた純米大吟醸酒とすべく、条件がさらに厳格化されています。
21年間主役を務めた『出羽燦々』よりバトンを引き継ぎ、真の山形県酒米主力品種としての道を歩んでいます。



育種経過

大吟醸酒用に適した酒米品種、つまり
・低タンパク
・大粒
・心白発現率が高く、且つ心白率(心白の大小)が高過ぎない
・高度搗精耐性
これらを備えた品種を目標として山形県立農業試験場庄内支場で育成が開始されました。

平成13年(2001年)に『庄酒2560』(のちの『出羽の里』)を母本に、『蔵の華』を父本に人工交配が行われました。

母本の『庄酒2560』(『出羽の里』)は外観品質が優れ、心白が大きく発現率が極めて高い品種であり、
父本の『蔵の華』は耐冷性といもち病抵抗性が強く、心白発現率は10%程度と低いものの、酒造適性に優れ、生成酒の評価が高い品種(宮城県の奨励品種)です。

F1種子として得られたのは91粒。
同年に世代促進温室で8粒が養成されます。

平成14年(2002年)、F2世代は圃場に植栽されると同時にクロスの確認を行い、同年にF3養成。125gの種子を得ました。
平成15年(2003年)、F4世代2,356個体において「中生~中生の晩」、「やや短稈~やや長稈」、「稈質:やや剛い」127個体を圃場選抜。
さらにその中から品質心白発現の良好な38個体を室内選抜します。
平成16年(2004年)F5世代において単独系統として38系統の中から「草姿」、「耐倒伏性等による立毛有望度」そして「葉いもち圃場抵抗性検定」及び「耐冷性検定」の結果から、圃場で19系統を選抜。
更に室内で「品質」、「心白の大小」、「精米粗タンパク質含有量」により12系統が選抜されます。
平成17年(2005年)F6世代において、昨年の12系統を1系統群あたり4系統とした48系統を移植。生産力検定試験、特性検定試験を行い、選抜された1系統に『庄酒3819』の育成地番号が付与されます。
平成18年(2006年)F7世代からは系統適応性検定試験に供試。
その結果、『出羽燦々』と比較し、玄米の外観品質は並からやや優り、玄米千粒重は1g程度重く、収量性と心白発現率の高さが確認されます。加えて玄米粗タンパク質含有量も『美山錦』『出羽燦々』よりも低く、高度搗精試験(精米歩合40%)で砕米率の低さも確認され、大吟醸酒用としての基本適性を持つことから有望と認められます。
平成19年(2007年)F6世代で『山形酒104号』の地方系統番号が付され、県内を主体に地域適応性の検討が始まりました。
その結果
平成26年(2014年)に山形県の奨励品種(認定品種)に採用されます。




系譜図

山形県の酒造好適米『雪女神』の名称は2017年より正式に名乗ることができるようになりました。
きれいな名前で個人的にお気に入りです。
『雪女神』。
山形酒104号『雪女神』系譜図


参考文献

〇大吟醸酒向け水稲新品種「山形酒104号」の育成:山形県農業特別研究報告
〇新山形讃香:https://yamagata-sake.or.jp/pages/157/


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