2017年11月30日木曜日

【粳米】富山86号~富富富~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『富山86号』
品種名
 『富富富
育成年
 『平成29年(2017年) 富山県 県農林水産総合技術センター農業研究所
交配組合せ
 『F1【コシヒカリ富筑SDBL2号×コシヒカリ富山APQ1号】×12-9367B』
主要生産地
 『富山県』
分類
 『粳米』
『富富富』です。ふふふ…よろしくお願いしますね。

うまみ。あまみ。ふと香る。ほほえむうまさ、富山から。


北陸県勢の新品種ラッシュの中、富山県が送り出した(不憫な)新品種、富山86号『富富富』(ふふふ)の擬人化です。


どんな娘?


どこかつかみどころがなく、影が薄いが実はかなり優秀。(だがそれと一般受けが良いかは別問題)

もともとおっとりぼんやりな性格に加えて
富山県ではもっと楽な役回りをすると思っていたのに、急に高級ブランド路線に担ぎ上げられ困惑気味。
周囲のドタバタに気苦労は尽きない日々が続いています。


教育自体はかなり高レベルなものを受けてきたものの、実地でそれを発揮できるかどうか彼女自身も周囲も非常に心配しているところです。



概要

【富山の水】【富山の大地】【富山の人】
「富」山の豊かな水や肥沃な大地で「富」山の生産者が育てた「富」山づくしの米、が名称の由来。
食べた人が幸せな気分になってつい「ふふふ…」と笑ってしまう…そんな願いも込められているそうです。

『富富富』はもう兎に角曖昧
なんといっても曖昧
悪く言えば(もう言ってるけど)中途半端
ちなみに高級路線を目指すと言っている割にはそのブランド化戦略すら曖昧。(で結局挫折したという・・・)
あ、でも公式ホームページは一番凝って(金がかかって)ます。
そして育成が凄いハイテクです。(とは言え”米”としての販売・売れ行きには残念ながらおそらく多分絶対に影響しない)


〇名称公募
系統名も公表せず、「富山県の新しい米」というすさまじく曖昧な状態で名称公募。
この時点ではまだ3系統候補があった様子ですがなんとも違和感(管理人の主観)
とりあえずそんな曖昧な品種にも名称公募には9,411件(県内7,468点、県外1,938点、不明5点)の応募があり、平成29年3月26日、東京都内のホテル(ホテルニューオータニ)で品種名『富富富~ふふふ~』発表。

〇ロゴ
どうにも曖昧で私が解釈を間違えているかもしれませんが富山県は『富富富』に関して「デザインをアレンジできる」としていて、これは特定のロゴを作らないという事なのか、塗り絵のようなロゴになるという事なのか…
仮にも高級路線、ブランド化を目指しているのなら、そのブランドのイメージを担うロゴがそんな曖昧でいいのかなぁ…
よくわかりませんが…というのが名称公募開始時点でのこと
ところがH30.2.22に富山美術館3階ホールでキャッチコピーとロゴデザインの発表が行われてみると?
 古代から現代に至る米作りの歴史を「富」の字体で表現。白と赤を基調にした日本を意識させるデザインに仕上げられています。
 …うん?
 「デザインをアレンジできる」というのはどこにいった?


〇食味
「極上の旨味と粘り」「高品質」「日本穀物検定協会でも高評価」といった文言は並ぶものの、アミロース含有率や具体的な食味評価試験値などは公表無し?
精玄米重やら稈長やら倒伏程度やらの数値はあるんですが、それは農家の皆さんにアピールすることでは?
どうもアピールする点がずれている感じ(管理人の主観)

※一応公式表現を記載
①極上の旨みと粘り
②炊き上がりはつやがあり透明
③高温でも白未熟粒が少なく高品質←食味関係あります?(味を表現してる?という意味で)

富山県農業研究所が成分分析結果を(ようやく)発表。(H30.2.22)
 「甘み」と「うま味」に関わる成分がコシヒカリより2割多く含まれているそうです。
 「甘み」とは果糖、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖のことで
 「うま味」とはアスパラギン酸やグルタミン酸のことです。
 (ちなみに我が山形県のつや姫はアスパラギン酸6割、グルタミン酸3割多いデスどやぁ
 「甘み」成分が多いことから『富富富』は口に入れる前からデンプンの分解が進んだ状態である事を示しているそうです。
 で
 これ自体は『富富富』の優秀さを物語っていると思います。
 それはいいんですが
 試験販売前(もしくはせめて販売と同時)にこういう重要な情報を発信できていないあたり、『富富富』というか富山県の後手後手感を感じるんですが…(管理人の偏見)


まぁ…育種状況がわかってくると『富富富』の戦略がどうも曖昧な印象を受ける理由がよくわかる気がします。
”最高級品種を目指す!”なんて銘打っている『富富富』ですが、育種開始(とされている)平成15年当初から食味の”し”の字も出てきません。
もちろん『コシヒカリ』は極良食味品種で、そのNIL種を育成目標としているならば、極良食味品種になるだろう、ということは分かりますが…結局『コシヒカリ』と同じ味の品種、ということですよね?
無論、食味というのは絶対的数値で表せるものではなく、個人の主観が含まれるため絶対的な上下は決めつけられませんが、『富富富』の育成目標は、『コシヒカリ』と同価格・同食味帯で栽培特性や収量に優れる品種としての路線の『石川65号(ひゃくまん穀)』と同じ、ではなかったのでしょうか?
新潟県の『新之助』、福井県の『いちほまれ』(は正直ちょっと胡散臭いんですが)と、コシヒカリを超えよう!という品種は育種の選抜過程で初期から食味にかかわる検定を行っています(ということになっている)。
『新之助』に至っては稈長を無視して食味重視で選抜を行うなど、栽培特性はある程度犠牲にしても…という姿勢がうかがえます。

それに対して『富富富』は結果的に食味が『コシヒカリ』より優れるものに変化していた、とわかったのがおそらく平成28年か平成29年、デビュー直前です。
さらに、具体的に「「甘み」「うま味」がコシヒカリよりも多い!」と発表できたのが名称発表(H29.3)からほぼ一年たった平成30年も2月の末…

『コシヒカリ』と同等の食味…そんな品種では、言っては何(失礼)ですが何のブランド力もない富山県産米が高級路線に食い込めるとは思いません。
石川県の『石川65号(ひゃくまん穀)』のごとく、栽培特性の優れたコシヒカリで、生産コストを抑えて『コシヒカリ』と同価格帯を…ぐらいに考えていたのではないでしょうか?
それが食味試験を行ったらなんと、食味が良い方向に変化している、と。
これを受けて急遽路線変更でもしたのか…もしくは県政側が周辺県の動きを見て思いつきのように「高級品種を出せ」とでも言いだしたのか…
⇒令和3年9月25日の富山テレビの報道で「やっぱりな」な報道
『富富富』の戦略が「コシヒカリ超え」から「コシヒカリ並」に変更されたことを受けて
県の担当者曰く「もともと『コシヒカリ』の暑さに弱いという弱点克服に主眼がおかれて開発された品種(食味の向上やコシヒカリ超えなんて想定してないよ:管理人意訳)
まぁそうですよねとしか・・・だからこんなにグダグダちぐはぐしているんですよね・・・
県農林水産企画化市場戦略推進班曰く「『コシヒカリ』に置き換わる品種にするという話は当初からあった(『コシヒカリ』を超える米なんて考えはなかった:管理人意訳)
まぁそうですよね


モヤモヤ曖昧『富富富』の行く末や如何に。



魚沼並みの高級品種を目指す?ブランド戦略の経過…そして末路


もう見てて不憫になるほど身内からの援護がありません。
『いちほまれ』や『新之介』と肩を並べろ!と富山県が言う割には、周知・宣伝・準備・戦略すべてが(墨猫大和の主観で)中途半端でぐだぐだです。
そんな体制で『魚沼産コシヒカリ』他高級路線品種達に挑めというのか…
西部戦線にずらりと並べられたケーニヒスティーガーにスチュアートで立ち向かわされているかのごとくです(例え下手)

すでに前述した「名称公募」「ロゴの発表」「食味のアピール」ですでにグダっておりますが、同じようなネタは事象は尽きません…


→まず最初からして
 平成29年(2017年)10月30日から開始(~11月30日まで)した『富富富』の生産者募集に対して同年11月末時点での応募総面積が約400haと、目標の1,000haの過半にも届かなかったそうです。
 『富富富』の生産も登録制によるものですが、「新品種に対して取り組むかどうかこの期間に決断できなかった生産者が多い」と富山県は言ってますが・・・
 というかそれ以前に周知が足りなかったんじゃないの?というのが率直な感想。
 というかというか、それなのになぜ1,000haも当初から目指したのか…
 ブランド化に向けて質は無論のこと、ある程度の”面”を制圧できる量は欲しいところですが…

→そしてトップからして
平成30年のデビューを前にして富山県の石井知事が「あんまりよそのことを気にしないで、しっかりやっていけば大丈夫だと思いますが」などとズレたことを言っていたり
他県と競合していかなきゃならんのに競争相手を気にしないでどうやって戦うつもりなのか?
「よそで何やってても美味いモノ作ってりゃ売れるでしょ」なんて時代錯誤もいいところでは?

→と言うかそもそも言っていることが
富山県自体が「ブランド化を図り、主力米をコシヒカリから切り替えるか、今後3年の市場評価を見極めたい」などと曖昧・悠長なことを言っていたり
あなたたち『富富富』の宣伝にもう2億円以上(2018年のPR予算2億5,000万円)ぶっこんでいるんですよね!?
それでその「失敗したらまぁ諦めるか」かのようなその発言してもいいのか!?
ちなみに広告には女優の木村文乃さんを採用した模様。
ちなみにちなみにこの”見極めたいの3年間”で富山県がPRに使った総額は6億5千万円だそうです。(富山県民怒って良いのでは?)
 
さらに追い打ちは続きデビュー3年目の令和2年(2020年)11月13日
栽培面積はこの3年間でおよそ2.5倍の1,282haに増えましたが、県産コシヒカリの20分の1程度。
富富富ブランド化戦略会議において富山県は「『富富富』を『コシヒカリ』に代わる主力品種にした上で、『コシヒカリ』以上の価格を目指す」とその骨子案を提案。
しかし、各委員からは
バラ色の計画もいいが、実態に即した計画に軌道修正出来る体制を。せっかくいいものを作ってもらって売り先がないというのは一番不幸なことでは」(神明 森脇部長)
「今まで通りの高価格帯での販売はちょっと無理もあるのでは」(富山県農業法人協会 橋本会長)
「店で並んでも定価で捌けず、見切り(値下げ)シールを貼って売られたことが多々」(大和産業 川合部長)
「消費者からコシヒカリの方がおいしいから高い富富富は買わないという声を聞いている」(富山県消費者協会 平野常任理事)
と異論轟々…何で身内からもこんな袋だたきにあうん?と思うところですが
①富山県がろくな体制も戦略もなしにそれこそ理想論ばかり言っている(差別化や宣伝の徹底が出来ていないのは事実)
②富山県の農家・販売業者は高価格帯を望んでいない

いずれかでしょうか…本当に大丈夫なんでしょうか。
なお富山県はあくまでも「『コシヒカリ』以上の価格帯を求めたい」とのこと。
本当に大じy…

→そしてこんな経過を辿れば結末はやはり・・・
令和3年産(2021年産)の『富富富』の概算金が令和3年8月19日に全農富山県本部より発表。
その金額は1等米で11,800円/60kgと前年比で2,700円の減。
富山県産『コシヒカリ』が11,000円/60kgで、『富富富』生産者に加算される800円/60kgを除けば同水準まで落ち込みました。
コロナ禍で全国的に米価が下落気味なので減は致し方ないにしても、問題なのはやはり『コシヒカリ』と同水準に妥協したという点です。

これは前述した『富富富』の戦略推進会議において、令和2年度の時点で既に「県産コシヒカリを上回る」から「県産コシヒカリと同等以上」へと方針を変更したことを受けてとのことだそうです・・・ええ(困惑)
平成30年~令和2年度(2018~2020年度)はずっと14,500円/60kgと据え置いてきたのですが・・・この減額からずるずると「コシヒカリ以下」とならないよう祈ります・・・



育種経過


平成15年(2003年)に新品種開発プロジェクトがスタート。(したらしい)

富山県の基本構想は交雑育種法による「新しい品種」ではなく、『コシヒカリ』の弱点を克服した『コシヒカリIL』の類の品種でした。
その為平成15年にスタートした、と言ってもその前半は高温障害耐性遺伝子の特定などの研究に充てられていた様子。
ただ、もしかしたら『コシヒカリ富筑SDBL2号』の育成も『富富富』の育種期間に含めてる?

話戻って
その素材となった品種は
・『コシヒカリつくばSD1号』(『コシヒカリ』の長い稈長を改善・短稈化)
 →稈が短く倒れにくい『コシヒカリ』
  ※短稈性遺伝子【sd1】所有
・『コシヒカリ富山BL2号』(『コシヒカリ』のいもち病に弱い性質を改善・真性抵抗性)
 →いもち病にかかりにくい『コシヒカリ』
  ※いもち病真性抵抗性遺伝子【Pita-2】所有
・『コシヒカリ富山APQ1号』(『コシヒカリ』の暑さに弱い性質を改善)
 →暑さに強い『コシヒカリ』
  ※高温登熟耐性遺伝子【Apq1】所有
・『12-9367B』(『コシヒカリ』のいもち病に弱い性質を改善・ほ場抵抗性)
 →いもち病にかかっても悪化しにくい『コシヒカリ』
  ※いもち病ほ場抵抗性遺伝子【pi21】所有

これらの品種はすべて遺伝子座のほとんどが『コシヒカリ』と同等で、耐病性や耐暑性といった一部の遺伝子だけが違う品種です。
これらの品種を掛け合わせ、【短稈化】【高温登熟耐性】【いもち病真性抵抗性】【いもち病圃場抵抗性】の遺伝子以外は『コシヒカリ』と同じ新品種を目標としたようです。
選抜の際には遺伝子マーカーを利用、ピンポイントに目標の遺伝子を持つ個体のみを選抜できたようです。

交配は平成24~25年(2012~2013年)に行われました。
平成24年(2012年)に『コシヒカリ富筑SDBL2号』を母本、『コシヒカリ富山APQ1号』を父本として交配。
翌平成25年(2013年)に『F1(雑種第一代)』の中からDNAマーカーを使って【いもち病真性抵抗性】【高温障害耐性】の遺伝子を持つものを選抜(【短稈】は目視での確認が容易に可能だがマーカーを使用したのだろうか?)。→このF1世代では選抜を行っていないようです。

翌平成25年(2013年)にその『F1』を母本、『12-9367B』を父本として交配。
平成26年(2014年)に交配種子約3,000個体の中からDNAマーカー技術を用いて目標の4遺伝子(【Apq1】【sd1】【Pita-2】【pi21】)がホモ接合体となっている16個体を選抜。
平成27年(2015年)には前年度の16個体を16系統として、ほ場選抜の中で3系統まで絞りこみ『富山86号』『富山87号』『富山88号』の地方系統番号が付されます。

最終的な選考は”食味”を元に
・富山農業研究所
・日本穀物検定協会
・富山米新品種食味評価会(アンケート結果)
・富山米新品種戦略推進会議
それぞれの食味評価を踏まえ、『富山86号』が選ばれました。

名称公募の結果、平成29年(2017年)3月26日に品種名『富富富』が発表されました。




このように「高温耐性」「短稈」「いもち病真性抵抗性」「いもち病圃場抵抗性」これらを『コシヒカリ』本来の食味を崩さずに(検証が遅れましたがむしろ食味はより良くなって)導入した試験場の手腕と技術は非常に素晴らしいものと言っていいと思います(謎の上から目線)。
『新之助』や『いちほまれ』の宣伝文句が「20万種から選抜」なので「3,000系統から選抜」とされている『富富富』が一般傍目には選りすぐられた感が薄いかもしれませんが、そんなことは決してないのです。
むしろ希少性・技術的面では『富富富』の方が優るかもしれません。


しかし



しかし


それは残念ながら消費者には一切関係無い話
こんな話に飛びつくのは稲品種マニアくらいじゃないかな…(飛びついている管理人)




どうも彼女を「ふふふ…」と笑わせてしまうとオヤジギャグを言わせている気分になります…


H29.11.30~ 父本『12-9367B』について予想してた頃のお話

eco-farmerさんに情報頂きました。

ぐぁぁああぁぁぁ…これは分かりづらい…ほんっとうに分かりづらい…愛知県のミネアサヒSBL(中部138号)の系譜並みに分かりづらい…(父方?がまだよくわかりませんが…)
『いちほまれ』と違ってこれは富山県正解ですわ…伏せておいて正解ですわ…
ちゃんとした系譜図載せたら線が多すぎて酔いますわ…

親はコシヒカリ戻し交配品種のオンパレード。
私(どや)やKayさんの大方の予想通り、『富富富』は『コシヒカリ』の極近縁種でした。(コシヒカリ富山APQ1号はまさにピタリ!お見事!)

母本と父本がまだはっきりとわかりませんが…おおむねこんな感じでしょうか?
というか
父本の『12-9367B』とやらが(試験番号なのでしょうが)どんな系統なのか分かりません。
愛知県農総試育成の『中部137号(12-9326B)』の試験番号が近いので、おそらくこの育成過程の選抜系統の一つなのでしょうが…なぜかこの『中部137号』はデータベースに系譜図がないんですけど!?なにゆえ!?
中部140号以降は試験番号が『13-●●●●B』ですし配布開始年も違うのでやはりこの前の年の育種情報がないと…
Bはあれかな?いもち病のBかな?戻し交配による抵抗性導入の試験系統ってことかな?

→H29.12.1 父本『12-9367B』追記
 Kayさんにも情報いただきました!感謝感謝です(泣)
 『中部137号(12-9326B)』の交配情報ヒャッホー!
 陸稲『戦捷』のいもち病圃場抵抗性遺伝子を導入した、これまた『コシヒカリ』改良極近縁種『ともほなみ』を親に使っている点、かなりドンピシャ臭いデス!
 『富富富』の父本『12-9367B』もこの『中部137号』と同交配・同系統ではないでしょうか(無根拠)
 超・フライング気味ですが系譜図作ってしまいました。(そう言えば…本日「稲品種データベース」見たら『富山86号』項目だけ追加されてました。交配情報・系譜図他一切無し。近日更新?)
この系譜図は間違いです(H29.11時点での予想図)


→H29.12.17 系譜図修正
 やはりJAの系譜図は信用ならん…
 『12-9367B』はまだ情報載っていませんが

→R1.9.2 系譜図修正
米穀データバンク様の米品種大全6に基づき系譜図修正
『12-9367B』は陸稲品種『戦捷』由来の「pi21」保有…というのは当たってましたが…
こんなんだったのか…(最下部参照)



おまけ


『BL』…『いもち病抵抗性』
『SD』…『短稈~semi-dwarf~』
『SL』…『縞葉彼病抵抗性』
『APQ1』…『高温障害耐性』
『HD』…『晩生化』
なので
『SDBL』…『いもち病抵抗性』+『短稈』
『SBL』…『いもち病抵抗性』+『縞葉枯病抵抗性』

なので?『富富富』は…『コシヒカリ』に【短稈】【いもち病真性抵抗性】【いもち病圃場抵抗性】【高温障害耐性】を付与したので…
『コシヒカリ富山SDBLBLAPQ1・1号』ですね(嘘です)。
でも富山県は『富富富』にさらなる形質を付与する予定がある!みたいなこと言ってます。
…【縞葉枯病抵抗性】を付与して!さらに晩生化を図って!富富富ILとしての普及を!
これぞ『コシヒカリ富山HDSDSBLBLAPQ1』!
品種名は『富(短稈)(耐いもち)(耐高温)(耐縞葉枯)(晩生化)』!?(嘘です)



系譜図

でもまじめに『富富富』ってつまり『コシヒカリSDBLAPQ1』ってことですよね?

富山86号『富富富』 系譜図



参考文献(敬称略)

〇温暖化に対応した水稲新品種「富富富」の開発と栽培技術の確立:小島洋一朗




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18 件のコメント:

  1. 富山県が育成した、ハバタキ由来の高温登熟性のある系統といえば、個人的に真っ先に思い出したのが富山80号(コシヒカリAPQ1号)ですね。ハバタキにはApq1という高温耐性遺伝子があり、これを持っていると登熟時に高温条件に遭遇しても、玄米の品質が落ちず腹白や背白など白未熟粒が減る効果があります。つまり高温でも高品質の玄米生産が可能です。
    コシヒカリAPQ1号が直接「富富富」の親かはわかりませんが、公式表現の③はおそらくこの話をしていると思われますので、彼女にもApq1がある可能性は高いのではないでしょうかね。
    いもち病抵抗性は他の親から受け継いだのかなんなのかよくわかりませんが……

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    1. JAみな穂の記事を見てきました。祖父母の話から遡って記述されているので非常にわかりにくいのですが、私が読み取った推定(半分妄想)を以下に記述します。なおあの図の「稲A←(交配)稲B」は、稲A=母本、稲B=父本として解釈します。

      まず、富富富の母本にあたる稲Xの交配から。
      稲Xはハバタキ由来の高温耐性遺伝子(Apq1)を持つ稲を母本、そしてコシヒカリに矮性遺伝子と何らかのいもち病真性抵抗性遺伝子(コシヒカリBLのような)を導入したコシヒカリのILを父本として交配した後代から、遺伝子マーカーを利用しつつ父本に高温耐性を更に導入する目的で交配されたものと思われます。しかし育成された稲Xはなんらかの理由で奨励品種となることなく(富山番号はついてそうですが)、更なる交配母本となったようです。
      完全に妄想なのですが、富富富の母本となる稲Xは父本由来のいもち病抵抗性があるとはいえ、その抵抗性はコシヒカリBLの中の1品種と同等程度で、コシヒカリよりは強いものの、現在の富山県のてんたかくなどに比較するとそこまで強くはなかったのではないでしょうか?
      また、食味なども母本の性質が邪魔してコシヒカリに及ばない……可能性もあったのかも。
      それらの欠点のカバーのために選ばれた父本が、富富富の父親となる稲Yなのでしょう。稲Yは一般的ないもち病抵抗性遺伝子とは異なる、いもち病圃場抵抗性と呼ばれる遺伝子を持つコシヒカリのILとして育成された系統で、いもち病抵抗性の更なる強化およびコシヒカリ寄りの食味向上にうってつけの相手と思われます。
      以上の稲Xと稲Yの交配に由来する後代を遺伝子マーカーを用いた集団選抜にかけ、16の系統に絞り、その中から食味で淘汰したのが富山86号を含む3系統であり、最終的に品種の座を勝ち取ったのが、富山86号こと富富富である……。

      脚色しましたが、こういうことが言いたいのではないでしょうかね?
      具体的な系統名が一切無いから本当にわかりにくいですよね。

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    2. 『富富富』に関しては親の系統名は一切なくとも、育種目標や交配の親株選定の目的は理解できる(言いたいことはわかる)ので、「60年以上蓄積してきたなんとやら」で交配したと謳っている(嘘ではないのでしょうけども)どこぞの新品種さんよりはわかりやすいんですが、やはり顔が見えないというかなんというか…
      そういえば『富富富』は親品種情報だけでなく、ロゴすら発表されてませんね。
      うーん…なんとも『顔』が見えないようなこのモヤモヤ感…


      しかしやはり稲品種にはあまり興味がない一般の方々にはこういった特性だけを挙げた方が分かりやすい…ということなんでしょうかね。
      『いちほまれ』『富富富』のこの情報の出遅れは確信犯なのか、単に焦って出したせいで準備が追い付いていないだけか…
      この先その真偽が分かりそうです。

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  2. 「ごはん彩々」に記事がアップされています。
    交配組み合わせは、Kayさんの予想がほぼ当たっているようです。すごい!

     http://gohansaisai.com/kikou/86603/

    交配年は示されていませんが…。

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    1. 見てきました~

      情報提供ありがとうございます!
      おかげさまで(まだスカスカですが)系譜図作れました!
      そしてKayさんすごい!

      しかし…
      「ごはん彩々」さんの書き方って…いやちゃんと取材してるんでしょうけど…本当にわかって書いてるのかな?という表現がチラホラ見えるのが気になります…

      削除
  3. 「ごはん彩々」は一応ちゃんと取材はしてるけど…ってイメージが強いですね。特にあの表現だと母本がF1ぽく聞こえますが意図して母本をF1にするのは交配のセオリーから若干外れる(もちろんセオリーを破ることも多々あるんですけどね。「青天の霹靂」とか)のでその辺りは不正確かもしれません。
    そしてコシヒカリ富山APQ1号あたってよかった!仕事でいろんな育成系統の親情報をまとめてて目にしたおかげです^^
    しかし三系交配だったことを読み取れなかったのでまだまだ精進が足りないです…。

    ついでに職場の各県育成系統の資料で「中部137号」も探して、来歴見つけました。

    中部137号来歴:F2(F2(コシヒカリ*4/北海188号)/F2(コシヒカリ*2/K14【ともほなみ】))/F2(F2(コシヒカリ*2/K14【ともほなみ】)/中系IL14)
    コシヒカリを何回か戻し交配したあとのF2同士の交配のさらにF2同士の交配ってことでしょうが……複雑。まあ、中部138号よりは若干シンプルですけどね。
    中系IL14の来歴は調べきれませんでしたが、中系IL10=中国IL2号がコシヒカリのILなのでおそらくその関連ですかね。

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    1. 情報提供ありがとうございます!!!


      早速系譜図改訂しました!(気が早い)


      中系IL14にしてもやはりいもち病の真性抵抗性というよりは圃場抵抗性を導入しようとした系統なのかなぁ…なんて妄想しています。
      北海188号はよくわかりませんが、中部137号の目指した方向性は見えますね。
      あとはこれと富富富の父本(かどうかもはっきりしてませんが)と同系統なのか…

      稲品種データベースが更新しそうな気配なので、それ待ちですかねぇ…
      こんな複雑かつアルファベットが並ぶような長ったらしい系譜図を富山県が公式に宣伝するとは思えない…

      削除
    2. 自分への備忘録

      『中系IL14』はいもち病圃場抵抗性遺伝子”Pi34”を導入した『コシヒカリNIL』のようでした。

      DNAマーカー技術により『中国IL1号』よりも絞り込んだPi34座乗領域を持つとのこと。

      削除
  4. 考えて気づいたのですが、12-9367Bの「12」ってもしかして「2012年」の略ではないでしょうか?
    と、すれば、仮に12-9367Bが中部137号の姉妹ならば、交配年が推定できるように思います。
    まず、その番号から2012年以前にこの系統が「12-9367B」と呼ばれる可能性はないでしょう。そして、中部137号の配布年が2014年となっているため、2014年以降に同じ来歴の系統を交配に使いたいならわざわざ正式に配布されている中部137号を交配に使うはずです。すなわち、交配年は「2013年」になるのでは。

    稲品種データベース確認してきました……青系では青系204~208号(=最新の2017年配布系統)まで名前が出たとこみると、徐々に最新情報への更新が行われているみたいですね。それでも越南系統は250番台で止まってましたが。

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    1. ……と、思いましたが交配2013年だとさすがに時間が足りないかも。
      でも中部137号の育成開始は2007年なのでその交配から得られた系統とするなら早くても2009年ごろに個体選抜(2007年に交配→種子を一回世代促進→2008年に3回促進して2009年にF5世代を選抜)だと思うので2010年以降でないと系統になってないとは思うんですよね……書き方からして一応系統になっているものを交配してると思うので。
      あるいは、親の推定が全く違うのか……でも正確な交配出てきてもすごく複雑そうですね……

      削除
  5. 富富富のホームページによれば、交配は平成24年、25年(2012、2013年)です。

     https://fu-fu-fu.jp/tsukuru/persons01/

    これが正確な情報であれば、
     APQ1号 × SDBL2号 の交配が2012年、
     そのF1と × 12-9367B の交配が2013年、 ということになります。

    今年2017年は、わずか4年目ということでしょうか。
     同質遺伝子系統同士の交配だとしても、さすがに準備期間が短いような…。

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  6. 同質遺伝子系統同士=固定化の必要があるのは集積したい遺伝子のみということを失念してました……!
    バックグラウンドがほぼ同じなら、F2くらいでマーカー選抜を行い目的の4遺伝子がすべて含まれているのを選び、その次世代でもマーカー選抜をやれば、一気に固定化された数個体にまで絞ることは可能かもしれません。あとは生産力検定など試験用に消費される種子を確保できれば(世代促進だと種子数は少ないのでどっかで圃場で栽培する必要があると思うのですが)、4年目で品種化検討ができるかもしれませんね。

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    1. 同質遺伝子系統同士の三系交配で、集積したい遺伝子が4つですべて遺伝子マーカー選抜が可能なら、F2世代には理論上目的遺伝子が固定された個体が2の11乗分の1あるはず。マーカー選抜ならヘテロ個体も除けるので固定された個体を取るのはたやすいことです。公式サイトの3000個体からマーカー選抜で3個体はこれより取れているようにも見えますが、草丈で半矮生については一旦足切りしてるなら納得できるかなと。
      交配してその年のうちに世代促進により3000個体(おそらくそれ以上)のF2を得たのが2013年、マーカー選抜を行い3個体にしたのが2014年、生産力検定に備えるため種子を増やしたのが2015年、そして2016年の生産力検定のデータで1系統に絞った……ということだと推理します。

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  7. イネ品種データベースに富富富が更新されていました。
    12-9367Bの来歴は書かれていませんでしたが、「pi21-NIL」の文字があるので、いもち病圃場抵抗性遺伝子「pi21」の準同質遺伝子系統であるようです。pi21は「ともほなみ」の圃場抵抗性遺伝子なので、かなりこの系譜図であってそうな気がしました。

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    1. いち早いお知らせ、ありがとうございます!
      嗚呼しかし…一番気になる父本の情報が未更新とは…
      中部137号と同系であってそうな気はしますが、なんとももやもや…

      戻し交配しすぎてて、稲品種データベースの表示規格超えてるなんてオチではないですよね?(ミネアサヒSBLが載っているのでそんなことはないと思うのですが…)


      で、早速系譜図微修正しました~
      JAみな穂のあの系統図(らしきもの)って何だったんでしょうね…母本のF1も母本父本逆だったので修正しました。

      愛知県と富山県は戻し交配本当に好きですよね。

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  8. 富山県人ですが、富富富に対する見解は極めて妥当だと思います。

    富山県とJA全農とやまは、方や主力米にしたい、方やプレミアム米をめざすと、ちぐはぐです。
    主力米をねらったはずが、欲が出たような感じです。プレミアム米と主力米では、生産量もマーケティングも異なるのに。
    品種だけでプレミアム米はありえませんね。限定的な生産地域が付くならありえますが。
    今、富山県内では2キロ税別1000円以上で売られていますがお祭り騒ぎはもう過ぎて、スーパーでは売れ残りっぽい状態です。
    もちろん美味しいんですよ。でも、普通のコシヒカリもすごく美味しい。
    3年ほどの間でどちらかに転がることでしょう。それまで様子見です。

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    1. ~Unknown~名無しの権兵衛(仮称)さん、はじめまして~
      まずはコメントありがとうございます。

      内輪でゴタゴタしてブランド化(どころか全国レベルでの認知すら)失敗した山形県の『はえぬき』という先例がありながら、やはり人間・組織があるとゴタゴタはあるものなんですね

      福井県もJA側は現在取引がある中京圏で『いちほまれ』を売りたいと主張していて、首都圏で売りたい農政側と食い違っているそうですが、【どの価格帯を狙っているのか】【ではそのお米を買ってくれる客層は?ターゲット層は?】この辺を読み違えると結果は悲惨なことになりそうですよね…

      そして仰る通りここ2~3年で…いや、むしろ今年でブランド化成功・失敗、その趨勢は概ね決まってしまうと見るのが妥当でしょうか?
      我が山形県の『つや姫』『雪若丸』にとっても他人事ではないですが、いち県民としては見守るしかありません

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    2. クロネコ大和の宅急便さん、レスありがとうございます。
      我が富山県で「富富富」で賑やかになるまで、お米の新品種について考えたこともなかく、「いちほまれ」の例も知らなかったです。
      なるほでどです。
      JA全農とやまに問い合わせしたりしてますが、3年計画で検討しているとの返事がありました。では。

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